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SNS Shocking#0「本企画の発足に際して」

SNSは時にショッキングだ。他人の栄華を見て自分と比較する、そんな現代の病に悩まされる人は多い。しかし「SNS Shocking」とは、そんな憂鬱から来たタイトルではなく、今は亡きテレビ番組「笑っていいとも!」の「テレフォンショッキング」に由来する。

「テレフォンショッキング」は1982年10月4日、番組の放送開始とともに司会・タモリ氏の念願だった「アイドルの伊藤つかさに会う」ことを目指し、ゲストの友達を次のゲストとして呼ぶという形式でスタート。それを果たしてからは「吉永小百合に会う」という新たな目的を掲げたが、こちらは達成されることなく2014年の最終回まで紹介合戦は続いた。

なぜ「ショッキング」かといえば、ゲスト候補への電話が繋がるかも、実際に承諾してくれるかも分からない、という先の読めなさゆえ。それに「通信販売」を掛け合わせたタイトルなのだ。しかしながら、晩年の放送ではスタッフが動き、滞りなくことが運ぶための“仕込み”があったと思われる。

時は流れて2022年。コンプライアンスの規制で何もかもが管理され、編集が前提となった現代では「ファーストテイク」に人気が集まっている。しかし本当の1テイク目、また無編集のコンテンツはメジャー媒体において幻想に過ぎない。意にそぐわない発言でスポンサーやファンの気分を害したり、数年後の倫理観でキャンセルされるリスクを考えれば、そんなものを公開することは“仕込み”なしに不可能だ。

またインタビューは本来、文字になる前の現場の会話こそが面白いと言われる。確かに記事にせずとも録音テープをラジオとして楽しむのが一番だが、2022年における社会的コードの中では困難だ。それにしても、コンプライアンスや編集が必ずしも悪という訳ではないが、オルタナティブがなさすぎるのは問題である。では、どうしたら「ショッキング」でいられるのか。それを考えるに、最早インディーズで活動する以外に手段はない。

そこで「テレフォンショッキング」発足から40年目の節目に、忖度を極力避けた記事とファーストテイクによるショートラジオ、ふたつのハイブリッドによるインタビュー企画を立ち上げることとした。取材対象はコンプラの制約を受けないインディーズ音楽家たちを起点に設定。彼らから次のゲストを紹介してもらう形で企画を進め、最終的にタモリ氏に行きつくことをコンセプトとする。

恐らく私が生み出したいのは「サプライズ」に近い。イメージの範囲にあるものではなく、その場で突如として立ち上がる何か。きっと多くの人が予定調和的な言説にうんざりしているはずだ。もしそうでなければ、この先うんざりすると思う。そんな空気に予め風穴を開けるための試みが本企画でもある。

最後にタモリ氏の発言を引用したい。

“僕は予定調和が崩れて残骸が散らばった時に、また違うものになるのかどうかを目撃したいし、それが面白いんです。怖さ半分興味半分ですけど、結局は今そこで起こることが一番面白いわけですから”

雑誌『SWITCH』09年7月号より

近いうちにアーカイブの範疇はAIに制圧される。将棋やチェスだけでなく音楽、絵画といった文化や恋愛に至るまで。奴らはどんな予定調和でも人間より達者になるはずだ。だが未来や創造といった分野は未だ我々の手のなかにある。これを固持するために、またクリエイティブかつフレッシュで居続けるために、必要なのは「驚き」だ。

憂鬱ではなく、知らない何かと出会う「ショッキング」をあなたに。これを以って『SNS Shocking』を立ち上げる。

2022年11月30日
小池直也


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