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ノルウェーの森でキノコ狩り

ノルウェーに来てずっと心惹かれていたのが、きのこ狩り。

赤ずきんちゃんみたいに、バスケットを持って森に入ることに憧れを抱いていました。

今回、きのこ狩りイベントがあるとのお誘いを受け、期待に胸を膨らませて参加してきました。

活躍するキノコ専門家

2日間にわたるイベントで、1日目はキノコ専門家による2時間半の講義。2日目は実際に森に入ってキノコを採ります。

ノルウェーには、100年以上の歴史を持つ「キノコ協会」があり、きのこ狩りの安全のために、公認資格を持った専門家による様々なサービスが提供されています。

秋になると、きのこ狩りスポットとして人気の森には専門家 (Mushroom Controller) が配置され、収穫物から毒キノコと食用キノコを仕分けしてくれます。

また、専用アプリが開発されており、きのこの写真を送ると、食用かどうかを判別してくれます。他にも、専門家が待機する森の検索、毒の症状報告、きのこ辞典など、充実の機能が入ったアプリです。

https://soppkontroll.no/
アプリ内のキノコ辞典

協会は、ノルウェー各地できのこ狩りツアーや勉強会を開催しています。
今回のイベントは在住外国人グループからのお誘いでしたが、キノコ協会とコラボして、英語による初心者向けイベントを企画してくれたようです。

食用キノコ・毒キノコの基本の基

1日目の講義では、どれが食用キノコでどれが毒キノコなのかを、たくさんの写真と実物をもとに教えてもらいました。

講師が何度も強調していたのは、キノコは何千種類もあり、食用の方が少ないので、初心者が判別するのは決して簡単ではないこと。わかるようになるには経験が必要だから、数を重ねながら少しずつ覚えていけばいいこと。

キノコ専門家による講義

毒キノコか食用かの判別でまず最初にやることは、キノコをひっくり返して観察すること。

きのこの傘にはいくつかの種類があって、たとえばこんな感じ。

  • まっすぐなエラが並ぶタイプ:毒きのこ率高し。でも、しいたけのように食用もあるので、素人での判別は難しい。

  • ちいさな牙が密集するタイプ:食用

  • チューブタイプ:食用が多い

  • 枝分かれする峯タイプ:食用が多く美味

講義でもらった初心者用ブックレットより

毒キノコは Destroying Angel (破滅の天使 ) だとか、Funeral Bells (葬式の鐘) だとか、名前からしておどろおどろしい。
強力な毒をもつ種類もあるので、危ないキノコをいくつか頭に入れておくことも大切です。

一番猛毒と教わったキノコがこれ

同じキノコでも、食用とする国もあれば、毒キノコ分類している国もあり、微妙な違いがあるそうです。また、食用キノコでも、他国で毒の症例が報告された場合は分類が変わることがよくあるそう。初心者は、専門家にチェックをしてもらうのがまず良さそうです。

いざ、森の中へ

キノコ講座の基本知識をおさらいし、冊子を何度も見返して臨んだ2日目。

雨の予報だったので、レインギアと山靴で装備し、軍手とポケットナイフ、ブラシを準備します。毒キノコと食用キノコを一緒にしないため、小分け用のプラスチック容器もいくつか持っていきます。

きのこ狩りメンバーと森の中へ

雨が降り出しそうな、少し重ための曇り空。秋を感じる肌寒い天気のなか、木が生い茂る森の中へ足を踏み入れます。

森の中へ

森の中はしんと静かで、足元は落ち葉でふかふか。

ひとりだと迷子になりそうですが、今日はお友達ふたりと一緒なので安心です。

さっそくキノコを探して足元を見回してみますが、なかなか見つかりません。

歩道近くはすでに採られていそうなので、あえて道から外れ、人が歩いていなさそうなエリアを求めて、奥へ、奥へ。
すると、ぽつぽつとキノコが現れました。

困ったのは、毒キノコか食用なのか、全く判別ができないこと。

講義をうけたし、写真もたくさん見たはずなのに、あ、これだ!と識別できないのです。

毒キノコでも皆でお勉強するために採ってきてね、と言われていたこともあり、どちらか判別できないまま少量ずつ入れ物にいれていきます。

しばらく歩くと、特定の種類のキノコがよく見つかることに気づきます。
それらがどんな感じでどのように生えているのかもわかってきました。

キノコには、共生型、寄生型、分解処理型のものがある、と学んだことを思い出します。

目が慣れてきたのでしょうか、キノコが生えているスポットが遠くからでも見えるようになりました。そうなると、キノコはここにも、あそこにも。
まるで宝探しの面白さ。

いくつか種類が集まったので、専門家の先生に収穫物を見てもらいます。

自分なりに危なそうなキノコと安全そうなキノコを分けたのですが、
まぁ見事なはずれ具合。

ほとんどが毒キノコだった一方、毒だと思ってサンプルひとつしか採らなかったキノコが食用だと判明したり。せっかく大量に生えていたのに悔やまれます。

再び森に入り、お墨付きをもらった食用キノコを探すことに集中します。
食用だと確信できた後にキノコ探しをすると、見つけた嬉しさが倍増です。

参加者がそれぞれの成果を持ち寄ると、きのこの種類と量が圧巻でした。

たくさんの種類のキノコ。でも半分以上は毒キノコ

専門家が丁寧にひとつひとつ説明してくれます。

冷静に振り返ると、1日前に習ったキノコとほぼ同じもので、同じ説明です。
でも、自分たちが実際に歩いて目で見た後に話を聞くと、学びが何倍にもなって身に入ります。座学は体験によって初めて実になるのですね。

チューブタイプのきのこ傘
牙タイプは食用きのこ
一番人気のKantarell (あんずタケ)

おそるおそる食してみる

自分が収穫し、きのこチェックを合格して手元に残ったものは微々たるものでした。それでも、初めて自分で採ったキノコです。家で料理してみることにしました。

専門家のチェックを経たというのに、今まで食べたことがないキノコ、正直、本当に安全なのか不安がよぎります。

ブラシを使って汚れをとり、キノコを割いて中に虫が入っていないかをチェック。水につけて、よく拭いてから調理にかかります。

今回は、無難に簡単に、きのこのバター&ベーコン炒め。
おそるおそる食べてみると、予想以上に美味!キノコ好きならまず満足するに違いない風味と食感です。

王道のバター&ベーコン炒め

キノコ協会の活動を見てもわかるように、ノルウェーにキノコ好きは多く、多少のリスクは伴っても、キノコ狩りと料理を楽しむ文化があるようです。

経験がものをいうところ、森の中で静かに楽しむところ、毒キノコを判別する厳しい目、これは日本で言う「道」の領域(茶道とか合気道とか)に近いくらいに奥深いのでは、と思ってしまいます。

美味しいキノコを求めて、またいつか、ノルウェーの森へ。

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