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漢字で感じる人間学35(観の目強く、見の目弱く・観その4)

「観の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也」剣聖と言われた宮本武蔵の五輪書の中の一節です。五輪書の中でも最も有名なところかもしれません。

「観の目」ですが、「観」のもともとの意味から紐解いていくと、「観」とは神聖な鳥の視点、視座でした。遥か高いところからも、地上すれすれからも自在に切り替えられる視点。そして観えない聲や音まで聴き容れることのできる深みを持った視座のこと。「観の目」とは「一瞬にして全体を捉える目」ということになるかと思います。

「見の目」とは、今見えるもののこと。これは、これで大事なことですが、それに囚われ過ぎてしまうと、時に運動や思考、行動の自由度が失われてしまいます。視覚はとても大事なものですが、視覚情報は電磁波の中でも「可視光」と呼ばれる一定の範囲のHzに含まれています。目に存在する視細胞も、赤、緑、青色の波長の光の3原色を捉えるように作られており、それ以外の波長の情報は見ることができません。

でも、それ以外にも相手が発している情報は沢山あります。相手の気持ちや思い、立場やその行動の意図といったものは、単に目に見える光線の情報だけでは表せません。それをも含めて読み解いていくこと。それが「観の目」なのだと思います。

時に目を瞑ってみることで、逆に分かってくるものがあったりします。武蔵は兵法者の立場からその重要性を説いていますが、戦う時だけではなく、生きていくこと全般に言えることだと思います。

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