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羅小黒戦記を見た声優経験有の役者兼ライターが考える「俳優の声優起用」今昔

羅小黒戦記の吹替版を観てきました。すっごいよかったです……。

シャオヘイかわいい~師匠かわいい~~アクションすごい~~(原画マンと動画マンの連携がすごい……)という話をしようと思っていたら、ツイッターのタイムラインで見かけた、「アニメ(吹き替え)声優に俳優を使うこと」問題。

長いこと色々言われていますが、元子役で、ジブリアニメで声優やらせてもらって、昨年久しぶりに吹き替え声優をやったオタクのライターとしては、ふむ、と割と考えておりました。(すみませんトップ画像は自分が演じた役です。cスタジオジブリ)

このようになんとな~く呟いたことが意外とゴリゴリと広まってしまったので、改めてnoteにまとめ直すことにしてみます。前提としてアニメの専門家ではないですし、現在地はただのオタクです。cv三瓶由布子ばかり追いかける。

続く、一連のツイートがこちら


そもそも「声優」は舞台役者のいち部分であった

私は飯塚雅弓さん(ポケモン・カスミ役など)などがいらした劇団若草にいました。当時、子どもたちは声優も並行してやる環境が身近。前述の三瓶由布子ちゃまが「だぁ!だぁ!だぁ!」の主役に決まったり、小清水亜美がナージャをやったり、久野美咲がまだほんのチビスケだった時代のお話です。20年ほど前、特に吹き替えやラジオドラマの現場では「昴」「円」「俳優座」のなどの役者さんなどとご一緒する機会が多かったように記憶しています。多分「ひまわり」さん「東俳」さんもそうだったんじゃないかな?

もともとは舞台役者さんが吹き替えの仕事をやってらしたんですよね~だからバックボーンが舞台という声優さんは今も多い。速水奨さんが青年座、田中真弓さんがテアトル・エコーからのスタートだそうですし……この辺りは藤津亮太さんの著書「わたしの声優道」に詳しいです(確認しながら今打っていました)。

小山力也さんは俳優座ですし、上に書いたように角野卓造さんも文学座ご所属でずっと「名探偵モンク」の吹き替えをされていましたし……。特に洋画の吹き替え=舞台役者がやる、という構図はもともと普通というか、「図式」だったのだろうと思います。

昔はそこまでアニメの本数もなかったでしょうし、音声マイクも今ほどの高性能ではなかった。当然デジタルではないですしね。

時代が変わるにつれ、アニメの本数は次第に増えていきます。同時に、「声優」という職業が独立したものになっていく。歌舞伎で言う、通し狂言が人気の場面だけ枝分かれして上演されるようなもんですね。(逆にわかりにくい)(歌舞伎オタク)

声優は職人仕事ですが、じゃあなんで昔は兼任が普通だったのか、という疑問が湧きます。

「サイズ感」今昔~草創期と現代

ちょっと前は帝国劇場(通称帝劇、キャパ1897席)で谷崎潤一郎の「細雪」が上演されていました。近くの芸術座(現シアタークリエ、750席)から自分の劇団のアトリエ公演、昔の舞台役者さんは芝居の「サイズ感」がかなり幅広かったのだと思います。

サイズ感というのは芝居のスケールって言えば良いのかな。学校の視聴覚室と帝劇では、同じ「水を飲む」芝居でも大きさを動かさないと当然お客さんに見えません。

ここからは推測ですが、「舞台役者の最小フォーカスサイズ」と、「吹き替え前の作品の熱量&当時のマイクスペック」がかなりニアイコールだったのではないでしょうか。

だから芝居のサイズ感調整にすぐれた舞台役者さんが、吹き替え前の作品が持つ熱量に合わせて芝居することで、「声優」の仕事ができていた。

テレビが広まることで、舞台を経験したことのない役者が増えていき、アニメの本数が増え、マイクの性能が向上し、と時代の変化が徐々に「声優」を独立化させていった、と考えております。

だから役者と声優は「本質の芝居は同じ、違いはサイズ感」ではないのかな。

声優さんのお仕事に全く触れずに育つ人が少なくなった時代

だから、違和感が生まれるとしたら、サイズ感の目盛りが狭いor大雑把なのにマイクの性能だけはスーパーハイスペックのアンバランスさから来てしまうのでは?と思います。

これは実体験です。『幸福路のチー』初アフレコのリハ(一人)のときに変な汗ドバっと出た……。声優さんはスゴイです。ほんとに。サイズ感の調整が自由自在。上記に書いたように、角野さんもすごいサイズ感を持っていて、コントロールされていたんだろうな~って間近で見てたお芝居を思い返すと感じます。

声優さんのお仕事でも、アニメと吹き替えの違い、厳密にはあるでしょう。そこは本職の方にお話聞きたいくらいで私にはわかりませんが……。昨今はアニメ映画の世界的な広まりを受けて「海外アニメの吹き替え版」も存在しますからね~。『羅小黒戦記』がまさにそう。『チー』も台湾アニメの吹き替え版です。

でも最近、声優やってみてうまい俳優さんも多いでしょう、これ、30~10代は「アニメ育ち」が普通になった世代なことも影響しているのだと思います。『鬼滅の刃』大ブームの例を出すまでもなく、アニメ&声優さんに全く触れずに育つ、というのは今日本では珍しいんじゃないかしらん。私たちアラサー女子から遡ると「セーラームーン」が、「レイアース」が、「どれみ」が、そして「プリキュア」「アイカツ!」などなどがありましたもの。


是か非かではなく、こういう背景があるんじゃないかね、と、昭和の役者さんを見てきた元子役・声優経験ありの役者兼ライターとしてまとめてみました。「声優さん今昔」、聞いてみたいなあ。やらせてくださる媒体さん、探しています。笑


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