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観てきた!神田日勝 大地への筆触 at 東京ステーションギャラリー

東京での会期最終日、なんとか時間&チケットがとれたので出かけてきました。
北海道の自然の中で、暮らしと農業、絵と自分自身に向き合い続けた、短くも濃い人生。想像しながら作品を眺めていたら、胸に迫るものがありました・・・観に行けて本当に良かったです。

場所:東京ステーションギャラリー(東京・丸の内)
会期:2020年6月2日(火)~6月28日(日)
時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1,100円 高校・大学生 900円 中学生以下無料

今後の巡回予定:
神田日勝記念美術館(鹿追町)2020年7月11日(土)~9月6日(日)
北海道立近代美術館(札幌市)2020年9月19日(土)~11月8日(日)


◎観に行こうと思ったきっかけ

NHKの朝ドラ「なつぞら」のキャラクター、天陽くんのモデルになった方、というので、お名前は知っていました。
ただ当初は行く予定ではなかったのですが、フライヤーの馬の絵を目にすればするほど刷り込み効果のように、だんだんと実物を観てみたくなっていました。

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◎どんな展覧会?

北海道の大地で、農業に従事しながら絵を描き続けた孤高の画家、神田日勝(かんだ にっしょう)。2020年は、神田日勝の没後50年にあたります。これを記念して、東京では42年ぶりの個展となる大規模な回顧展を開催します。(中略)
神田日勝の作品には、生きることと、描くことが、ひとつであった画家の、喜びや悲しみ、誇りと苦悩がにじみ出ています。
本展は、代表作を網羅して、日勝芸術の全貌を提示しようとするものです。大きな変貌を繰り返した日勝の芸術的展開をつぶさに追うことができる展覧会となることでしょう。(公式サイトより)

今回は日勝さんが暮らした、北海道・鹿追町にある、「神田日勝記念美術館」がまるっと出張してきたような、大変贅沢な出品リストになっているのでは、と想像しました。

15年にも満たない画家人生の中、試行錯誤しさまざまなチャレンジをし続けて描き上げた作品が、ほぼ年代順に展示室内にずらっと並んでいました。
合わせて日勝さんが影響を受けた作家の作品、使っていた画材やスケッチブックなども展示されています。

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館内は割と多くの作品に解説パネルがついていました。
素敵だなぁ、と思ったのが、出品リストの横に置かれていたジュニアガイド。最終日の夕方だったので、大人ですが拝借してきました。
ちなみに、中学生以下無料!でしたが、時間が時間だったからか、会場で子どもとは、正直あんまり遭遇しなかったです・・・。

また、驚いたのが、作品のサイズ。こんなに大きいとは!
基本的にどれも、縦1メートル以上、横も1.5メートルとか2メートルとか?
かなり大きなベニヤ板に、ペインティングナイフを使って、油絵具で描かれています。想像していたよりも大きなサイズの絵が多かったです。
これは1点を仕上げるのにも、なかなか時間がかかったことでしょう。

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◎そもそも神田日勝さんってどんな人?

1937(昭和12)年、東京・練馬で生まれた日勝さんですが、1945年8月、一家で戦火を逃れて、北海道鹿追町にやってきます。
開拓団として希望を持っての移住でしたが、実際は、前の移住者が挫折したほどの農業には全く向かない非常に過酷な土地、自然環境。
敗戦直後で国からの支援も望めず、もう本当に、想像を絶するほどの大変な苦労をしながら、なんとか暮らしていったのだと思います・・・。

絵との出会いは、なんと後に東京藝術大学に進学する、兄・一明さんがきっかけでした。自身は特に絵の専門教育は受けず、1953年に中学を卒業後、農業をしながら、独学で油彩画を描き続けたのです。
お兄さんとは、日勝さんが亡くなるまでずっと仲が良かったそうなので、きっと技術的なことだけでなく、作家や美術に関する情報など、いろいろなことを教えてもらっていたのかな、と想像しました。

日勝さんの画業初期、1950年代の後半に描かれた作品たちは、暗い色調で、人物の表情も題材もはっきり言って冴えない・・・だいぶ重苦しい印象を受けました。
この頃、日本は高度経済成長期の真っ只中。1964年の東京オリンピックに向け、世の中が変わりつつありましたが、日勝さんの暮らしを明るくするものではなかったのでしょう・・・。

1960年代にかけ、日勝さんは、北海道内の展覧会に出品し続けて、徐々に作品が評価されるようになっていきます。
1962年(昭和37年)25歳のときに結婚。2人のお子さんにも恵まれました。

この辺りから急に、原色の赤や青、黄色、ピンクなど、色使いが鮮やかな作品が描かれていきます。
また、農耕に欠かすことのできない、家族のような存在でもある、牛や馬を描いた作品群は、描き方にも緻密な描写にも、ますます熱がこもっていっているように見えました。

特にわたしが感動したのは、亡くなってしまった馬を描いた作品≪死馬≫。
優しい目元や丁寧に描かれた毛並みは、見れば見るほど、日勝さんの馬への愛情や別れの悲しみが伝わってきて、涙が出そうになりました。

1968~69年頃には、絵の具を原色のまま、これでもか!と塗り重ねて巨大な人物の抽象画を描いたり、印象派を思い出すような風景画を描いたり、とさまざまな画風の作品を手がけていきます。
絵画展への出品も継続していたものの、この頃はなかなか入賞できず、試行錯誤していたそう。

今回の回顧展の開催にあたり、改めて遺されたデッサン帳や蔵書などの調査が行われ、日勝さんは最新の美術界の動向をしっかりリサーチしつつ、自身の創作活動に活かしていた、ということが分かったんだそうですが、これ、毎日農業をしながら続けていたのか、と思うと、本当に驚きました・・・。本当はもっと思いっきり、絵画制作だけに没頭したかったんじゃないでしょうか・・・相当、無理していたのでは。そりゃ体調も崩しますよね・・・。

1970年(昭和45年)6月下旬、風邪をこじらせて、そのままずるずると体調が悪化。8月に、32歳の若さで亡くなってしまうのでした。

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◎絶筆・未完の≪馬≫を目の前にして・・・

展示室の最後の最後に、フライヤーにもなっていた、あの馬の絵がありました。こちらもしっかりと大きいサイズ。
向かって左から、しっかり描き込まれた顔から前足、下地だけの胴、鉛筆の輪郭だけの後ろ足からお尻のあたり。

顔の方へと近寄ってじっと観察すると、青や赤の混じった毛並みの豊かさと、本当に優しい輝きをしている目に吸い寄せられてしまいました。

日勝さん、いつも左から描いてたのでしょうか・・・?

なんとなくわたしは、死期が近く、きっと完成できないと自分でわかっていて、せめて顔だけ、前足だけ・・・と思って、あえて先に仕上げていったんじゃないかな、なんて思いました。
本当のところはどうだったのか、は、謎です・・・

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◎素敵!ステーションギャラリーの音声ガイド

東京ステーションギャラリーでは、音声ガイドをいつも公式サイトに掲載していて、展覧会のチケットがなくても、誰でも聴く事ができるようになっています!

なので、会場内ではスマホを手に、自分のイヤホンで音楽を聴くように、音声ガイドを聴きながら鑑賞できるのです。
ガイドがある作品の横には、QRコードと番号が書かれていて、都度QRコードを読み取ると、該当する番号のページが開く仕組みです。ページにはガイドの文章が文字で掲載されてもいます。

今回、朝ドラが縁で、俳優の吉沢亮さんがナレーションしているところもありましたが、音声読み上げソフトによるナレーションも半分くらいありました。コストをかけず、サイト内で誰でも利用できるようになっているこの仕組み、とても良いなぁと思います。

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◎日時指定予約のチケットはLoppiで

今回のチケットは、全て1時間毎に入館時間が指定される、事前予約制が導入されていました。
ローソンチケットのページで、カレンダーから日付を選び、1時間毎の枠で空いてるところを選んで購入します。
実際の支払いはローソンの店頭で、ロッピー端末を操作の上、レジでお会計→発券 の流れ。なんと手数料はかかりませんでした!!!

これはライブ等のチケット購入と同様のフローですね。
※ローソンチケットは事前に会員登録が必要です。

また、ローソンチケットのページを利用せずに、直接ローソンに行って、ロッピーで日時を指定して購入することも可能です。

この仕組み、そもそも最初から日時指定予約制のジブリ美術館や、藤子不二雄ミュージアムと同じフロー。まぁこれなら割とどなたでも、ネット環境がなくても予約できるし、あまり戸惑わずに買えるかなぁ・・・と思います。

他の美術館・博物館も続々と、事前の日時指定予約制が導入されつつありますが、できるだけ誰でもわかりやすい仕組みで行ってほしいです。

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◎まとめ

行って良かった。この一言に尽きる回顧展でした。
きっと今回ここで観ていなかったら、次いつ観る機会が巡ってきたかなぁ、と思います。

また、個人的に動物全般好きなのですが、特に馬は、なぜだかとても惹かれます。
今回、日勝さんが描いた馬の絵を観て、いろいろと個人的な馬の思い出がよみがえりました。
子どもの頃、よくキャンプに出かける家庭だったのですが、確か富士山の麓のキャンプ場で、敷地内に馬がいて、滞在中、時間を見つけてはその馬に会いに行ってた、とか、
数年前に展覧会で観た野生の馬の写真が本当に美しかった、とか、伊勢神宮で遭遇した神馬がとても可愛かった、とか、
清里で余生をゆったり過ごしているサラブレッドたちが素敵だった、とかとか・・・

今回も会場で、ポストカードとチケットホルダーを買いました。
馬って、なんだか不思議な魅力がありますよね。どこか人間と心が通じ合うような・・・。


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◎次回展 バウハウスのポスター&フライヤーの雰囲気が!!!

あえて日に焼けたような紙の雰囲気、昭和っぽいフォントのデザインにぐっと来ました!凝ってる!!!そしてアウディロゴが効いてる・・・!
これはぜひ、実物のフライヤーをお手にとっていただきたい!!!

左側の文字がびっしり書かれた部分が折られて、A4サイズになるんですよー!しかもデザイン違いも展開!

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フライヤーを読んだ限りでは、まさにバウハウスの授業を体感できるかのような企画っぽいので、観に行くのが楽しみです。

それにしても、やっぱりステーションギャラリーの展覧会は、良企画が多い!これからも楽しみにしています♪


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