ニューヨーク・リサーチ vol.1
NRFへの参加とともに、ニューヨークの店舗を約25店舗ほど視察したので、いくつかのトピックスに分けて感じたことをnoteしたいと思います。
1.百貨店の新たなカタチを提案する「Nordstrom NYC」
ミッドタウン西57丁目とブロードウェイの間に、10月24日にオープンしたばかりのNordstromの旗艦店は、リテーラーなら一度は見ておいて損の無い商業施設。
地下2階から5階までの計7フロアで構成されていて、売場面積29,738平方メートル(8,992坪)。全体的にハイエンドファッションの構成比が高く、日本で言えば、新宿伊勢丹みたいな感じでしょうか。
◾️フォトジェニックなコンセプトショップ
ブランドとして目を引くのは、赤で統一された店内装飾に、限定スニーカーも取り扱うNikeとNordstromのコラボストアや、アーティスト・Nick Knight(ニック・ナイト)の作品「Portrait of a Rose」を壁紙にしたカフェが併設されたバーバリーの旗艦店、香水ラインだけを販売する「Glossier」のポップアップなど、「映える」コンセプトショップです。
◾️優れた顧客サービス
ただし、コンセプトショップによる差別化だけではすぐに陳腐化してしまうのが商業施設です。Nordstromの優れた点は、顧客の手を離さない「顧客サービス」を充実させることで、顧客ロイヤリティを高めていることです。
・ピックアップカウンター
オンラインで購入した商品がずらりと並ぶカウンターですが、「試着室」と「お直しコーナー」が併設され、オンライン購入の課題を補完するサービスが展開されています。
顧客体験としては、会社帰りなどに商品をピックアップして商品を試着。気に入らなければその場で返品・交換が可能ですし、裾上げが必要であれば、そのまま修理依頼も可能。さらに、商品を着て帰る場合に、今の洋服が不要であればドネーションBOXに入れて寄付することも可能です。このように、オンラインとオフラインをシームレスに統合して、購買体験を一連のサービスとして提供しています。
・スタイリングサービス
オンラインチャットで、ファッションやコスメ、ウェディングに関する相談を24時間、無料で受け付けるサービスを提供していますが、事前予約の上、店舗のスタイリングラウンジで直接相談することも可能です。
また、Nordstromが2014年に3.5億ドルで買収したスタイリングサービスの「TRUNK CLUB」のリアル店舗が入っているので、TRUNK CLUBに入会することで、よりパーソナライズされたスタイリングサービスを受けることも可能。
・リペア・カスタマイズ
地下1階の靴のリペアカウンターでは、スニーカーのクリーニング、ソールやヒールの付け替けなどのサービスを提供。また、「CONVERSE YOU」では、コンバースのスニーカーカスタマイズが可能で、世界に一つだけのオリジナルスニーカーをデザインすることができます。
そのほか、4階のデニム売場では、デニムのリペアやカスタマイズができるなど、「カスタマイズ」サービスが充実。
・ラウンジサービス
各フロアにバーやラウンジが用意されているのですが、そこから売場への「ケータリングサービス」が可能です。ワインを売場に運んでもらい、ワインを飲みながら馴染みの販売員とファッションの話しをしたり、商品を選びができるなど、顧客のリラックスを最優先に考えられていて、「売場内飲食禁止」という常識を超えた顧客サービスを提供しています。
◾️Nordstrom Local
この充実した顧客サービスを切り出して、小型店舗として展開しているのが、Nordstromの新たな試みと言われている「Nordstrom Local」です。
Nordstrom Localは、ロサンゼルスに3店舗、ニューヨークに2店舗出店している、Nordstromの新コンセプトショップですが、商品を販売する場では無く、Nordstromの顧客サービスを受けられる場です。
「販売商品が無いのに、サービスだけ受けたい需要があるだろうか?」と思ってニューヨークのWest Village店に行きましたが、ピックアップカウンターや返品カウンターの棚は商品で満杯。周辺の住民やオフィスワーカーの需要はあるようです。それほど、Nordstromのサービスが顧客に受け入れられてるとも言えます。
面白いのは、amazonやMacy'sなど、競合他社の商品の返品も受け付けていることです。これぞ顧客視点で、顧客はNordstromだけで商品を購入しているわけでもないので、購入店舗やブランドに関係なく返品受け付けしてくれるのが、真のニーズというもの。そこをやり切ってるNordstromは素晴らしいですね。
◾️最後に
とにかく、Nordstrom NYCはMDもサービスもワクワクさせる仕掛けが多く、オフラインとオンラインを組み合わせた顧客体験を感じられる場所なので、一度訪れてみてください。
最後に、トイレサインが「ジェンダーレス」なピクトグラムになってます。
こういうところが、何だか米国らしく、先進的な取り組みに感じられますね。
続く
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Twitter @NaoyaTech
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