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所有不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正、相続土地国庫帰属法の制定④

今回は、正当な理由なく相続登記の申請義務を履行しなかった場合の過料*1や相続登記の申請義務化に関する経過措置について書きます。

*1 過料とは、行政上の秩序の維持のために違反者に制裁として金銭的負担を課すものです。 刑事事件の罰金とは異なり、過料に科せられた事実は、前科にはなりません。法律で定められた金額の範囲内で裁判所が判断します(裁判所HP Q&Aから)。

相続登記の申請義務化に伴い、「正当な理由」がないのに登記申請義務に違反した場合には10万円以下の過料の適用対象になる(新法164条1項)。


相続登記の申請義務化に伴う過料

個別事情によっては、登記申請義務の履行期間内(3年以内)に相続登記の申請をすることが難しいことも想定できる。
そこで、新法では、登記申請を怠ったことについて、「正当な理由」がない場合に限って過料に処することになった。

正当な理由の具体的な類型は、予め通達で明確にする予定である。

正当な理由があるとされる具体例

・数字相続が発生して相続人が極めて多数のおり、戸籍等の収集や相続人の把握に多くの時間を要する場合
・遺言の有効性や遺産の範囲が争われているような場合
・申請義務を負う相続人が重病で期間内に申請できない場合
など

義務の履行催告

商事過料決定は、裁判所が、非訟事件手続法122条に基づき相当と認めるときは、当事者の陳述を聴かないで過料についての裁判をすることができる。
しかし、相続登記の申請義務化に伴う過料の決定は、事前に義務の履⾏を催告する。
過料を科する際の具体的な⼿続についても、公平性を確保する観点から、省令等に明確に規定する予定である。

手続の流れ

①登記官が相続登記の申請義務違反を把握する。
②登記官が相続人に対し、義務の履行を催告する。
相続人が、③催告に応じて申請をした場合は過料事件の通知はされません。しかし、④正当な理由なく申請をしなかった場合は、法務局から裁判所に対し、過料事件の通知がなされ、裁判所が要件に該当するか否かを判断し、過料を科する旨の裁判をすることになる。

相続登記の申請義務化に関する経過措置

相続登記の申請義務化の施行日は、令和6年4月1日である。

適用対象

施行日前に相続が発生していたケースについても、登記の申請義務は課される。
ただし、申請義務の履行期間については、施行前からカウントするのではない。施行日とそれぞれの要件を充足した日のいずれか遅い日から法定の期間がスタートする。

具体例

例えば、
令和6年1月5日に被相続人が死亡
令和6年5月1日に相続人が相続による所有権の取得を知った
この場合は…
「令和6年4月1日から3年間」ではなく、「令和6年5月1日から3年間」が相続登記申請義務の履行期間となる。

次回は、所有不動産記録証明制度や所有権の登記名義⼈の死亡情報についての符号の表⽰に関して書きます。





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