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【書籍】民主主義とは何か① 序 民主主義の危機

民主主義の危機を4つのレベルで考察する。
1.       ポピュリズムの台頭
2.       独裁的指導者の増加
3.       第四次産業革命と呼ばれる技術革新
4.       コロナ危機


ポピュリズムの台頭

まず、第一のポピュリズム。2016年のブレグジットが世界的に話題となった。議会主義の祖国ともいわれる英国が国民投票の結果、EU離脱を決定。その裏では「EUを脱退すれば、分担金を国民保健サービスに回せる」といった多くの虚偽情報が飛び交い、国民投票の結果に少なからず影響したと思われる。また、同年11月の米国大統領選もSNSを通じたフェイクニュース、プロパガンダ等もあり、トランプ大統領が誕生。この2つの事象が、ポピュリズムを大きくクローズアップさせた。

独裁的指導者の増加

第二に、独裁的指導者の増加。米国のトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩委員長、フィリピンのドゥテルテ大統領、トルコのエルドアン大統領など、独裁的とされる指導者の名前はたくさん挙がる。かつて世界の国々は、いつかは民主化するという風潮があった。経済の発展のためには所有権の法的保護、公正な裁判などが必要。そして、経済が成長すれば、中間層が育ち、自由化や民主化を求める。つまり、市場経済と自由民主主義体制は相関を持ちながら成長すると考えられていた。しかし、現在ではこの考え方が揺さぶられている。経済成長にとって、むしろ独裁体制の方が望ましいのではないか、といった考え方が力をもってきた。

第四次産業革命と呼ばれる技術革新

第三に、第四次産業革命の影響。AIが発展し、人々の仕事を奪うとしたら、職を失った人々の生活保障をどうするべきか、考える必要がある。職を失う人々とは反対に、技術革新によって富を得るのがごく一部の人々に留まるのであれば、その富をどうやって再配分していくか。
それだけではなく、AIの知能が人間を上回ったとき、AIが人間を支配する可能性すらある。そうなると一人一人の人間を、理性をもった平等な判断主体とみなせないかもしれない。多くの人間が自らの思考を外部リソースであるSNSやAIに頼り、その下で判断される民主主義は、はたしていかなる意味があるのかが問われるだろう。

コロナ危機

第四に、コロナ危機。個人に関する位置情報の追跡、病院の診察記録との紐づけ、強制的なロックダウン、といったコロナ封じ込め手段を取った独裁的指導者も多い。このように、いち早く変化に対応し、迅速な決定を下すにあたっては、独裁的国家の方が都合がよいという声もある。

(続く)

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