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兄弟と私②〜”期推し”という文化〜

 前回(6月18日)からだいぶ時間が空いてしまいましたが、若手推しの熱はまだまだ冷めていませんので、前回に引き続きます。

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(先月のMC魂より。)

兄弟、笑イザップに出演

 兄弟のYouTubeチャンネル、”兄弟のラテ欄”を追うことで、兄弟二人の人となりはなんとなくつかめてくる。けれど当時、兄弟のネタはYoutubeなどの無料で見られる媒体には載っていなかった。初めて兄弟のネタをちゃんと観たのは吉本の有料配信チャンネル、FANYチャンネルの番組”笑イザップ”が放送された時である。

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 前の記事でも上げたように、10億円と兄弟はこの番組で高く評価されていた。小籔さんからの評価が特に高く、M-1でも結果を残すだろうとの発言もあった。まだ一年目でこれだけ持ち上げられるコンビというのも珍しい。

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(兄弟が一本目に披露した電車のネタ。)

 ここで主に披露された兄弟のネタは『電車から落ちた』、『バレートス』。あくまで初見のイメージだが、『電車から落ちた』の方がより大衆的で、知的でありながらもポップで開かれているような印象が強かった。『バレートス』は、同じボケを淡々と繰り返すタイプの実験的、挑戦的なネタで、一本目に比べると少し内輪ノリで伝わりづらい感じがある。でも後で「どんなネタだっけ?」と見返したくなるのはバレートスの方、という感じ。

兄弟とジャルジャルの類似点

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(兄弟のネタを”プレーンシュール”と喩える小籔さん。)

 兄弟のバレートスのネタが”シュール”と呼ばれているのを見て、真っ先に思い浮かんだのは若手時代のジャルジャルであった。ジャルジャルと兄弟はなんとなく似た雰囲気がある(賞レース総舐めのKOCチャンプと二年目の若手を同列で語るなとかいう批判は勘弁してください)。似たようなネタをしているとかいうことでは全く無く、二組とも純粋培養の世界観を持っている点においてだ。

(バレーつながりで思い出した傑作ネタ。)

 松ちゃんが2020KOC直後に「ジャルジャルは“ジャルジャル”というカテゴリだと思てんねん」と言っていたのを思い出す。高校時代に学校の保健室の先生を笑わせるためにジャルジャルは誕生した。二人にこうなりたいという”憧れの芸人”が居たというわけでもない。そんなジャルジャルと同じように、兄弟は”兄弟”というカテゴリにいる。他に類する何かに喩えようがない。とりあえず見てくれ、というしかない。

(2010年のKOCでやってたネタ。福徳さんが”おばはん”連呼するだけみたいな。)

 お笑いファンの中では”ジャルジャルで笑える”が、よりコアなお笑いファンであるとステータスになったりもするのだろうか。兄弟も同じような雰囲気がある。『これを理解できるか?』と客に問うような、挑戦的な感じ。

(大好きな ”岡田の口”、YouTubeに上げてくれたので是非!)

 兄弟が一年目の頃は、挨拶もろくにしないままネタに入り、ぼやっとしたまま終えてしまうということもあったようだ。そんな姿勢を好むか好まないかは人それぞれだが、よりコアなお笑いファンこそそういうコンビから目を離せなくなるのではないか、と想像する。客の方が理解しようと躍起になってしまう。

 この人たちを理解したい、嫌われたくないというようなカリスマ性はそうそう持てる訳じゃないけど、それを結成当初から持っているのが兄弟だ。こんなに自信に満ちた姿勢を持った若手はそうそういない。だからこそ原石とか言ってこんなに躍起になって推すのである。

センス系集団、東京NSC26期

 話は逸れるが、10億円と兄弟目当てで見た笑イザップで目立っていたのが、兄弟と同期の猫化粧というトリオだ。

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 猫化粧は、↑の画像一番右のお兄さん、ギャンペイちゃんを中心人物とした、いわゆるアートとしてお笑いをやっている人たちである。『芸人』と呼ぶのも躊躇われるくらい、既存の『芸人』らしくないネタを好む人々だ。劇場に呼ばれて出る時も、芸人らしい立ち振る舞いとか、平場でボケたりとかもあまりしない。

 アートとお笑いの狭間に敢えて立つような人たちは昔から居るのだろうが、そのような姿勢で芸人をしていて、テレビに出たり劇場に立ったりする人を私はあまり見たことがなかった。

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https://instagram.com/gyanpei.pink?igshid=YmMyMTA2M2Y=
(とにかくシビぃギャンペイさんのインスタアートを見てほしい。)

 猫化粧のすごい所は、自分達のアートとしてのお笑いを貫いて、且つ東京NSC26期の一番を決める大ライブの六位に入ったりと、きちんとネタで評価されているところだ。よく『シュールを盾にお笑いから逃げるな』みたいな文言を聞くけれど、ギャンペイさんはアートを盾にしていない感じがある。ちゃんと笑えて、ちゃんとアートなところがすごいし、これからもっとすごくなりそうな予感しかしない。

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 東京NSC26期は兄弟、猫化粧の他にも、シノブ、ボニータ、スポスポーツ、ことぶき、梅谷斎、エイケツ、ほのか、イザナミン、ユリア、つちのこ、コンドルキック、ダンディーボイス、元F極グラビア、こんねき(エアコンぶんぶんお姉さん)などがいる。主観ではあるが、兄弟紅葉さんのように音楽に長けていたり、ことぶき藤岡さんのように文学に精通していたり、みんな文化人っぽい雰囲気がある。その雰囲気を先頭に立って作っているのが猫化粧、という印象がある(あくまで素人の主観だけど)。

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(4月に赤坂チャンスシアター行われた26期ライブの様子。)

 26期は疫病の影響を直に受けてきた世代であるからか、バイト先も一緒にしてるからなのか、全体的に仲が良い。仲の良い期と言えば大阪NSC44期とか、東京NSC22期とかが浮かぶけど、そんな風に卒業した年の同じ芸人さんを全員ひっくるめて推すことを『期推し』というらしい。自分もその『期推し』とよばれる文化に身を染めつつある。

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 期推しといったらハロプロとか、アイドルの世界で言われることだったが、まさか吉本の芸人に対して期推しとか言う事になるとは思わなかった。けれど26期には何とも言えない一体感がある。音楽や文学に親しい知的な印象と、猫化粧や劇場メンバー入りした梅谷斎、独特のリズムネタが面白いアダンなど、お笑いという概念に縛られない新しい風を吹かせているメンバーばかりだ。

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 (2回目の26劇場ライブで中心になったことぶき藤岡さん。紅葉さん家のyoutubeでは藤岡さんが中心人物になっている。)

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 (最近兄弟と一緒に神保町よしもと漫才劇場のメンバー入りした梅ちゃんこと梅谷斎さん。独特の世界観を堪能してほしい。)

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 (エアコンぶんぶんお姉さんatタコハイ。ワードセンスが半端ないセンス系芸人。大喜利が面白い)

 今回はここまでにします。また機会があったら更新します。

(2022.10.22  nao 拝)







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