歯医者

歯医者で歯のクリーニングをしてもらおうと予約して、歯医者に行った。歯医者に着いて、診察を受けると、とりあえず、歯の健康診断をしましょうとの事だった。歯のクリーニングで健康診断とかするんだ。と疑問に思いつつも、レントゲンを撮ったり、担当の歯医者さんに様子を診てもらったりした。歯医者の見立てによると、私の前歯の表と裏にタバコのヤニがこびりついていて、「削り取らないと、取れないかも」というような事を言っていた。また、「怪しいキノコの紅茶でも飲んだ?」と冗談を飛ばしていた。そして「少し左下側かなぁ、歯槽膿漏かもしれないね」と、歯槽膿漏の治療を促された。「ただ、そんなにひどくないから、様子を見てもいいんだけどね」と言うので、私も「様子を見ましょうよ」と答えた。その日は結局、歯の健康診断のみで、次の予約を取って帰った。
 翌週、歯医者で口を長い時間開け放して、歯医者さんにヤニを取ってもらっていた。口を長い時間空け続けるという事を普段しないし、20年ぶりくらいの歯医者なので、私は口を開け続けていると苦しくなってしまい、むせてしまった。口を開けてはむせてを繰り返し、そのたび歯のクリーニングは中断してしまい、ようやく終わった頃には1時間ほど時間が過ぎていた。「どうしようか?次回にしましょうか?まだ残ってるし。あと歯槽膿漏の治療も次回やりましょうか?注射、歯茎にするんでちょっと痛いけど」と言われ、あれ、歯槽膿漏の治療は様子を見るんじゃないんでしたっけ?と思ったものの、歯医者さんの中では、治療をやることになっていて、治療前提で歯医者さんが話を進めていた。私もなんだか話を止めるのが申し訳なくて、ついつい来週の予約で「歯槽膿漏の治療で」と予約することになってしまった。歯医者を出てから、後悔の波が襲ってきて、やっぱり注射やだ、と心のダダがこねていた。それから、次の歯医者の日まで憂鬱で仕方なく。ただでさえ口開けてるだけで、むせるのに、注射などされた日にゃあよ、酒を飲んでは荒くれて、生活は荒んでいった。これはよくない事だと、孫子の兵法にも書いてあった気がするので、歯医者に電話した。
「あの~〇日に予約したものですが」「あぁ~○○さんね。どうされました?」と受付のおばさんが電話に出た。
「あの、治療のキャンセルをしたいのですが?」
「承知しました。では、次の予約は同されますか?」
「いや、もう行かないです」
「治療をやめるってことですか?」
「やめます」
「なにかありました?」
「や、なにもないです」
「あの、あれでしたら、今担当されてる先生、ここの歯医者辞めたんで、他の歯医者さんが担当しますが?」
そう言われても、医者の問題じゃなく注射が怖いのだ。私はそれでも「やめます」と続けて、ようやく受付のおばさんは電話を切ってくれた。こちとらバックレてもよかったの律儀に電話することもなかったな。と、バニラのアイスクリームのハーゲンダッツを食べた。

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