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地方零細制作会社のWithコロナ奮闘記①

さて、まだまだ収束の兆しが見えない新型コロナウイルスですが、昨年7月EBO(Employee BuyOut)により代表に就任した弊社(株式会社ヒラマ写真製版:茨城県土浦市:役員2名・従業員13名)における、ポストコロナ時代に向けた取り組みをシェアしたいと思います。

リモートワークといえば環境が整備された大都市圏、しかも大手企業やIT企業など特定の業種に限られるという印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、社員やお客様を感染リスクから守りつつ事業を継続していく事を最優先にするならば、企業の規模や業種、首都圏だ地方だといって現実逃避してる場合じゃない。ウイルスには人種や国境、年齢や性別も関係ないですから。治療方法が確立する目処として、少なくともワクチン開発の目安といわれている12ヶ月〜18ヶ月間はWithコロナを覚悟しなくちゃいけない。そんな思いで現在も試行錯誤を継続しています。

①リモートワークの実施 〜ITインフラ編〜

2020年3月から、まずはウェブ制作の女性スタッフが在宅ワークに移行しました。もともと仕事と子育てを両立して頑張ってくれてる優秀なスタッフでしたので、本人の希望もありスムーズに移行できました。4月には他の全ての社員に対して(受付・営業・制作・品証・印刷・製本)少なくとも2週間の連続したリモートワークを実施するように要請しており、彼女にはそのベンチマークになってもらいました。その後、比較的スムーズに移行しやすい制作チームのメンバーもローテーションしながらリモートワークを実施していきました。併せて顧問社労士の先生にリモートワークに関する就業規則の改定もお願いしました。リモートワークをした感想と、リモート組をケアしなければいけないオフィス組でそれぞれレポートしてもらい、相互理解を図りながら慎重に進めていきました。

本当に細かいところですが、オフィス組にとっては例えばそれまで全社員で朝、事務所の清掃をしていましたが、担い手が少なくなれば掃除する場所も増えますし、事務所にかかってくる電話や来客に応対しなければならない回数も増えてきます。一方のリモートワーク組にとっては、データのやりとりに際して脆弱なネットワークによる待ち時間の増加や、紙媒体のデザイニングであればカラーマネジメントされたプリンタ出力をその都度オフィス組に依頼しなければいけません(リモート出力も検討しましたがジョブとジョブの境目が分かりづらいうえに、結局プリントを取りに行くのは誰かがやらなくてはいけないので断念しました)。

リモートワークを実施するにあたり、課題となるのは進捗の把握と情報共有、そしてなにより社員間のコミュニケーションではないでしょうか。弊社ではコロナ以前から導入済みのサービスも含め、ITインフラとして以下の環境を整備しました。

◎G Suite

ご存じGoogleのビジネス版オフィススイートです。弊社では2015年にG Suiteを導入しており、ウェブメール「Gmail」を筆頭に「ドライブ」「ドキュメント」「スプレッドシート」「スライド」によるフルクラウドでのファイル共有はもちろん、「カレンダー」は全社員のスケジュール管理 兼 日報ツールとして欠かせないものとなっています。リモートワークでの進捗共有には特に「カレンダー」の添付ファイル機能を活用し、その日の成果を必ず全員に見える形で報告するように工夫しました。これによってオフィス組の「リモートワークってホントに仕事してんの?」あるあるを回避すると同時に、リモート組にとっても「こんだけ時間かけてこの程度のアウトプットなの?」と思われないための適度な緊張感が生み出せたと思います。この仕組みがなかったら、リモートワークへの移行は相当困難だったことは想像に難くありません。ちなみにここまで激推しする理由は、弊社がGoogle Cloudオフシャルセールスパートナーだからではございません!...が、ご興味のある方は是非リンクよりお問い合わせください(笑)

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さらに弊社ではGoogleカレンダーの活用を一歩前に進め、Todoistというタスク管理サービスと連携させています。弊社のワークフローでは自己完結型のクリエイティブワークと、印刷・製本などの後工程が必要なチームワークに分かれており、Googleカレンダー上のチームワーク専用スケジュールに項目を追加すると、リアルタイム連携機能によりTodoist側でタスク化される仕組みを構築し、55インチの大画面ディスプレイに表示しています。これまではホワイトボードに手書きで書き込んでいた部署ごとの作業指示も、各種ITツールの使い方を一工夫することで脱アナログを実現しています。

◎LINE WORKS

こちらもご存じの方が多いかと思いますが、LINEのビジネス版で、普段使いの社員間コミュニケーションツールとして日々使い倒しております。こちらも2015年から導入していました。G SuiteにもGoogle Chatというチャットツールが付属していますが、この手のツールで大事なことは、使うこと自体が負担にならない事だと思うんです。いちいちテキストを入力することなく、スタンプだけでコミュニケーションが成立するのはやはり秀逸だなと。その手軽さ故に、導入後は社員の皆さんが休みの日などにプライベートな情報や写真を気軽にアップしてくれるようになり、むしろコミュニケーションが活性化されました。もちろん無料で音声・ビデオ通話が利用できますので、社員間の直接の連絡手段としても欠かせないツールになっています。「ウチの職場はスマホ持ち込み禁止ですから」という声が聞こえてきそうですが、本気で使おうと思ったら自席なりトイレなりで隠れていくらでも使えますけど、そこまで管理します?不思議なもので、いつでも使えると思うとそんなに使いたくなくなり、ダメ!と言われると益々使いたくなるものです(笑)使えるテクノロジーはどんどん活用して、働き方をアップデートしていく姿勢が必要だと考えました。

◎Board

こちらも2015年より導入済みのクラウド帳票発行システムで、見積書・納品請求書・発注書など必要な帳票をワンソース・マルチユースで自動生成してくれるサービスです。数ある同様のサービスの中からこちらを使い続けている理由は、①ユーザー目線のかゆいところに手が届く機能と、なによりそれを実現する開発姿勢が素晴らしい。②クラウドサービスなのに、ここまでこだわる人いる!?ってほど帳票のデザインカスタマイズが可能で、美しい。③連携する紙帳票の郵送代行サービスが地味に便利。などなど、小〜中規模事業者には断然オススメのSaaSです。

◎メールワイズ

ご存じ和製グループウェアの草分け的存在、Cybozuが運営している「共有メール」管理サービスです。恐らく多くの企業で個人のメールアカウント以外に「info@○○.com」や「contact@□□.co.jp」などの共有メールアカウントを運用されているかと思うんですが、担当者が割り当てられていないケースも多いと思います。こちらのサービスは共有メールアカウントの運用・ステータス管理に特化していて、共有メールアカウントに届いたメール一通一通に「未処理」や「処理済み」などのステータスを割り当てたり、メールの確認者と担当者を割り当てたりすることが出来ます。誰かが対応しなきゃいけない、でも誰が対応してもいいメールって、結局放置されてしまうこと多くないですか?こちらも2015年から運用し続けていますが、お陰様で対応漏れや重複対応が「ゼロ」になりました!共有メールアカウントの運用がうまくいっていない方、検討してみてはいかがでしょうか。

◎Box

今回新たに導入することになったクラウドストレージサービスです。弊社では印刷用データを日々大量に扱う関係上、リモートワークをスムーズに実施する上で大容量クラウドストレージは必須。G Suiteでは「Business」アカウント×5ユーザーでGoogleドライブが容量無制限になるのですが、ここはちょっと待てよ、と。現在契約中の「Basic」アカウント×17ユーザーが「Business」にアップグレードすると月々11,560円の負担増。たかだかそれだけのコスト増で容量無制限のクラウドストレージが手に入るというのは、一昔前では考えられないほど安いですが、なるべく余分な支出は抑えたいもの。んでたどり着いたのが「Box」だったんですね。もともとセキュリティーに強くビジネス向けクラウドストレージサービスとして定評があったんですが、こちらはなんと月々1,710円×3ユーザー=5,130円の「Business」プランから容量無制限になるらしいじゃないですか。管理者アカウントをひとつ、全社員共通アカウントと予備アカウントで運用すれば、月々▲6,430円の節約が出来る!ということで即導入。Googleドライブと容量無制限のBoxの導入により、結果としてBCP(Business continuity planning:事業継続計画)にも活用できそうです。

◎FAXのインターネット化

思った以上に便利だったのが「FAXのインターネット化」でした。LAN対応・タッチパネル(操作パネル)付きの複合機なら恐らくほとんどの機種で設定可能なはずですが、全くノーマークでした(笑)。弊社ではFAX to E-mail機能を使って、FAX本体での受信機能も残しつつ、指定したメールアドレス宛に添付ファイルとして送信される方法で運用しています。何でもかんでもフルデジタルに移行するのではなく、仕組みを理解しながらそれぞれの長所を活かす“ハイブリッド運用がよさそうです。

◎Google Meet(旧Haugout Meet)

さて、ここまで整備してきて、全員がオフィスワークだった当時との決定的な違いに気がつきました。それは“気軽な声かけ”です。ちょっとしたデザインワークのブラッシュアップだったり、社員間の業務量の調整だったり、雑談から生まれるアイディアだったり、普段の何気ないコミュニケーションがチームワークには欠かせない要素だったことに気がつきました。リモートでのコミュニケーションには必ず“目的”が必要で、それ自体は悪いことではないと思いますが、一方でお互いの仕事ぶりが見えないためかえってコミュニケーションを控えるようになってしまい、結果として一時的にパフォーマンスが下がってしまいました。そこで、オフィス組とリモート組をGoogle Meetに常時繋ぎっぱなしの状態で仕事に臨むことにしました。これは大きなチャレンジでしたが、結果的には大成功でした。

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決定当初こそ「監視されているようでいやだ」「落ち着かない」という声も上がりましたが、そもそもこれまで出社勤務が当たり前だった頃は当然ながら顔丸出しで仕事してるわけですし(笑)常時声を掛けたり掛けられたりしながら仕事してたわけで。自宅で働くということは「出社」はしないけど「自宅に出勤」することになるので、そのあたりの考え方もこれまでの固定概念を一旦リセットする必要がありました。その上でリモート組に疎外感を感じさせないためには、働いてる場所や事務所内の異なる場所でも気軽に声を掛けられる空間がある。反応が返ってくる。という環境を維持することが大事だと考えました。この取り組みによって働く場所が異なっても「社員であることの再認識」と、「適度な緊張感」が両立できていると感じています。もちろん、休憩時間中や就業時間後はオフにしていただくなど、プライバシーにも配慮して運用しています。

さて、試行錯誤しながらなんとかリモートワーク環境が出来つつあった4月中旬、全社員のリモートワーク移行に向けてひとつの大きな決断をしました。

...次回に続きます。



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