見出し画像

今宵、キングオブ定食屋で。

ハンバーグ定食 菱田屋@駒場東大前


 駒場東大前って天才しか使わない駅だと思ってた。
 東京大学と筑波大附属駒場中・高校があるため、偏差値70以上の人間の聖域にしか見えないのはただの凡人の偏見。当たり前だけど、普通に住宅街があるわけで、僕みたいな凡人も仕事で立ち寄ることもあると知ったのは40歳を超えてから。

 今では良く仕事をお願いする編集スタジオがあって、時々訪れる駅になった。駒場東大前を使うようになって、駅前のとても小さな商店街なのだけど、実に心をくすぐる飲食店が多数あることを知った。学生街に昔からありそうなお店ももちろん、小洒落たお店も結構ある。

 そう、僕にとって、駒場東大前のスタジオに来ること=「今日はどこで食べようか」と楽しみの日でもある。

 で、やっぱり駒場東大前って、天才がいる町なのだなと確信した。
 その筆頭が菱田屋。全国的に有名でいつも混んでるが、一度食べればうなづける。学生街ならではのボリュームの上、一品一品丁寧に作られてて、ものすごく旨い。毎日看板に書かれるメニューのバリエーションも天才的! 大学時代、近くにあったら毎日のように通っただろう。
 日本の定食屋界で王座に君臨するお店のひとつ、いや僕にとって菱田屋こそ定食王だと思っている。

 いつもはランチで使うことが多いのだけど、今日は午後のスタジオ仕事なので、終わってから菱田屋へ行こうと決めた。なんならランチだと頼めないハイボールも頼もうと想像してウキウキしてきた。早く仕事終わんないかなぁ。

 祈りが届いたのか、スタジオ作業は順調に進み18時前に終了した。わっしょい!
 さあ、いくぜ菱田屋!

 他のスタッフも誘ってみたものの、みんなまだ仕事が残っているらしく一人で向かうことになった。
 あれ? 意外に一人で菱田屋に入るのは初めてかも。
 いつもは3~4人くらいで来るので、僕はたいてい生姜焼き定食かカニクリームコロッケ定食あたりを頼みつつ、餃子や焼売をみんなでシェアして食べている。
 特にここの焼売は、マジで旨い。おすすめ、ぜひ!

 一人で入ると食べきれないからサブメニューは頼めないのが残念だけど、今日はハイボール飲んじゃうからまあいいや。

 店内はすでに混んではいたが、一人だったからすんなり入店できて、カウンターに通された。こういうところは一人飯の良さだよね。

 さっそくハイボールを注文して、壁にかけられたメニューを眺める。
 うーん。
 残念なことに近視が進んでいて、文字があんまりよく見えない。ついでに老眼も進んでるから、手前も見えづらいんだけどね。焦点がめっちゃ狭い。
 見えないし、まあ、いつも通り生姜焼き定食でいいか。とメニューを決定した刹那、隣の席にジュウジュウと音を立てた鉄板が提供された。目が釘付けになる。
「ハンバーグ定食お待たせしました」

 「!」

 鉄板でまだ焼け続ける肉。そして立ち上る湯気。ええ匂いや~。
 めっちゃうまそう!

 ハンバーグ食べたことないけど、これは絶品の予感。焼売の餡(ひき肉)もめっちゃ旨いし、ここのハンバーグはきっと食べた方がいいと僕の第六感が騒いでいる。

「ハイボールです」
 カウンター越しにハイボールが提供されたと同時に僕は
「ハンバーグ定食お願いします」
 と告げていた。
 隣のお兄さんがチラッとこっちを向いたけど「初めからハンバーグ食べようと思ってましたけど何か?」と素知らぬふりをする。

 ハイボールをちびちびやっているうちに、ハンバーグ定食が僕の目の前に現れた。
 ジュウジュウ鳴ってる! くーっ、うまそーな匂い!
 厚みもあるから250gくらいの大きさだろうか? とりあえず一切れナイフで切ってタレにつけて食べる。
 うまーい。すごく肉肉しい。表面はカリッと焼かれていて、中はぎっしりと詰まった肉から肉汁がジュワーって感じ。つなぎがほとんどなく肉の旨みと脂の甘みがガツンとくる。ひき肉でできたステーキ、まさにハンバーグステーキというヤツがこれだ。ハイボールもゴクゴクと飲み干してしまう。普段ならハイボールをおかわりするとこだけど、ハンバーグを白飯でかき込みたい気分にさせられた。酒を飲み始めたら、つまみと酒モードになってしまう僕におかわりを止めさせるほど魅力的な定食なんてそうそうない。
 ハンバーグを白飯バウンドで食べて、ちょっとタレが染みた白飯を追いかけさせる。
 うまーい。

 いやー、初めてハンバーグ定食を食べたけど、やっぱり菱田屋は最高だな。生姜焼きばかりでなく、他のもいろいろ食べてみるべきだよねと改めて心に誓う。

 次、駒場東大に来る予定っていつだっけ? すでに待ち遠しい。
 いつもランチ帯でばかり食べてたから感じなかったけど、夜は定食じゃなくてつまみと酒での居酒屋利用しているグループも結構いるのだと知った。
 今度また一人で夜に来ることがあったら、僕も単品をいくつか頼んでハイボールしばくのもいいよねって思ったら、さらに楽しみになった。

 うん、天才の町でご飯食べたからかな? 賢さが1上がった気がする。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?