片腕の警察官とLGBT
先日、免許の更新手続きのなんやらで、警察署に行った。
窓口に行くと、大柄のおにいさんが書類を持ってきてくれた。
「ここに名前とか生年月日とか書いてね〜」
「わかりました〜」
書類を書いている最中も、おにいさんは何かと話しかけてきた。
「地元〇〇なんだね〜俺も何年か住んでたことあるんだよ」
「そうなんですね!」
警察署ってだけでちょっとビビってたけど、
何回か会話のやり取りをして、とても気さくなおにいさんだったので良かったなぁと思っていた。
そうやって書類を書き終わって、提出しようと思って顔を上げた。
その時に気づいた。
なんと、おにいさんの左肩から下、左腕がなかった。
その警察のおにいさんは片腕だった。
私は、片腕のない人に会うのはそれが初めてだった。
最初はびっくりしたけど、そこから色々と考えて焦ってしまった。
まず、気づいた以上、どう反応したらいいのかがわからなかった。
ジロジロ見るのもおかしい。けどそう意識してしまうと逆にどこを見たらいいのかわからない。
気づかなかったふりをしてそのまま話続ければいいのか
いやお前完全に顔あげたよね?気づかないわけないやん、って、気づいてるくせに気づいてないふりしてる、と思われるのも嫌だ。
気づかないふりをしているのを見て、私が彼に嫌悪感を持ったとか、引いてるとか、嫌がってるなんていう風に捉えて欲しくもない。
どうしたらいいかわからずに結局私はいそいそと手続きを終えて帰ってしまった。
きっとおにいさんには、私が平然を装っていることもバレていたと思う。
もしかしたら、生まれた時からそうだったのかもしれない。
でも警察官だったし、刑事時代に銃で打たれたとか?
もしかしたら彼は高校球技で、事故で怪我をして夢を諦めて、腕がないことにとてもトラウマを抱えているかもしれない。
そんなことを考えてしまって、結局彼の腕について触れることはしなかった。
彼の方だって、もう2度と会わないであろう私に、いちいち説明するのもめんどくさいだろう。
仮に、職場の人とか、これから親密にならなきゃいけない人に対しては否が応でも話さなきゃいけないだろうし、きっともう飽きるほど、何百回と同じ説明をしてきているだろう。
あれが、手続きの場合だけだったからまだ良かった。
例えばそれが、将来就職した時の取引相手だったとしよう。
相手とはこれから1〜2時間話をして、親密にならなければならない。
そんな時だったらどうしていただろうか。
私は、この出来事と、LGBTとの出会いは似ているような気がした。
だから、このブログを書くことにした。
私がここまで書いた、今日の出来事。
これを、「トランスジェンダーの方との初めての出会い」に置き換えて読んでみると、とてもそれがよくわかる。
まず、どう反応したらいいのか、
そもそも触れていいのかダメなのかもわからない。
そして、触れたとしても、何を聞いていいのかわからない。
もしかしたら相手は触れて欲しくないのかもしれない。
でも、気づいてるくせに触れてこないやつ、=拒否しているとか、嫌悪感、とも思われたくない。
私が、いろいろな場で話をさせていただくと、必ず、
「でも、実際カミングアウトされたらどうしたらいいかわからない」
という声をいただく。
私は、今までたくさんの当事者に出会ってきて、
「初めてLGBT当事者の方に会う」という時の感覚を忘れてしまっていた。
でも今日の体験を通して、あぁ、こういうことなのかもしれないな。と。
頭では理解しているつもり。
嫌悪も、拒否の気持ちもない。
ただ、「知らない」から、どうしたらいいのか「わからない」
それで自然と、距離を取ってしまったり、
ギクシャクしてしまう。
そして、ギクシャクしている私たちを見て、
当事者の方達は、
「あぁ、言わなきゃ良かったな」とか
「この人は受け入れてくれなかった」
そしてそういう経験が積み重なって
「知られたくない」
「カミングアウトできない」
というようになってしまうのではないかと思った。
もちろん、想像になってしまうのだが。
いまだに私は、この答えが見つからない。
私では見つけられないのかもしれない。
あの時私はどうしたら良かったのか。
そのためにはやはり、
「どうしてほしいのか」「どうしてほしくないのか」
という声をもっと聞かなければならないし、
その声を多くの人に伝えたいとも思う。
何事も、知ることの大切さを痛感する。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?