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僕と拠り所〜王位の本質〜

アナザー木こり「なぁミチオ!最初に助けられたんだっけ?」

アナザーミチオ「いや…どうだったかな目を開けた時にはもう…僕たちの好きなようにやればいいんじゃないかな?」

アナザー木こり「好きにって…じゃぁ、千秋のこと犯してからでもいいの?」

アナザーミチオ「でもそれだとこの世界の千秋も木こりもかわいそうなんじゃない?だって2人はまだ…」

アナザー木こり「うぶだな…」

2人は肩を並べながらこの世界の木こり達同様に仲睦まじく寄り添っている。


直人「さっきの男!」

八咫に防がれ再度攻撃を恐れて距離を取ったところで人神一切を解除する。
ヒメノ「なおたん急に解除しないで!」
直人「あっ、ごめん…」
ヒメノ「もうちょっとでいきそうだったのに…」

その言葉には耳をかさず八咫の方を見つめる。

姫花「あああぁぁ…」

姫花は能力値のリミットがきて強制的に人神一体が解除されその場に倒れ込む。

姫子「姫花様…待って…」

直人同様姫子は姫花を抱えて少し離れた場所に移動した。


千秋「こんなに大変な時にあんたたちは…何言ってるの!」

2人の頭を同時に千秋と千鶴が殴る。


千鶴「破廉恥な…」

ごめん、ごめんよと殴られた痛みすら感じていないのかベロを出して笑っている。
それを見て千秋が泣き崩れた。

千秋「なんで…なんでなの…順先生だって、周健先輩だって…あんな…もう…耐えられないよ…」


あー、とアナザー木こりが頭をかきながら振り返り千秋を見つめる。

アナザー木こり「んじゃ…ここでみんな死ぬか?ルート153〜65536の世界線に紐付けられるが…それでもいいって?」



アナザーミチオ「それ以外の世界も絶望だよ…」


みつき「神域も使えるのか……」

千秋「なんなの…それ………」

2人の会話に瞬時に神域の特性を理解したみつきが驚いた様子で問う。


アナザーミチオ「チッ、チッ、チッそんなもんじゃないよ…」

その時自身のヤイバによって切り付けられた八咫が言霊で傷を癒やし立ち上がる。


八咫「はぁ〜めんどくさいことになったな……雷電!」


八咫の姿が見えなくなりどこかへと消えた。
ニヤリと八咫が笑いアナザー木こり達の背後に回ろうとしたその時
ぽんぽんと八咫の肩をミチオが叩く。

アナザーミチオ「君の速度は秒速30万…ハハハなら仮装だけどタキオンの速度で移動するなら余裕で君を捉えることが可能と言うわけだ。」

八咫「何⁉︎」

アナザーミチオが八咫をニヤニヤと見下し八咫は額から汗が噴き出てくる。

八咫「お前は……」


アナザーミチオ「ハハハ!君が思う通り妖狐だよ!」

八咫「じゃぁなぜ…」

アナザーミチオ「天命…祠…言霊付与…」


八咫「ば……ばか………な」



アナザー木こり「予め付与しておくことでまた光の速度で来るって思ったからそれ以上の速度で対抗したよ…神力の消費激しいんだろ?ならやるなって…」


八咫「お前たちも…お前たちだってその力に限界があるはずだ!」

アナザー木こり「それなら……神力無限…お前の言霊の力じゃないか…笑わせるな」


アナザーミチオ「神が人間界に来ると人の心力を一つ付与される…スサノオ…君は言霊を付与しているんだね」


アナザーミチオはにっこりと微笑む。


八咫「だったらなんだっていうんだ…」


アナザーミチオ「僕は妖狐ではない…とだけ言っておこう…この世界のオリジナルが嫌がるから………ただ一つだけ……」

にっこりと微笑み指を狐の形に変える。


アナザーミチオ「僕には妖が付与されている。そりゃ手の内を見せずに今まで隠すわけだ!だって僕はこんな事だってできる。」


身構える八咫の前で両腕を広げミチオが唱える。


アナザーミチオ「天命変幻…スサノオ!」


アナザーミチオの黒髪が青く変色し身体からは青いオーラが纏い出る。

ただただ八咫を見つめ上目遣いで口角を上げている。



八咫「何が起こっているんだ。」


アナザーミチオ「宝剣万具…」


八咫「まさか…やめろ…」


直人達がその姿を見つめる。
アナザーミチオの後ろから無数の剣が突き出てくる。それは先程八咫が使った攻撃そのものだった。


アナザーミチオ「木こり!」

アナザー木こり「絶対必中!…破断」


無数のヤイバが八咫へと襲いかかる


囁き声「………」



バリバリとヤイバが八咫に当たる中でアナザーミチオが笑う。


アナザーミチオ「いいんだ…いいんだ…全部これで!」

アナザー木こり「くたばれぇぇぇぇぇぇ」


その攻撃が終わり静けさが当たりを包むとアナザー木こりとミチオが驚いて目を開いた。

そこにウヨウヨと怪異達が湧き八咫を守っている。

八咫「これは………」


ガラスが胸元に突き刺さった茂庭がヨロヨロと右腕を伸ばし血を吐く。


茂庭「魍魎道…ガハッ…間に……あった……かな…」


アナザー木こり「ばかな…絶対必中のはず…茂庭!一体何を…」


ダラダラと血を吐きながら茂庭はこう返す。

茂庭「友達が…助けて…くれるから…木こりと…ミチオ…も…絶対に…死なせない…」

ガラスの破片のようなものに突き刺さった彼らの胸元からはいくつもの小さな腕が伸びその破片を取ろうとして同時に修復を行なっていた。
アナザー木こりが鳥肌を立てて叫ぶ。

アナザー木こり「関与しないはずだ!絶対に…茂庭が八咫を護るなんてどの世界も存在しないはずだ!」

アナザーミチオ「どうして……」

その時突如として2人の頭に天使の輪が現れて空へと上昇していく。

アナザー木こり「チッ…舐めやがって…オリジンルートがっ……」

アナザーミチオ「悔いはないだろう…僕たち…いや…君がこれを選んだんだ…僕は悔いはない」

彼らの上に筒状の光の柱が現れる。
そこから1人の少年が降りてきて携帯電話を耳元に当て話し始めた。


?「ハイハーイ…こちら時空警察…世通番号285364の2人捕まえますよ?んで…この周りにいる人たちはどうしましょう?えっ?時間改変無し?そんな…おかしいですよだって…あれ?もしもし?もしもーし…電波?…おかしいな…」

彼の話す携帯電話の先で誰かが笑う声が聞こえやがて音信不通となった。

直人「情報量…多すぎだろ…」

?「情報過多…本当そうだよね…」

その男が細い杖を出しアナザー木こりとミチオに向けて振るうと2人の両手両足を鎖で拘束する。

アナザー木こり「よお…クロノス…久しぶりだな…」

クロノス「本当に…何度も何度も追いかけっこ…ルール無視の大暴走で迷惑極まりないですよ…困った方達だ…」

八咫「時の覇者……」

八咫がクロノスに向かいヤイバを放とうとするが、
全身の力が抜けその場に倒れ込む。


クロノス「あっ…だめだよ!そんなことしたら時空警察が許さないぞ!」


八咫「くそ…傀儡付与か……」



木こり「ゲホ…ゲホ…ハァ…ハァ………」

血を吐きながら茂庭の怪異によって修復寸前の胸の傷からガラスの破片のようなものを引き抜く。それを捨てたのちに、すぐさま目の前にいる白狐を抱き抱え自分の顔へと寄せる。

ミチオ「長い夢を…見ていたようだ…まるで…死んだかのように…まるで…」

白狐もかすかに目を開け立ちあがろうとするがそのよろよろとした足を木こりが強く抱きしめぽんぽんと頭を撫でる。


茂庭「みつきが神域を使ったのなら別の世界の君たちが現れるんじゃないかと…必死に思考を巡らせたよ…怪我…だいぶ治ったろ?」


アナザー木こり「おーおー…やはりここでオリジンのお出ましだぜ…」

アナザーミチオ「これでいいんだよ…僕たちは…」


木こりがその声の方へ目を向けるとその2人は彼の目に映ることなく消えた。

クロノス「ふぅ〜…まさか僕に化けて移動するとは…やっと捕獲だよ…おっ!電話だ!もしもーし!あっ!そっちに届きました?OKです!それじゃぼちぼち戻るので…えっ?揚げまん?なんですかそれ…松月堂?あんこが入ってる?はぁ…わかりました…とりあえずこの世界に干渉しない場所で買いますので…はい…失礼します。………それじゃ僕は急いでるからもう会うことはないと思うけど…またね!」


光の柱に入ると一瞬で姿を消しクロノスはどこかへと、自分がいるべき場所へと帰った。


直人「だから…情報量…」

ヒメノ「……なおたん…もういっかいしよ?」

直人「ふざけんなヒメノ…少し状況考えろ……周健と周…それに木こりの恩師が死んでるんだ…」

姫花「茂庭!!!周健と順が!!」

姫花「もうだめですわ…」


茂庭が地面に落ちた無惨な姿の周健と首が折れ倒れている順を見て絶句した…
木こりもまた同じ顔をしてその場で凍りついた。


木こり「はぁ?……じゅ…順……先生?……周健先輩?」


白狐がやがてミチオに戻り辺りをぎろりと睨み返す。


ミチオ「だから………だったんだ…」

ブルブルと震える身体からは金色の狐の耳が生えしっぽがふさふさと靡く。


ミチオ「だから…嫌だったんだ!!!」


その大きな声で辺りが静寂に包まれる。
ミチオが抱えられていた手から離れ立ち上がり涙を流す。


ミチオ「僕はこうならないように…木こりが傷つかないように…考えて考えて考えて考えて…ふざけるな…」


その時、直人が叫ぶ。


直人「ミチオ!今別の次元のお前達に助けられて…って言ってもわからないだろうけど…ミチオに妖が付与されているのはわかっている…だから…だからスサノオになって言霊を木こりに付与すればいい…そうすれば皆んな生き返るだろ……」

ミチオが直人に視線を向けると直人の体が地面へと崩れる。


ミチオ「言霊で死んだ相手に再度言霊は使えない!先輩先輩って呼ばれてりゃいい気になって…周りからもチヤホヤされて…じゃぁ何故その世界線の僕は真っ先に2人…いや2人と一神を助けなかったか……そこまで理解していってるのかい?」

直人「それは……」

八咫はその時に気付いた。
こいつらがやり取りをしている隙に排除せねばと。
その時八咫もまた力を使うどころか全身の力が入らず、まるで地上に落ちた堕天のように能力そのものを失っていた。


八咫「…この短時間で傀儡を…まさか見ただけで会得するのか…天命……チッ…厄介だな…」


ミチオの能力に一歩後ずさる八咫はミチオから目を逸らさず頬に一筋の汗を垂らす。

みつき「傀儡は自分が対象としたものの神力と心力を奪う能力…八咫は今、普通の一般人と変わらない……だったら今…私がこの手で!」

ミチオ「天命…祠…傀儡付与……そう僕たち拠り所は…王位のみ与えられる天命…そして王位の祠に備わる心力…神と人間に分離された力…僕らのような拠り所は信仰心が薄れた消えゆく神の足掻き……なぜ木こりが王位の器に相応しくないって?何も知らないくせに…血族とか素質とかそんなのは関係のないことだ。彼の持つ心力…それは………」


木こり「付与?おいミチオ…一体何言って…」

ミチオが八咫を見つめる中みつきが泣きながらナイフを懐から出し八咫に覆い被さる。


みつき「死ねーーーーーーーー!」

順一「待て!早まるな!」

順一が押さえ込もうとするも神域で瞬間的に時間を改変しその抵抗を回避する。




茂庭「やめろーーーーーー」


ザクッと鈍い音がして、真っ赤な血液がポタポタと垂れる。


みつきが目を開くとそこには制服姿の少女の胸元に自分が握っているナイフが深く刺さっていた。


八咫「あぁ……?」



茂庭「………………」


高嶺恭子「もう…やめようか…………」


八咫「恭子…………恭子…?」


茂庭「………………」

直人「………」

ヒメノ「………」

姫花「………」

姫子「………」

順一「………」

千秋「………」

千鶴「………」

木こり「………………」

ミチオ「………………」







みつき「なんで………………………………」

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