見出し画像

診察中、獣医さんって何考えてるの?

NHKの総合診断医ドクターGという番組はご存知でしょうか?
もう終わってしまいましたが。
現役研修医が、問診などの再現ドラマを見て考えられる病名とその根拠を挙げ、最後に“ドクターG”が検証を加えて「正解」を導き出す。
とても勉強になる良いコンテンツです。
そんなことが動物病院でも行われているんです。

ペットさんが体調が悪い時、動物病院で何が行われていますか?
当たり前ですが、治療を行いますよね。
その治療は診断がなされてるから行われてるわけですが、
どうやってその病気だと診断しているんでしょうか?
血液検査である項目が異常値だから〇〇病だ!と安直に決めているのでしょうか?

診察中に獣医師がどのような考えで治療にいたるのかを紹介したい。
愛玩動物看護師もこの考え方は非常に役に立つので覚えていたほうがいい。

診察の組み立て方

どうやって治療を決めるのか?までの思考のフローだ。
簡単にいうと身体検査と問診から鑑別(診断)を予測して
その予測を血液検査やレントゲン検査、エコー検査などで診断する。
言ってしまえば、問診と身体検査で大体の鑑別(診断)はつくという話。

実はお電話をいただいた段階から診察は始まっている。
例えば子宮に膿がたまる子宮蓄膿症という病気の場合、
飼い主さんから
『最近元気、食欲がなくて…』とご連絡をいただく。
電話を受けている人が簡単な情報を聞き取る。
緊急性がある場合は悠長に問診をしている場合ではないが、
まずはペットさんの情報を確認する。
・ペットさんの種類、年齢、性別、避妊手術の有無
例えば「犬、10歳、メス、未避妊」
この情報だけで子宮蓄膿症が鑑別が上がってくる。
猫だと子宮蓄膿症の可能性が低いので鑑別としては下の方になる。(可能性は低いという判断)
実際に来院されてからも、ある程度状態を聞いた後に
「最近発情が来たのはいつか?お腹が膨れていないか?飲水量は増えていないか?嘔吐はないか?下痢はないか?」
実際に身体検査で外陰部が腫れていたり、分泌液が出ていたりすれば子宮蓄膿症がかなり濃厚になってくる。
そこでようやく機械を使った検査が始まります。
いわば答え合わせのようなところ。
レントゲンやエコーで子宮内に何かがあれば、確定と言って間違いない。

そこで飼い主さんに伝えなければいけないことは、
・身体検査で外陰部の腫れや分泌液が確認できました。
・問診、身体検査から子宮蓄膿症と膣炎が疑わしいです。
・子宮に膿(液体)が溜まっていれば子宮蓄膿症が確定しますのでエコー検査をします。
子宮に膿が溜まっていた場合、命に関わることがある=緊急性が高い
このように「検査」には「理由」が必要ということになる。

まだ鑑別がつかないにしても、プロブレムリストの整理を行う。
プロブレムリストとは問診と身体検査所見の情報から、獣医学的なフィルターを通し、語句を変換して優先順位に並べることである。
その動物の問題点を書き出すということ。
例えば、「昨日から5回くらい嘔吐しているんです。食欲もそれ以降あまりなくて…」の主訴の場合、
プロブレムリストは①『急性嘔吐』になり、②食欲不振、嘔吐がひどいので身体検査からわかるように③『脱水』などと、このようなプロブレムリストを列挙することから始め、診断のための材料にする。
(前段で問診、身体検査から鑑別診断があがると申したが、実際にはこのプロブレムリストもその前段階で列挙されている。)

急性嘔吐=急性の胃腸炎?異物誤食?中毒?腸閉塞?
お水を飲んでも嘔吐するって言ってたから…
と言ったように診断に繋げていく。
ある程度鑑別(予測)がついたら、検査を行い症状との整合性を確かめる。

間違っておもちゃを食べちゃったワン…
って言ってくれれば、すぐに診断はつきそうなもののドリトル先生はいないわけで、飼い主さんから聞く他ない。

この思考プロセスの元、検査を行っていることを知ってもらいたい。
診断することを目的とせず、治療をするために診断している。
そのためにはしっかり問診と身体検査をする必要がある。

詳しくはこちらをご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?