見出し画像

所有不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正、相続土地国庫帰属法の制定⑪

今回は、相続土地国庫帰属制度の概要・手続の流れについて書きます。

過疎化が進んでいる地方の土地を相続した場合、当該土地を利用するニーズは著しく低く、管理も手間だし、費用もかかるので、できれば手放したいと考えるのが通常です。

しかし、そのような土地は流通性が極めて低く、売れることはほとんどないと言ってもよいでしょう。このように売れない土地なので、管理費をかける人もほとんどいないと言ってよいでしょう。

実際に平成30年度版の土地白書の土地問題に関する国民の意識調査では、土地所有に対する負担を感じたことがある又は感じると思うと回答した人は実に約42%もいました。
また、令和2年法務省調査では、土地を所有する世帯のうち、約20%の世帯が、土地を国庫に帰属させる制度の利用を希望すると回答しています。

そこで、このような問題を解決するために、相続等を契機に土地所有を望まない人に対し、土地を国庫に帰属させる制度を制定しました。
この制度で国が土地を管理することにより、利用ニーズの低い土地の管理不全化を防ぐことができるようになります。


制度の概要

所有不明土地の発生を抑制したり、管理不全の土地をなくすために、相続又は遺贈により土地の所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度を新たに創設した。

ただ、単に土地の管理コストを国に転嫁したり、このような制度があるので土地の管理をおろそかにするようなことが多発するおそれもある。
そこで、モラルハザードが発生するおそれを考慮して、一定の要件を設定し、法務大臣が要件を審査するようにした(新法2条3項、5条1項)。

法務大臣の要件審査で承認を受けた人は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する必要がある(新法10条1項)。

具体的な負担金は、法務省HPに掲載している。https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html

国庫に帰属した土地は、普通財産として国が管理・処分することになる。
主に農用地や森林として利用されている土地は、農林水産大臣が管理処分(新法12条1項)、それ以外の土地は財務大臣が管理・処分する(国有財産法6条)。

手続の流れ

①申請手数料を納付して、法務大臣に対し、承認申請をする。
② 法務大臣(法務局)が要件審査を行う。
* 要件審査には、実地調査権限がある。国有財産の管理担当部等に調査の協力を求めることもできる。国や地方公共団体に対して、承認申請があった旨を情報提供して、土地の寄付受付けや地域での有効活用の機会を確保する。
③ 承認がなされたら、申請者が負担金を納付する。
④ 国庫に帰属する。

次回は、相続土地国庫帰属制度の申請権者や土地の要件について書きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?