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【三菱の歴史】

岩崎弥太郎(1834〜85)は日本3大財閥の1つ「三菱」を創立した人物です。幕末土佐藩の郷士出身です。徳川幕府瓦解後の時代に、海運業を中心に実業家として三菱財閥の基礎を築きました。
同じ土佐藩の武市半平太(1829〜65)、坂本龍馬(1836〜67)と同時代を生きた人物です。

岩崎弥太郎を考えるにあたり、まず幕末土佐藩の2人について説明します。
①武市半平太(武市瑞山)
・武市半平太は土佐勤王党の盟主でした。
幕末土佐藩の藩論を「尊王攘夷」に転換することに成功させたのは武市です。
武市は江戸に出て、長州藩の桂小五郎、久坂玄瑞、高杉晋作ら尊王攘夷派と交流しました。吉田松陰の「草莽崛起」の思想に影響を受けたとされています。土佐勤王党には坂本龍馬も加盟していましたが、龍馬の脱藩に伴い袂を分かちます。
 一時尊王攘夷で藩論がまとまった土佐藩でしたが、藩主山内容堂が安政の大獄で蟄居の処分を受けたことで状況が一変します。武市は投獄され、切腹を命じられて果てます。
享年37歳。辞世の句は、
「ふたたびと
 帰らぬ歳をはかなくも
 今は惜しまぬ身となりにけり」
②坂本龍馬
あまりに有名な人物なので、岩崎弥太郎を説明するために必要な情報を中心に説明します。
・土佐藩脱藩、勝海舟の弟子となる(1862)
・神戸海軍操練所の塾頭になる(1863)
・池田屋事件(1864)
・長崎に海運・貿易のための結社「社中」(のちの「海援隊」)を組織する(1865)
・薩長同盟締結(1866)
・「船中八策」を起草(1867)
・京都「近江屋」にて暗殺される(1867年12月10日)
享年31歳。
坂本龍馬を考えるにあたり、自分が注目するのが「海援隊(社中)」です。それは、商業的活動に従事する近代的な株式会社に類似する組織でした。幕末の第二次長州征伐(1865)では薩摩藩を介してイギリスの武器弾薬を長州藩に販売する仲介的な役割を果たしました。

岩崎弥太郎は現代まで続く三菱グループの創設者です。東京駅の「丸の内」はほとんど三菱の地所です。「丸の内の大家さん」と呼ばれるほどです。日本の超一等地のビジネス街の大半を所有しています。
ではなぜ、三菱財閥はこんなにも莫大な資産と財力を持てたのでしょう?
岩崎弥太郎は土佐藩出身の郷士でした。しかも、武市半平太や坂本龍馬よりも身分は低く、貧しい環境に生まれました。江戸幕末瓦解後、明治初期の岩崎弥太郎と三菱財閥の創立の過程を考えてみます。

明治維新後、土佐藩は坂本龍馬暗殺によって解散した「海援隊」の後身として大阪市西長堀にあった藩の蔵屋敷で「九十九商会」を創設しました。
岩崎弥太郎の活動は下記の通りです。
・土佐藩から「九十九商会」の監督に任命される(1870)
・「三菱商会」を創設。藩から船3艘を買い受けて、海運業を開始。(1873)
・三菱汽船会社に改称。帝国郵便蒸気船会社の船舶を無償で払い下げられる。(1874)
・日本郵船会社設立。共同運輸会社と合併。(1885)
・近海航路、ボンベイ航路、欧米豪の3大外国航路を開設。

岩崎弥太郎の没年は1885年なので、ここまでが岩崎弥太郎が切り開いた会社と言えます。

岩崎弥太郎は、幕府瓦解後に坂本龍馬が設立した「海援隊」の後身である「九十九商会」を引き継いで海運業を営むことになったのです。海運業に必要な船は明治維新で瓦解した土佐藩から安く買い受けました。時代の変わり目の中で、幕末土佐藩の遺産を全て引き継いだかのようです。
そして、弥太郎は同時に「政商」でもあったのです。「政商」とは、「政治家や官僚と癒着して優位に事業をすすめた事業家」のことです。弥太郎の後ろ盾となった政治家とは、大久保利通(薩摩藩)と大隈重信(佐賀藩)です。

年表を並べるように書いて来ましたが、弥太郎が会社設立・発展のために生きた時代は1870〜85年です。弥太郎が生きた時代はどのような時代だったのでしょう?
・反乱士族の時代(1870〜78)
①佐賀の乱(1874)
・江藤新平死去。
②秋月の乱(1876)
③萩の乱(1876)
 前原一誠死去。
④西南戦争(1877)
 西郷隆盛死去。
⑤紀尾井坂の変(1878)
 大久保利通死去。
岩崎弥太郎の「三菱商会」はこれら反乱士族鎮圧にあたり、政府の軍事物資の輸送に従事して巨万の富を手に入れたのです。また、台湾出兵(1874)でも物資の移動に貢献しました。
そして、弥太郎死後も
①日清戦争(1894〜95)
②日露戦争(1905)
③第一世界大戦(1914〜18)
上記の戦争において、物資輸送の重要な役割を担いました。

岩崎弥太郎の起こした「三菱」は日本3大財閥のひとつでした。第二次世界大戦後、 GHQの指令により財閥は解体されます。その際の三菱財閥の総資産は現在の価値で120兆円規模だったそうです。
「三菱」について考える時は、今はなき「土佐藩」のことを考えます。そして、武市半平太や坂本龍馬の姿が浮かんできます。

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