CKD患者さんへの腎排泄薬剤減量提案、CKD憎悪リスク因子回避についてトレーシングレポートで情報提供した症例

この患者さんとかかわって5年と10ヶ月・・・
もとは、おとなりのクリニックに通院されていた。
当初から、腎機能低下の進行が気になっていた患者さん。
原疾患は糖尿・高血圧。
まずは、家庭血圧の測定と定期的な採血が必要であると理解してもらうことから・・・
なのだけど~ これがまた簡単ではない!
患者さんに「朝起きて測ってね」って言ってもめんどくさいから測ってなんてくれないし、採血だって必要ならお医者さんがしてくれるものだと思ってるから、ご本人がご本人の病気に対し全く興味を持とうともしてくれない状況。これでは良くなるものもその機会を失ってしまう。
血糖コントロールはHbA1c6.5%前後で良好なのだけど・・・
糖尿の治療薬はメトホルミンMT250mg。
eGFR40ml/min前後でうろうろしてたから、とにかく水分摂取を促して、下痢したらスキップしてもらって腎血流低下を防ぐように指導していた。
腎血流が維持できてたら、メトホルミンの副作用である乳酸アシドーシスのリスク回避はできる。
だったのだけど・・・ 
ある時からだんだんeGFRが低下し30ml/minに近づき、とうとう30ml/min未満に・・・ そうです!メトホルミンは禁忌!
なのでおとなりに禁忌だから中止の話まではできるのだけど~処方提案はできない。それを受け入れてくれるような医師ではないからだ。処方提案なんてしたら、その薬をまず使ってはくれない。腎専門か糖尿専門への転院しかない・・・
だけど、ご本人だけにお話ししても、ご本人はおとなりが嫌なわけではないから、転院の話は難しい・・・ 病気の理解もあまり無いし。いや、私の説明が上手くできていなかったから・・・ ざっくりと腎臓が悪くなってるという認識だけ(となりからはeGFR30ml/min未満になっても何の説明もない)
ただこの頃に、娘さんが付き添うようになって、その娘さんが医療関係者という事もあって、患者さんの病状の理解がおありだったから、今後の事が心配だと思っていらした。
このチャンスを逃すわけにはいかない!思い切って、娘さんに専門医への転院をもちかけた。実は、娘さんもこのまま隣りへの通院は不安だったがどこに転院すべきか誰に相談すべきか、を悩んでいらした。
結局、腎専門クリニックではなく糖尿専門クリニックへの転院に決めた。
決まったら、速攻で転院先にトレーシングレポートで情報提供し、すぐに転院先へ受診して頂くことに。そして今現在に至るのだけど~
その情報提供の際、腎排泄薬剤を中止し胆汁排泄のトラゼンタへの変更を提案し、血圧も過降圧であったので減薬と中止を提案。転院先の医師も同じお考えで、無事変更と減量、中止に至った。 
ほんとは転院せずともこういった流れができないといけない・・・
だけど、現実はそう簡単ではない。いくら薬剤師が、患者さんの事を考えて、減薬や中止の提案をしても、主治医が動いてくれなければ何も変わらない。ちゃんと根拠があって、あえて変更しない事もあるのは理解してるけど、どう考えてもこのままはでは病状悪化しかありえない場合・・・
虚しくて・・・
結果として、薬剤師は何もやってないのと同じに見えてしまう・・・
転院して頂くのは、患者さんにとっては大きなストレスだと思う。
だけど、クリニカルイナーシャってわかってるのに何もせずにいられない。
こんな時、ご家族の介入はほんとに助かる。ご家族には、薬剤師としての視点を説明する。
あっ!またまた前置きが長くなりました~ 
患者さんの背景を理解して頂いたほうが、よりリアルに感じて頂けるかな~なんて思って。
でもって・・・ この時期、CKD進行だけではなく認知機能の低下も認め、とある脳神経外科に受診。中等度認知症と診断され、イセロンパッチとメマリーが処方となり現在も継続中。
ここからが、今回の本題!
本題までがながーーーーーーーーーーくてごめんささい。
血圧は毎朝、起床時に測定。現在の降圧薬はオルメサルタンOD10mgのみ。
(転院前はオルメサルタンOD20mg、ニフェジピンCR20mg)
週2回のデイサービスを利用するようになってから、表情が明るくなり食欲も出てきて、体重も少しずつ増えてきていた。短期間での体重増加ではないから、腎不全や心不全による体液貯留によるものではないだろうと考える。
体重増加しているにもかかわらず、起床時収縮期血圧が100mmHg未満になることが1ヶ月で数回あった様子。そういった時は、なんかぼーっとしてたとの事。血圧が低下した時は、ちょっと鼻水出たり、風邪っぽい症状だったらしい。水分摂取は以前から少なめ。なかなか積極的には飲んでくれない患者さん。
収縮期血圧が100mmHg未満だと、腎血流が低下し腎排泄薬の血中濃度が上昇し、副作用出現リスクが高くなる。ぼーっとしてたのは、風邪気味だったからなのか、血圧低下によるのか、腎排泄薬であるメマリーの血中濃度が上昇したための副作用なのか・・・ 色々考えられる。
んでもって、メマリーについて考えてみると~
現在、脳神経外科からのメマリー投与量は15mg。
添付文書にはeGFR30ml/min未満は維持投与量10mgと記載されている。
15mgは多い・・・ 
以前に投与量についてはトレーシングレポートで情報提供していた。
処方元は、専門医師なので、認知機能が進行しているために必要な投与量として判断されたわけだから、あえて疑義にはしなかった。問題は、メマリーの排泄遅延により副作用出現リスクが高くなるという事なのだから、その副作用が出現した際に10mgへの減量を検討して頂く旨情報提供で良いと考えた。
その後、とくにメマリーの副作用として考えられるめまいやふらつき、傾眠は無いので、そのまま15mg継続中。
なのだけど・・・
血圧低下での腎血流低下があると、メマリーの排泄遅延リスクが高くなる・・・ って事は、まずは血圧低下を回避しなければならない。
なので~
降圧薬の処方元である糖尿専門医師には、血圧低下回避のための対応について、メマリー処方元である脳神経外科へは、今後さらにeGFR低下の際は減量を検討して頂きたいので、トレーシングレポートで情報提供する事にしたのです~

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