僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜①


ハインツ回想


アンソロジーが地面にうずくまり鳴いている。
ここは東北の日本海に面する県…

ハインツ「アンソロジー!アンソロジー!一体どうしたのさ…」

アンソロジーは何度も嗚咽を上げながら涙を流し続けた。

ハインツ「アンソロジー!答えてくれよ…僕は君の味方だから…」

アンソロジー「私…怖いの…私…神父様に…」

泣きじゃくるアンソロジーを見て僕は子供なりに抱きしめて寄り添うことしかできなかった。



現在



ハインツ「アビリティ!エリグモス!ハインツ。ヘカトンケイル。へへヒャ。僕の力が1番強い僕の力が1番になるんだ。そして僕たちがされてきたこと…アンソロジーがされてきたことに終止符を打つのさ!」


海面から巨神の腕が次々に伸びてくる。

ミチオ「出流危ない!」

俺を庇いながらもミチオは肩を負傷する。
真っ白いワイシャツからがじわじわと赤く染まってくるのが見えた。

出流「ミチオ…俺…ごめん…」

ミチオ「ほら、次が来るよ!気にしないで早く君も戦うんだ。」

その言葉の瞬間海面から花子さんが打ち上がり天高く打ち上がったのちに姿を消した。

茂庭「嘘だろ…日本で何本の指に入ると思っている…あの怪異をいとも簡単に…かき消すだなんて…」

直人「だったら姫乃!俺たちで!」

ヒメノ「待ってなーたん…あいつ今までとは訳が違う…ちょっと今回は無理かも…」

直人「何弱音吐いてんだ!お前は…」

直人がヒメノの方に顔を向けると、ヒメノは恐怖のあまり震えていた。

ヒメノ「最初から無理って感じがしたの…だから姫花達も遠ざけた。」


みつき「私の転移も精一杯だったわ。ルート126があの攻撃で砕け散ってしまった…おそらく彼は…いや…彼の操る神は」


ミチオ「神、怪異に対して抵抗を持つ力も持っている。だから僕たちの力が効かないんだ。」


直人「おい…笑わせるなって…それじゃあいつ…どうやって倒すんだよ…」

ミチオ「わからない…わからないけど…やるしかない…」


出流「大丈夫…俺とミチオならなんとかできる。なんとでもできる!行こう!ミチオ!」

俺がミチオに手を差し伸べると、ミチオは俺の手を握り返す。

握り返したはずの感覚が今はなかった。

俺はその引っ張ろうとしていた力を失い体制を崩す。

出流「ん?ミチオ…ごめん。」

ミチオ「ハハハ…僕の方こそごめん…ほら行こう。」


出流「あーっいたたたた何するんだミチオ!」
そう言って今までにないくらい強い力で手を握りしめられる。

ミチオ「ごめんごめん…僕としたことが君の手を掴み損ねるなんて…ほんと…ごめんよ…」


出流「気にしなくていいよ!そんじゃ一気に!」

ミチオ「方をつけようじゃないか。」


海面からたくさんの腕を生やした巨神が俺たちの方に向かってくる。

ハインツ「ぶっ殺してやるーーーーーー」



ミチオ「スーーーーーーーッ…天明変幻……」


出流「確か、俺たちの力は全適応…前に他の神の力を使ってたな…ならあいつの力を使って…あいつをバラバラにしようじゃないか!」

俺の左腕から可逆が浮かび上がる。

出流「言霊付与!」

バシャリと可逆が青い光を出しながら辺りに飛び散ると同時に俺の腕に激痛が走った。

ミチオ「祠が拠り所に命令を?出流だめだ!何をやっている。まだ君は僕に………えっ…」

ミチオの髪が青く染まり辺りから無数のヤイバが突き出てくる。

出流「いってぇーーー…ミチオ…この力…」

ミチオ「バカ!僕がまだ完全に変化してないのにその力を使ってはいけない!」


千鶴「運天!」

ガハッと血を吐きながら千鶴が倒れる。

千秋「千鶴…何やってるの!」

千鶴「言霊は自分の体の治癒に干渉することは出来ない…今わしが出来るのはこのくらいじゃ…」

ミチオ「やめろ千鶴!もう2度とその力を使うな………でも…今はありがとうとありがとうとだけ言っておく…でもね…もう2度と自分を犠牲になんてしないでくれ…」

千秋「ミチオ…」

出流「もう痛くない…でも…力の使い方…間違ったのか?でも出せてる…なんで…逆も然りってこと…俺も神の力使えるってことか………アッ………クシシ…出番かよ…相棒…」

おれはその時、体から魂ごと押し出されたような感覚に陥り、意識を失った。

ミチオ「ま、まさか…そんな…共鳴…くそ…なんでかってに…あれ…おかしい…千鶴…おかしい…だって僕が…」


ハインツ「仲間割れか?バカどもが!ヘカトンの鉄槌の豪雨を浴びろーーーー」


出流「あん?なんだこの気持ち悪りぃロボットは…天の逆鉾…破断…」

巨神の腕が真っ二つに割れ地面に落ちる。

ハインツ「あーーー?一発じゃねーよ!死ね!」

出流「だーかーらー、破断だって…全必中。」

茂庭「上…上なのか…」

ミチオ「違う…あれは出流だよ…力が共鳴してるだけ…でもこのままの状態だと…」

出流「あまり神を舐めるな。」



ハインツ回想

養護施設でご飯を食べている時にアンソロジーがいないことに気がつく。

ハインツ「あれ?アンソロジーは?」

子供「アンソロジー?またそんな名前で呼んで…詞華だろ?神父様のところに行ったと思うけど…」

ハインツ「でも神父様は皆んな揃ってご飯を食べなさいっていつも言ってるじゃないか…アンソロジーは?」

子供「わかんない…詞華は神父様のお気に入りだからな。」

その言葉に違和感を覚えて俺は席を立った。

ハインツ「ちょっと神父様のところに行ってくる!」

子供「ハインツ!ご飯は?」

ハインツ「もういらない!」

僕は神父様のいる部屋に駆け出した。

ハインツ「アンソロジー!アンソロジー!」

どこか遠くの方で音がする。
どうやら神父様の部屋の下から音が聞こえる。

アンソロジー「ぐっ…うぐ…」

ハインツ「アンソロジーの声だ!」

床のカーペットを捲ると一部が木目に沿って開けられる仕組みになっているドアのようになっていることに気がついた。

ハインツ「くそ…開かない…」

どうやら内側から鍵がかかっているようだった。

僕はそれでもなんとか開けようと力強く床の隙間を指で押すと指と爪の間に負荷がかかり爪が剥がれてしまった。

ハインツ「いっっっ」

痛みを押し殺し爪を見ているとその爪の先が黒く反射していりことに気がついた。


アンソロジー「うぐっ…ハインツ…助けて…」

その時、指の先の黒く反射しているものがその床の入り口を幾重にも重なる腕でこじ開けようとしていた。

ハインツ「うわっ………」

思わず驚いて声を上げてしまった。

神父様が誰かいるのかねとそのとびらの奥から叫んだ。


アンソロジー「助けて!ハインツ…助けて!」


黒い塊はその扉をこじ開けて俺を中へと放り込んだ。


ハインツ「いったたたた…」

神父「ハインツ君」


ハインツ「神父様?」

神父様が全裸で立ち上がりこちらをぎろりと睨んだ。

その隣には裸のアンソロジーがいた。


ハインツ「神父様?」

アンソロジーが倒れ込む床には陰部から流れる鮮血が滴っている。

神父「何を見ているんだね。これは儀式なのです。ハインツはまだ食事の時間なのでは?早く戻りなさい。」


ハインツ「嫌だ!神父様!アンソロジーを泣かせちゃだめだ。」

上着を羽織りながら神父が近づいてくる。

神父「捨てられた身分のみでこの私に指図するだとこのゴミが!」

俺は何度も何度も殴られた。
全身の肉が焼けるほど熱く腕からは骨が飛び出していた。

ハインツ「あぁ…ぁぁぁ」

その時俺の後ろに黒いものが落ちてきた。

ヘカトンケイル「グギギ…グギャゴ…」


神父様はその異形に目を輝かせながら俺の首を絞める。

神父「おぉ…ハインツ…怖い怖い…まさか君が…悪魔の矛先だったとは…これは脅威ですね。排除しなければ。」

意識が薄れゆく中で神父の背後にはアンソロジーがいた。

アンソロジー「業火…」

アンソロジーの指先からは小さな炎が揺れていた。

その炎を見つめながら彼女は涙を流した。

一筋の日が導火線のように神父の元に流れていく。

その炎が神父と交わると勢いよく音を立てて神父の身体を燃やし始める。

神父が絶叫しながら地面をのたうち回るとその炎は壁や床に飛散し瞬く間に僕たちのいる部屋を焼き尽くそうとしていた。

アンソロジー「ごめんね…ハインツ…助けなんかいらなかった…最初からこうすればよかったんだよ。ねっハインツ…もう私…私…」

僕は薄れゆく意識の中アンソロジーの頬を手首から突き出た骨で優しく撫でる。

ハインツ「君の命は僕が…護る。皆…ここにいる皆だって…僕が…助けるんだ。」

その時、小さな黒いものが幾重にも重なる腕を振り回しながら外に出ていくのが見えた。

ヘカトンケイルとそいつは言った気がした。


現在。


出流「ほらどうした!勢いがなくなったぞ。」

目の前にいる巨人の腕を一本の刀で切り落とし三十を超える残骸が海面に散らばっているが、巨人の攻撃は今もなお、止むことがく続く。

ハインツ「そんな攻撃!大したことないのがわからないのか?どうやら貴様は他の神の力を使えるらしいな…僕たちに神も拠り所の力も効かないことわかっててやってるのかな?ヘカトンケイル!腕を上げろ!」

海面に落ちていた腕が一斉に動き出し中を舞いはじめる。

茂庭「これは…まさか…」

みつき「みんな伏せて!」

千秋「千鶴!」

みつき「ダメ!千秋!そっちに行ってはいけない!」

千鶴「はっ!来るな!主!」

直人「あーくそ…もう間に合わねぇ…ヒメノ千秋を守れ!」

ヒメノ「待って…それじゃなーたんが…」

ミチオ「出流…」

出流「いいねぇ〜来いよ!」

ミチオ「出流!ダメだ…」


ハインツ「アンソロジーの業火を加えてこの世界ごと吹っ飛ばしてやるぜ!」

アンソロジー「ハインツ…これが私たちがやりたかったこと?」

ハインツ「あぁ…間違っちゃいない…僕がこの世界の子供達を護ると決めたんだ…王位開戦に勝って、その夢を…………絶対にーーーーーー‼︎‼︎‼︎」

宙に浮かぶヘカトンケイルの腕からレーザーのように保脳が一斉に出流めがけて放射された。

出流「クシシ!おもしれぇ〜来いよーーーー!………ッッ…ハッ…今どうなって…」


直人「出流!伏せろーーーーーー!」

出流「なんだよこれ…」


ミチオ「間に合ってくれ…君を僕は死んでも護ると決めたのだから…」


ハインツ「燃えろーーーーーーーーーーーーー」


ゴンと大きな音を立てて地面が揺れた。
辺りは炎の渦に焼け焦がれ、ハインツは宇宙をみて笑った。


ハインツ「へヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

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