5.大人の階段
ゴールデンウィーク前の話になるが、恩師にあった。中1の1年間担任をしてくれた、私の人生を変えてくれた、恩人。この先ももっと教えてもらえると思っていたのに、異動の知らせを聞いて号泣したのが懐かしい。小中高とたくさんの先生に会ってきたけれど、この先生より生徒の向き合ってくれる先生に会ったことがない。高校合格の報告も、異動先の中学まで出向いたほどだ。
その先生は、一言でいえばとても熱い先生だった。行事にも、部活にも、生徒にも。体育祭では誰よりも楽しんで、競技に勝つための作戦会議の時間をたくさん取ってくれたりアドバイスをくれたり。合唱コンクールの時にはあんまりやる気のない男子たちに喝を入れてくれてクラスの士気をうまく上げて、アドバイスをたくさんしてくれて。
それでいて、細かい気づきができるタイプの先生だった。私は元々かなりHSPぎみで些細なことにも反応しやすく、友人関係で苦労することも多かった。うまくストレスを発散できなくて抱え込んでしまうことも多かった。そんな時に気づいて、話を聞いてくれたり、状況改善のフォローをしてくれたり。クラスの細かい雰囲気の変化に気づいて調整するのが本当に上手だった。
高3の5月頃、双極性障害がひどくて、あらゆることが辛くてもう全部全部どうでもよくなって、全てを投げ出してしまおうとした私。最後にお礼を言おうと思って先生に挨拶に行った。その時、何かを察して私の話をずっと聞いてくれた。引き留めてくれた。正直、何を言われたのか、細かいことはあんまり覚えていない。それでもその先生の熱量と想いに、踏みとどまった自分がいたことだけは鮮明に覚えている。
今回は大学の合格の報告に行った。不本意ではあったけれど、結果はきちんと伝えておきたくて。高校生活の話をたくさんして、先生の近況を聞かせてもらって。中3のときにお世話になった他の先生もなぜか異動した後、一緒の職場だったようでその先生たち2人と合流して、4人でとても楽しく話をさせていただいた。
ひと通り話した後、また恩師と2人きりで話した。本当はこの大学に行くことは不本意なこと、うまくやっていけてないことも話した。先生は置かれたそこで咲くしかない、と言ってくれたけれど、正直このままでいいのだろうか、とは思っている。ここでは、私の夢は絶対に叶わないから。
そんな先生と帰り際、連絡先を交換した。いつでも話聞くから連絡しておいで、ごはんにでも行こうよ、と。一歩、大人になれた気分。もう私を一人の大人として扱ってくれたんだ、とすごく嬉しかった。
話している間に退勤していく他の先生にも、自慢の教え子なんですって紹介してくれた。恩師が次の中学へ異動するまであと2年。次の異動先へはもう訪ねるわけにはいかないだろう。あと何回私はここへ来るのかな、いや、来てしまうのかな。次は夏休みに会う話をしているからそこまでは自分のやるべきことをやる。頑張る。頑張ろうと思えた。
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