腎排泄薬剤による副作用疑いで救急搬送となり処方元にトレーシングレポートで報告した症例

今回のテーマをどうするのか色々と悩みまして・・・
腎排泄薬剤がらみが多かったのだけど・・・ その中でも~
危険度からするとやはりこの症例かなぁと思ってこのテーマに致しました。
このような事が起きないように・・・起こさないように・・・
本当に副作用なのか断言はできないが、可能性は否定できないし、薬剤の投与量からすると、副作用出現リスクが高い事はわかっていた。
なので、以前からその旨処方元にしつこいくらい(きっとうざがられていたと想像する)報告はしていたし、ご家族にも減量すべきである事は伝えており理解して下さっていた。
ご家族が医療関係者なので、色々と理解を示してくださっていた。
処方元が専門医のケースは、ほんとに単純に事が進むわけではない。
あっ・・・これは個人的見解ですが・・・
治療を優先されるケースは多いと感じている。それは当然の事。
だからこそ、われわれ薬剤師の存在意義があると思っている。
処方元への報告を重ねると、ある時返信がなんと郵送で!
これには感激した!
今まで減量どころか増量を検討されてて、何としてでもそれを阻止したくて何回もトライして、それが報われた瞬間だったのだから・・・
その結果、増量はなくなり現時点での投与量で経過観察するが、今後減量を検討するという内容だった。
って・・・
いったい何の薬やねんって思いますよね。またまた前置き長いねん。
その薬の正体は~
メマンチンです!
そうです!処方元は脳神経外科です!
しかも・・・関西で脳神経外科といえばすぐに出てくるあの有名なT病院出身のドクターが処方されていたのです。
認知症治療以外の治療は別の内科で・・・
もとは~ おとなりでしたから・・・
ご家族にお会いした時にご相談して今の内科(糖尿専門)に転院して頂いた。
転院先へトレーシングレポートにて原疾患、過去の採血データ、処方提案をさせて頂いて、腎機能はなんとか維持状態。
収縮期血圧110mmHg未満だと腎血流低下することでさらに腎機能低下をまねくリスクがある(CKDガイドライン2018)ので、収縮期血圧110mmHg未満なら降圧剤をスキップするようお伝えしており、一包化の患者さんなのだが、降圧剤だけは別包(分包紙には110未満スキップと記している)
糸球体内圧が下がりすぎないようにする配慮が重要。
でないと、腎排泄薬剤であるメマンチンの副作用リスクが高くなる。
この患者さんのeGFR30ml/min未満なので、
メマンチン維持投与量は10mg/日だが、15mg/日投与で継続。
イクセロンパッチ18mgと併用。
15mg/日投与は1年以上継続されているのだが、ふらつきはあるものの、腰椎症もある患者さんのため、筋力低下による可能性もあって・・・
専門医の判断としては、メマンチンの副作用としては心配ないとの事だった。整形にも通院されていたが現在は訪問リハを利用されている。
NSAIDs投与はもちろん阻止しているので、整形からの処方は無かった。
降圧剤がARBなので、AKIリスク高いですし・・・
でもって、やっと本題です。
この患者さんが、突然意識失って自宅内で前に転倒してしまった。
ご家族がいらしたのだが、倒れる瞬間はみておらず・・・
救急搬送され、CT検査(脳)するもその時点では脳出血などの異常所見は認めずとの事だった。来局されたのは、その転倒から1ヶ月以上経過しており、ご本人は全く覚えていないとの事。
意識消失の原因はなんだったのか・・・
薬剤が原因としたら、イクセロンパッチもメマンチンもどちらも可能性がある。糖尿病治療もされているがトラゼンタ5mg単剤投与で低血糖による意識消失は考えにくいし、実際低血糖では無かった様子。
腎性貧血もあるが鉄剤投与のみでHb11以上を維持できている。
色々考えたのだけど・・・
まずはリスクを回避しなくてはって事で、メマンチンを減量すべきだなぁと。
あとは・・・
転倒しているので硬膜下血腫のリスクもあるわけだから、そのための画像診断も次回受診の際にしてもらえたら・・・ご家族も希望されていた。
その2点をトレーシングレポートで報告しなくては!
検査データは参考値ですのでご了承ください。

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