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代用品のプライド(ベーゴマ考62)

戦争中に鉄が使えなくなった影響は
子どもの遊びにも影響し
小さなベーゴマ達は子ども達の前から消えた。

考察61でガラスのベーゴマについて記したが
今回は陶器のベーゴマについて考えたい。

そのままの形

私が持っている完品はこの黄色に着色された物しかない。
違うものを買った際にオマケとしてついてきた。
15年くらいの間に
何度か箱ごと潰れた駄菓子屋かなにかから出た
デッドストックの陶器のベーゴマが
藁に包まれた形でオークションにでたことがあった。

それらのいずれかのものであろう。

鉄バイと呼ばれる戦前の形をそのまんまモチーフにしたのか、
どちらかというと、
もともとバイ貝だったころのデザインに戻っている気がする


欠けたベーゴマ

陶器のベーゴマは対戦させたり、床外しして、地面に落ちると
当然欠ける可能性が高く、
完品の場合はほぼデッドストックである

上の写真を見てもらうと、一部が欠けているのがよくわかる。

そして、右と左をよく見ると、
大きさ、型、模様、材質が少し異なるので
戦争中の代用品としてつくられた
陶器のベーゴマであったが
いくつかのメーカーが存在していたと推測される。
時代によって、入手できる材質の変化と考えることもできるが、
型の違いからメーカーが異なると考えるほうが自然だ。

加工の余地

ガラス製と異なり、陶器製のメリットは
ベーゴマの醍醐味である「加工」ができたことだ。
ヤスリなど鉄製の道具も
おっぴろげには使いづらかったであろうから
その辺の道路などに擦り付けて加工できたのは
強みと言える

持っているものにも
加工の跡がみえる。

歴戦をくぐってきてるのでわかりにくいが、
角をけずり、六角や八角形に形成しているのがわかる。

また裏面も
かろうじて、4面削りや8面削りの跡が見える

ぶつかったときにかけたのであろうか

右側なんてもうぼろぼろ

しかし、イメージとしては
ガラス製のほうが材料を得にくいような気がするのに、なぜ先に陶器製が流通して、ガラス製になったのであろう

戦時統制の刻印が刻まれた
食器などもあるし、最後は手榴弾とかも陶器になったと聞く。
割れるガラスより、陶器の方が戦争の道具につかいやすかったのだろうか。
瀬戸物の企業は回され、陶器のベーゴマまで奪われたと思うと心が苦しくなる。

ブリキの代用品

以前友人から
とんでもないものを得た
ブリキ製のベーゴマの代用品である。

こんなものは見たこともなかった。
しかし、鋳物で作れなくなった際に
ブリキで作ろうとしたのはわからんでもないし
どこからどうみてもベーゴマである。

面白い特徴が、
上部が蓋になっていて、中におもりとなるものをつめて使っていたようだ。
蓋を開けると
中にはコールタールのカスのようなものがはいっていたようで、当時は中に充填されていたのか、
自由に好きなものを詰めれたのであれば
それはそれでおもしろい。

加工された貝殻だけ買って
粘土や砂、蝋などを詰めた空バイのように
その工夫の余地が戻ったとしたら…
それはそれでおもしろい。

陶器製、ブリキ製、ガラス製を
ならべてみた。

ちいさなちいさな
この独楽達は戦争に翻弄された
子ども達の声を今にとどけてくれる。

苦しくて
こわい時だからこそ。

小さなおもちゃは
こどもにとって、心を支える上で
大切だと思う。

戦争は大人の世界で起こるが
その猛火の下に
子ども達がいて日常が崩れていくことを
わすれてはいけない。

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