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離体体験と共感力

みなさん、こんにちは。カナダの心理士のナオトです。異常に暑かった夏も、9月の半ばをむかえてようやく涼しくなってきました。
 
今回は、最近バージニア大学から発表された妙な論文、離体体験と共感力についての研究を紹介してみたいと思います。
 
離体体験とは、自分の意識が自分の体から抜け出てるような感覚を経験することです。臨死体験とか幽体離脱みたいな感じですね。例えば、事故にあったときに、大怪我をしている自分の体を上から眺めているような感覚だとか、深い瞑想に入ったときに、自分と周りの世界との境目が薄れていき、宇宙との一体感が生まれるような感覚を経験することです。
 
これだけ聞くと、なかなか怪しげな話に聞こえるかもしれませんが、多かれ少なかれこのような経験をしたことがある人は、全人口の15%ほどだそうです。思ったよりも多いような気がしますが、どうでしょうか?ちなみに私は経験済みです。
 
で、このバージニア大学の研究によると、この離体体験をした人は、その経験がきっかけで共感力が高まり、しかもその効果が持続しているということです。
 
共感力は、主に遺伝と幼児期の経験で決定されるとされ、大人になってから伸ばすにはかなりの努力が必要なものだとされてます。なのに、一見何の関連性もない離体体験により、一気に共感力が高められ、しかもその高い共感力が持続されると言うのは、なかなか訳の分からない話です。
 
とはいえ、臨死体験や深い瞑想を通して、人生観が変わったという人は少なくありません。実際に、シロシビン(特定のキノコに含まれる幻覚作用がある成分)を使い、意図的に離体体験を誘発することで、重度のうつ病などを治療する研究も進められています。
 
バージニア大学の研究者は、離体体験中に、"自分"を定義づける自意識の境界線が曖昧になり、他人や世界との一体感を直に体験することにより、他人の気持ちを理解する共感力が身につくのでは、という説明をしています。
 
仕事でも学校でも他人と共存していかなければ生きていけないこの社会では、共感力は必須の能力です。だからといって、なかなか簡単に学んで伸ばせる能力でもありません。でも今のところは、この離体体験を使って共感力を伸ばす心理療法は存在しません。でも、将来的に催眠療法、薬物療法、はたまたVRなどを使って、意図的に離体体験を作り出すことにより、共感力を高める治療法ができたら面白いですよね。
 
参照論文
Marina W., David J. A., Philip J. C., Bruce G. (2024). Exploring the transformative potential of out-of-body experiences: A pathway to enhanced empathy. Neuroscience & Biobehavioral Reviews; 163: 105764 DOI: 10.1016/j.neubiorev.2024.105764

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