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過ぎた季節の写真を見返すこと


どちらかというと都会的な人間ではあるはずなのに、旅に出ると求めるのは山とか湖、それに海、川、森。自分よりも大きくて、捉えようがなくて、明らかに自分とは違う時間の流れを感じられる場所。

日本で生まれ、仏教と神道から成り立った国で育ってきたから、自然とアミニズム的な価値観が根付いていて、そういう場所に身を置かないとどこかバランスがとれないんだろうか。

学生時代、東洋と西洋の宗教観に影響される芸術表現の勉強をしていて、庭園や絵画、映画についてよく比較研究していたけれど、つくづく自分の好みは東洋人的だなと感じてたのを思い出す。

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この間現像したフィルムに映っていた景色。
去年の冬訪れた、長野県の奥地にあった湖のほとりで撮ったものだった。

東京から3時間以上もかかるその場所は、キュレーションメディアにあふれる「○○映え間違いなし」といった記事にまとめられることもなく、だれかにオススメされるわけでもなく、グーグルマップをぼーっと眺めていた結果辿り着いた場所だった。偶然の出会い。正直名前も覚えてない。

比較的標高の高い場所にあったその湖は、うねる山道を何十分も登ったところにあった。

コンパクトカーの弱弱しいエンジンをふかして山を登り切ると、急に目の前が開けて、大きな湖が現れた。どういう理由かわからないか、その一帯だけ背の低い植物ばかりで、木も真っ白ま幹が美しい白樺ばかりで、とても日本とは思えない景色だった。

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湖の反対側の山奥まで見渡せるほどの解放感。

天気にも恵まれ、真冬だったのにほんのり暖かかった。

写真を見ても思い出せる、あの空気。

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疎らに立った木は、お互いに干渉することなく、太陽の陽を遮ることなく、生き生きとしていた。日本の森から感じられる鬱蒼とした湿っぽい雰囲気はここにはまったくなかった。

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少し環境が変わるだけで、ここまで森の姿が変わることに驚いたのを今でも覚えてる。

誰にも教えたくない場所が、一つ増えた冬だった。


撮影
RICOH GR1s / Kodak ColorPlus200

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