僕と拠り所⑦〜出会い〜
僕と拠り所⑦
春は花咲くこの季節、足早に歩を進めようとするが高校というのはこんなにも人が多いものなのかと痛感している。
同じ制服でも皆着こなしがちがう。
腰パンでローファーをこすりながら歩いているあの茶髪は年上だろうか…今俺を通り過ぎて行った如何にもガリ勉そうな人は同い年だろうか…
様々な憶測が飛び交う中で少し貧血気味に足元がフラフラした。
ミチオ「ほ〜ら!落ち着いて木こり」
振り返るとそこにはいつもの顔があった。
彼の顔を見ると不安や焦りが和らいだ?
木こり「俺…大丈夫…かな」
立ち止まるといくつもの喧騒と肩がぶつかる。
木こり「嫌われたり、また相手にされなかったら…」
そう思うと息切れと動悸が一気に込み上げてくる。
ミチオ「大丈夫さ…まだそんな心配してるのかい?」
そうだ…俺にはミチオがいる。
どんな時でも支えてくれたミチオが。
もう16歳になったんだ。新しい生活を送るんだ。この新しい学園で。
俺の肩にはとても暖かい見方がいつもよりも強く抱きしめてくれていた。
ミチオ「木こり」
木こり「ん?」
ミチオ「入学おめでとう」
木こり「ありがとう。」
初めてのここまでの道のりを長く感じたのは気のせいだろうか。振り返るとまだ駅が見えている。そして校門も目と鼻の先に。
満員電車…と言っても俺は座れたが乗り換えを含めてたどり着いたこの道のりは初めての道と緊張もありとても長く感じた。
ミチオ「ここが高校かぁ!早く行こう!」
そう言って走り出すと、俺の後ろから手が伸びミチオの肩を押さえつけた。
?「おい待てよテメェ」
木こり「ミチオ!誰だお前!」
?「あん?噂程度で聞いてたがテメェそんな威勢のいいガキじゃねーだろ。」
木こり「俺の何を知っているんだ。」
?「王位…連れ回してんのに何を知ってるもクソもねぇよ。なぁガキ…テメェには勿体ねぇ。そいつを俺に渡せよ。こっちもお前が好きそうなやつ用意してやっからよ。」
木こり「絶対に渡さない。誰だかわからないけど俺のミチオに触らないでくれよ。」
?「おーー、威勢いいじゃん。なるほどな…ここまで信頼してんなら…」
その男が可逆を使おうとしているのが分かった。
咄嗟に俺も可逆を出しそれを見たミチオも顔つきが一気に変わった。
そしてその男が手のひらを俺の前に突き出す。
木こり「ミチオ!そいつを…」
思わず声を荒げてしまいあたりの視線が刺さるように痛く感じた。
登校中の生徒「なになに?あの人。何してるの?」
?「待てよ…可逆はださねぇ…ガキが…気に入ったぜ。こっちに来い新入生、俺が案内してやるよ。ここまで話しゃもうダチだろーがよ」
木こり「は…?何言ってんだお前?」
?「ヒメノ…」
ヒメノ「やほやほやほーー、君たち新入生?うちの坊ちゃん乱暴でさ…仲良くしてあげてね!うわっその子可愛い名前は?」
ミチオ「ミチオ…です。」
木こり「拠り所!?。」
ヒメノ「急にごめんねぇ!うちのなー君は悪い人じゃないよ?ちょ〜っと顔怖いかもだけど性格とか超可愛いんだよ!」
?「っせーなヒメノ…あんましゃべんな……ゴホン…というわけでこの学園の生徒会役員をしている直人だ。宜しくな!」
ミチオ「ちょっと待って…それじゃ…もしかして君たち…」
直人「あぁ、お前等と同じ王位と祠の関係だよ」
俺の頭の中がおかしくなりそうだった。
拠り所とか祠ってこんなに多く存在しているのか…
ミチオの発言も気になる…一体こいつ等は何を言っているんだろう。
体の力が一気に抜けてどさっと音を立てて地面に倒れる。
木こり「貧血が…」
直人「いけねぇ!保健室!保健室!」
ヒメリ「なー君がやったことなんだから連れてくのなー君でしょ?」
ミチオ「木こり大丈夫かい?」
ミチオ…なんでそんなに嬉しそうな顔しているのさ…同類を見つけたから?友達ができたから?とにかく、少し休みたいよ。
少しだけ、少しだけ…
直人「あーったく、しゃーねぇなぁ…やっぱり噂通り雑魚だったか」
その言葉と同時に俺の体は持ち上げられ彼の背中におぶさる。
木こり「直人先輩……」
直人「あんだよ?」
木こり「あったかい……」
直人「あっ?きもちわりーな」
その言葉を最後に俺は深い眠りについた。
目を覚ますと白い天井と少し黄ばんだカーテンが視界に映る。
?「目が覚めたみたいね。」
直人「悪りぃーことしたなぁ」
?「勧誘生にはいっつもそうだろ?君は俺の時だって…しかし…朝のアレには驚いたね。ちゃんと…というか完璧に王位と一心同体じゃないか。」
?「もしかしたら、うちの直人も歯が立たないのではないかしら…」
ミチオ「木こり!!!」
いつもの顔の周りには朝にあった顔が2人、知らない顔が4人いた。
木こり「こ…ここは…」
?「入学初日から見事に出遅れおめでとう。俺は秋山宜しくな」
ハニカム笑顔の裏に何か闇がある涙ぼくろがついた赤毛のチャラ男…その後ろにはガタイのいいサングラスをかけた軍人みたいなやつがこちらにグッドポーズをしていた。
木こり「は…はぁ」
?「初めまして…気分は宜しくて?登校初日から直人が迷惑かけましたね。私は姫花と申します。以後、私のことは姫様とお呼びください。」
ひらひらとカールした髪がなびきほのかにいい香りのする女性…
そのオーラからはいかにもお金持ち感が漂っている。
?「姫ちゃん!あまり男の人とは話さない方が…」
その後ろからはメガネをかけた背の小さいメイド服の女の子がその女の耳元で囁いている。
木こり「は…はぁ」
直人「やっと起きたか!俺は…」
木こり「直人先輩…ですよね。」
おお、覚えてくれていたかとハイタッチをしてこようとしてくるその手を無視して上半身を起こす。
ミチオ「大丈夫かい木こり!ここにいるみんながずっと付きっきりで見てくれてたんだ。僕も安心したよ。」
そう胸を撫で下ろすミチオに俺はしがみついた。
木こり「なんだよこいつ等、何もされなかったか?大丈夫か?ミチオ…」
ミチオ「安心していい!可逆の力も何も使われなかった。最初は警戒したけど話を聞いてすぐに理解したよ。」
?「あら〜その子起きたのかしら?」
直人「み…みつき先生!迷惑かけました。だいぶ良くなってる!」
そうカーテン越しに覗く保健室の先生の肩の上には千鶴がちょこんと乗っていた。
千鶴「よっ」
木こり「お、お前何してんだよ!」
?「なにしてるもかにしてるも…あんたはほんとみんなに迷惑かけて…昔から変わんないんだから…」
カーテン越しの隙間からお馴染みの顔が見えて俺は驚いた。
木こり「ち…千秋?なんでここに…」
千秋「は?あんたにあれだけ説明したでしょ?受験勉強だって教えてあげてたのに…合格発表の時お母さんだけきてたけど…本当に情けない…私も同じ高校なの!!!」
千秋「ん」
そう言って千秋は右手を俺の顔のすぐ目の前に突き出した。
木こり「なに…」
千秋「んってば」
その腕から頭を離すと俺の顔のすぐ横にオレンジのボトルのお茶が見える。
木こり「ありがとう…千秋」
ミチオ「これからも宜しくね千秋!」
千秋「ミチオ!このへっぽこのどこがいいんだか…私もついてるからちゃんと守りなさいよね!」
先輩たちと先生「複雑だな…複雑ねぇ」
こうして俺の初の高校生活が幕を開けた。
俺にとっては最高の高校デビューだった。
今のところは…順調だった。
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