「長良川鉄道 郡上八幡と美濃の町並み」を辿る

0.はじめに

みなさんこんにちは。
今回は、10月末に長良川鉄道 越美南線(ながらがわてつどう えつみなんせん)に訪問した際の旅行記について書きたいと思います。
特に深いテーマはないぶらり途中下車の旅みたいなものなので、お暇な時に読んでいただけたら幸いです。

長良川鉄道越美南線(以下、基本的に「長良川鉄道」と表記)は、岐阜県の美濃太田(みのおおた)駅から北濃(ほくのう)駅を結ぶ全長72.1kmの路線です。
かつては国鉄時代に「越美南線」として1934年に全通した路線でした。開通後は御母衣(みぼろ)ダム、九頭竜(くずりゅう)ダムの工事用資材の輸送や、スキー客や郡上八幡(ぐじょうはちまん)への観光客の送迎に大活躍しました。
その後、国鉄民営化を前に第三セクターの「長良川鉄道」に譲渡され、1986年にいくつかの新駅開業と共に「長良川鉄道越美南線」として開通しました。
名前の通り長良川の清流に沿って列車が運行されており、列車の車窓からは美しい川沿いの風景を楽しむことができます。
また土日祝には観光列車「ながら」が運行されており、車内で沿線の食材を使った料理を楽しみながら、のんびりとした列車旅を楽しむことができます。

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(※上記画像は 公式ホームページ からの引用)

今回はこの長良川鉄道と沿線の名所を、終着駅である北濃駅から南下し美濃太田駅へと向かうようなイメージでご案内したいと思います。

1.北濃駅

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美濃太田駅から2時間弱ほど乗車すると、終着駅の北濃駅に到着します。

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この駅の構内の北側を覗いてみますと、なにやらこの先も線路が続いてそうな雰囲気となっています。
しかし先述の通りこの駅は終着駅であり、どこへも線路は繋がっていません。
では、なぜどこかに続いているかのような形で放置されているのでしょうか?

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その答えは、「越美南線は、遠く離れた越美北線の九頭竜湖駅まで繋ぐ予定があったから」です。
かつて国鉄は「越美線」として福井から岐阜まで鉄道で繋ぐ計画を行っており、まず先述の通り『美濃太田駅~北濃駅を繋ぐ越美南線』と『南福井駅(現在は越前花堂(えちぜんはなんどう)駅)~九頭竜湖駅を繋ぐ越美北線』までを開通させました。
しかし国鉄の業績悪化に伴い工事は中止され、JR移管後も美濃白鳥駅から九頭竜湖駅まで国鉄バスが走っていましたが、その後2002年には廃止されてしまいました。

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そのため2021年1月1日現在、北濃駅から九頭竜湖駅に向かう場合は、大野市営バス(前坂線)と郡上市自主運行バス(石徹白線)を乗り継ぐコースが唯一となります。
しかしこのルートでは本数がかなり少ないうえ、途中でバスが途切れてしまうために徒歩での移動区間が8kmもあるという苦難の道のりとなっています。
しかしこんなルートでも実際に走破した方が複数名いらっしゃるそうです…。中には冬場の雪道を歩いて行ったり、一晩道中で泊まってから走破したりと様々なパターンがあるそうなので、興味がある方は先駆者の軌跡を調べてみましょう。

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また、この駅には蒸気機関車の向きを変えるために使用される転車台が残されています。
この転車台は明治35年にアメリカから輸入され、元々は岐阜駅で使用されていたようですが、昭和9年に越美南線が北濃駅まで開通した時にここに移設されました。
実は国内最古の転車台であり、現在でも地元住民らの手で大切に保管されており、実際にいま現在でも動かそうとすれば動かせるようです。
(最近でも『空から日本を見てみよう+』の放送で転車台を回すシーンが放送されていました。)

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この駅は無人駅となっていますが、かつては駅員が配置されており、その頃の駅舎が食堂「終着北濃駅」として営業しております。

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ここでは五平餅をはじめとする軽食や、長良川鉄道のグッズが販売されていました。
他にも定食類も提供されており、店内は乗客以外の方も大勢いらっしゃっており大変にぎわってました。

2.郡上八幡城と城下町

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北濃駅からしばらく南下し、郡上八幡駅で下車しました。
おそらく長良川鉄道沿線の名所の中では最も有名な場所ではないでしょうか。
(※郡上市はとても広大なので、便宜的にこの記事では駅周辺の地を「郡上八幡」と呼称します)

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郡上八幡は、郡上八幡城を中心とする城下町で、毎年7月中旬から9月上旬までのべ32回にわたって開催される盆踊り「郡上おどり」が有名な地です。
特に毎年お盆の時期に開催されている「盂蘭盆会(うらぼんえ)」は一度はニュースで見かけた方も多いのではないでしょうか。

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また、街の各所に郡上八幡城下の防火などを目的に築造された水路が巡らされています。
一部は整備され観光資源となっていますが、多くはいまも生活用水として利用され続けています。

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特に郡上八幡のシンボルとして親しまれているのは「宗祇水」と呼ばれるこの湧水です。

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水場は湧口から順番に(写真の右側から順番に)
「水源」→「飲料水」→「米等洗場(スイカ冷やしに利用)」→「野菜等洗場」→「さらし場(桶等をつけておく)」
と仕切りで分かれており、観光地であると同時に現在も地元の方が大切に利用しています。

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このとても美味しそうな秋の味覚は郡上八幡の特産品の一つです。
ただし、これは全て食べることはできません。いったいどういうことでしょうか?

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実はこれらは全て食品サンプルです。
郡上八幡では、この地出身の岩崎瀧三氏が設立した岩崎グループが全国の大半を作り出す地場産業となっています。
食品サンプルはすべてがメニューに合わせて、一品一品手作りで作り出す職人技です。

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その食品サンプルを展示する「さんぷる工房」では実際に本物そっくりの食品サンプルを買う事ができるほか、実際に食品サンプルの制作体験もできるようです。

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続いて街のシンボルとなっている「郡上八幡城」に訪れました。
こちらの城は1559年に初代城主の遠藤盛数が築城し、明治時代に一度は廃城となったものの1933年に再建されました。

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八幡城の天守閣からは郡上八幡を一望することができます。

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こちらは城の入場門のすぐ近くにある「およし塚」と呼ばれる石碑です。

江戸時代に城の改修工事を行う際に工事は難航を極めたため人柱を立てることになりました。
その時に人柱としてお城の下に眠る事になったのが数え年17歳のおよしで、お城を護るためにと人柱としてお城の下に眠ったのでした。
そんな彼女を忍ぶための石碑で、郡上おどりの期間中には「およし祭」という縁日おどりが行われています。

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そんな彼女ですが、今では郡上八幡城の観光キャラクター「およしちゃん」として現代風に姿を変えて(?)活動しています。
【公式Twitter】で郡上八幡の魅力を発信しているだけでなく、KONAMIのメディアミックス企画である「バンめし♪」とタイアップしたラジオ番組「およしちゃんのバンめし♪おくれんかな?」でメインパーソナリティーを務めている(現在は放送終了)など、精力的に活動を行っています。
ちなみにお城の護り神となっているため、活動範囲はお城から半径900Mだけのようですが、目が緋色に変化するとその1.5倍の1350Mまで行動することができるようです。

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郡上八幡は観光客向けのお店も多くあり、一日がかりで楽しめる街だと思いました。
今回は「蕎麦正 まつい」でお昼をいただきました。

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ただし郡上八幡駅から郡上八幡城まではそれなりに距離があるので、
電車でアクセスする場合は駅前でタクシーを拾うか、駅でレンタルサイクルを借りることをお勧めします(レンタサイクルは夕方4時までの貸出)。

3.郡上八幡駅から美濃市駅へ

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長良川鉄道はひたすら長良川に沿って運航していますが、
特に郡上八幡駅と美濃市駅の間は美しい風景が見られる箇所がとても多いです。
その景色を楽しむなら「ゆら~り眺めて清流列車」に乗る事をお勧めします。

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この列車に乗ると、特に車窓からの眺めが素晴らしいポイントになると車掌さんがアナウンスして減速してくれるサービスがあります。
写真を撮る時間は十分にあるうえに、スポットも非常に多いのでゆったりと楽しむことができるでしょう。

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この列車は毎日2便運航されており、
「9:56 美濃太田発」と「14:07 北濃発」となっています。

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ところで、しばらく車窓を眺めていると「日本まん真ん中の駅」という看板が見えました。
こちらは郡上市美並町の八坂駅に設置されている看板で、近くに「日本の人口重心の地」があることをアピールするため設置されたようです。

人口重心とはある地域に住む人々の居住地点からなる図形の重心のことを指します。
つまり日本人口重心の地というのは、ざっくりと言うと「日本に住んでいる全ての人が同じ体重を持つと仮定した場合、全員を支えることができる中心地点」ということです。

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余談ですが八坂駅から5駅離れた赤池駅の近くには、このことを記念して設立された「日本まん真ん中センター」というものがあります。
ただ人口重心の地は国勢調査のたびに少しずつ移動しているようなので、日本まん真ん中の地がズレる未来もそう遠くないかもしれません。

4.美濃市のうだつの上がる町並み

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さて、そのまま南下して次は「美濃市駅」で下車します。

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駅からしばらく歩いてると、「美濃駅」が見えてきました。
こちらの周りには線路が通っているように見えませんが…?

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こちらは「旧名鉄美濃駅」です。
かつて美濃市には岐阜市から繋がる「美濃町線」という路線が通っていましたが、1999年に廃止されてしまいました。
しかし大正時代から使用されていた駅舎とプラットホームが現在でも残されており、無料で見学することができます。

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ホームに展示されているのは全て美濃町線にゆかりのある路面電車です。

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旧名鉄美濃駅からさらにしばらく歩くと、美濃市の名所である「うだつの上がる町並み」にたどり着きました。
ここには江戸時代に造られた歴史的景観が現存しています。

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「うだつ」とは日本家屋の屋根に取り付けられる防火壁のことです。
写真のように、屋根の両端を一段高くして火災の類焼を防ぐために造られています。このため裕福な家しかうだつを造ることができなかったので、「うだつを上げる」「うだつが上がらない」といった言葉の語源であると言われています。

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うだつの上がる町並みには、江戸~明治時代にかけて造られた商家が軒を連ねており、令和の日本に残されている貴重な風景を見ることができます。
また古くからの特産品である美濃和紙を販売しているお店が各所に見られます。

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ちなみにこのキャラは、美濃市が誇るうだつが上がるゆるキャラの「うだつくん」です。
こう見えても実は2009年には雑誌SPAの「2009ゆるキャラアワード」で準グランプリを獲得した実力者で、市内外のイベントに出演し美濃市をPRしているようです。

5.おわりに

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長良川鉄道のお話はここまでになります。
郡上八幡や美濃の町並みももちろん素晴らしいのですが、
何より長良川鉄道に乗らないと見ることができない長良川の美しい車窓風景は、写真と文章だけではどうしても伝えられないものがあると思うので、皆さんも機会がありましたらせひ一度はご乗車してみてはいかがでしょうか。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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