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拉麺ポテチ都知事23「ダイエットはじめました」

先日から約20年ぶりに食事制限を始めた。昨年から細く長く筋トレもしていたのだが、細すぎたのか、鏡に映る自分を毎日見ながら「そろそろか」と思った次第である。

とはいえライザップに通ったり、自分のビフォーアフターを公開してSNSに上げる野暮はしない。週3回ほどの筋トレとカロリー制限、あとはサイクリングで脂肪を減らしていこうという作戦である。ということで、昼食はサラダチキンになった。あれはうまい。本当はできるだけコンビニ飯は食べたくないのだが、とりあえずはこれでいくことにする。あとはできるかぎり自炊で鶏肉。

もともと小学生の頃は肥満で、しかも運動音痴だった。昼休みに鬼ごっこなどすれば、昼休み中まるまる鬼をやらされるほど足が遅かったのである。当然スクールカーストでは下層。さすがに悲しくなり「こんなの、おかしいよ!」と泣きながら人権を訴えたが、田舎のガキどもがそんなことを聞くはずはなかった。今だったらポリコレやSDGsを振りかざし炎上させて、力づくで勝利を得ていたと思う。

まあ、とにかく悲痛な人権宣言の前でも彼らはただ笑うだけだった。この時に「安い人権を主張するよりも、自分で状況を変える方が先だ」と童心ながら悟った気がする。

そこで私は「鬼である自分が隠れる」という新しい概念で対抗することとした。鬼が隠れるという、鬼ごっこの脱構築とは我ながら冴えていたと思う。昼休み中ずっと隠れたので、最終的にみんなが探しにきて、そこを捕まえてやった。さんざん待たされた彼らは逃げる様子もなく白けていたが、それによって私の鬼ごっこに対する苦手意識は消え去った。

そんなことがあっても痩せようとは思わなかったが、ある日、鏡を見ていたら唐突に美意識が目覚めたのである。小学校の卒業式からはメガネでなくコンタクトレンズを付ける様になって、服や髪に気を使う様になり、その流れで痩せることを考えたのだった(単純に食べる量を減らしただけ)。これが私の人生で初めてのダイエットである。これによってある程度は痩せて、太っているとは言われなくなった。

美意識の開眼といえば、宇野千代が最初に化粧した時のエッセイは相当なナルシシズムを感じさせる。幼少から色黒であることにコンプレックスを感じていた彼女は、白く化粧した自分を見て美しいと思った様だ。そこから彼女の化粧やお洒落はギャルの様にデコデコになっていくが、33歳頃、出会った東郷青児の影響でナチュラルメイク&シンプルな装いにモードチェンジ。何事も恋愛の影響は計り知れないが、千代は影響受けまくりだからモダン・ガールにも新しい女にもなりきれなかったのである。

そういえば最近読んだビリー・ホリデイの自伝「奇妙な果実」にも、サックス奏者のレスター・ヤングとの恋愛関係について書かれていた。レスターが、同じくサキソフォンを吹くチュー・ベリーとのセッション対決をした時、レスターは完勝したが相手のファンから「音の大きさで劣っていた」という意見を浴びせられ、がっかりしたのだという。同じ楽器奏者として気持ちはよく分かる。

その時ビリーは「ねえレスター、みんなに馬鹿にされることなんかないよ。大きな形の、厚いリードの立派なテナーを買おうよ。もう見栄えのしないゴム・バンド(注:彼の楽器はボロボロだった)とはおさらばして、大きな音を出そうよ」と励ましたそうだ。しかし、彼の音はそれでも小さいままだったという。今SNSで検索するとサックスの音色について「ある程度は金で買える」という意見があるし、奏法を変えれば音量は上がりそうなものだが。でも、そんなものよりレスターのフィーリングの方が得難い。

さて私の指は勝手に音楽と恋愛の関係についてタイプしようとしている。これについては自分自身や周りの知り合いなどの体感的にもそうだし、特に椎名林檎と宇多田ヒカルについて考えると対照的で面白いのだが、今回のトピックではないのでやめる。

とりあえず、20年ぶりほどのダイエットがどういう結果になるのか、またここに書きたいと思う。

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