LGBT法案に反対する議員の「本当の気持ち」ー続編

LGBT法案、ついに葬られることが決定的なようです。残念です。

昨日の自分の投稿にも書きましたが、この法案は、「性的指向による差別を行ってはならない」という、今ではほぼ世界の常識となっている、当たり前のことを規定しただけの法案で、合理的に考えれば、それほど有害なものとは到底思えません。それなのに、なぜ、保守派の議員がこれに反対したかについて、評論家の古谷経衡氏が、以下の記事で極めて的確な指摘をされていると思います。

古谷氏は、以下のような重要なことを指摘されています。

① 所謂保守派が想定する「あるべき日本社会の理想像」は、日本が戦時統制期(1930年代)に完成させた家族制度の姿である。所謂「モデル世帯(夫が40年間働き、妻は専業主婦で、子は1人か2人)」を基盤とした「あるべき家族像」に彼ら保守派は極めて強い執着と憧憬を持っている。

② これは何故かと言えば、彼らがおしなべて中産階級以上の準富裕家庭に育ち、ある程度の高等教育を受け、社会的な「ノイズ(不道徳)」に触れない生活を送ってきた社会階級だから。よく言えば優等生、悪く言えば温室育ちの保守派は、自らの生活やその属する社会に「あるべき日本社会のイデア」を見出し、そこから逸脱する存在は徹底的に排除するか拒絶する。

③ LGBTなど性的少数者をめぐる「理解増進」法案に反対した保守系議員は、「活動家に利用される」だとか「訴訟が乱発する」だのの理由を挙げて反対した。しかしこれは筆者からすれば額面上の理屈でしかなく、彼らの本心としては、「あるべき日本社会のイデア」が攪拌(かくはん)されることを最も恐れている。

④ LGBT問題は、日本の保守派にとって鬼門である。性的少数者は、「あるべき日本社会」という保守派の理想像を崩す”ノイズ”と彼らには映るからである。彼らは「規律と秩序」を何よりも重視するので、少数派が権利擁護の声を上げようとするのを頑なに許容しない。

自分も昨日の投稿で、「保守派議員には結局、「LGBTについての自分たちの保守的な感覚を、なるべく変えたくない」という本音があり、その本音を隠して、もっともらしい理屈を並べて法案に反対しているのではないかと、そう勘ぐってしまう」、と書いたのですが、こんな自分の想いを、古谷氏は上記の記事で見事にまとめてくれているように思いました。結局、論理なんかじゃないんです。保守派議員の「理想の日本社会」へのこだわりと、そしてそのこだわりゆえの「理想の日本社会が壊されてしまうかも」という恐怖心、こういう感情的なものが、「LGBT問題は、日本の保守派にとって鬼門」となる根本理由、ということです。

こういう感情的なものは、いくら議論しても変わらないのかもしれません。今の保守派議員の方々に、LGBTの権利について理解してもらうのは、絶望的な気がしています。

しかし、希望はあると思います。若い世代になればなるほど、LGBTへの抵抗感は弱い、という調査結果が出ているようです。今の高齢者層(概ね60代以上?)がどんどん死んでいくと、「日本が戦時統制期(1930年代)に完成させた家族制度の姿」に強く執着する人間は少数派となり、今回のLBGT法案のようなものも、すんなりと立法化されると思います。せいぜい、あと20年くらいじゃないかと思います。

LBGT法案のような、社会構造の基本部分にかかわるものは、公的に受け入れられるようになるためには、世代交代を必要とする、ということなのかもしれません。


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