50代で普通の主婦からペットケアマネージャーへ。人生の転機を引き寄せる秘訣
「自分の時間がない」「やりたいことがわからない」
子育て中、こんな悩みを抱える人が多いのではないでしょうか。
今回お話を伺ったのは、ペットケアマネージャーの平端弘美さん。高齢犬のケアや飼い主のサポートなど精力的に活動している平端さんですが、子育て中は特に目標もなく、自分の時間が持てないことにストレスを感じながら過ごしていたそうです。
そんな平端さんが犬に関わる仕事を始めたのは、50歳のとき。彼女がペットケアマネージャーになるまでの歩みと、次々にやりたいことを見つけて挑戦してきたマインドについて伺いました。
時間に追われた子育て期を過ぎて、やっと見つけた運命の仕事
ーーペットケアマネージャーの仕事を始めたのは、子育てが終わってからだと聞きました。以前はどんなお仕事をされていたのですか?
平端さん:
結婚を機に生命保険会社を退職してからは、家事、育児が中心の生活でした。仕事も少しはしていましたが、子どもが幼稚園や小学校から帰ってくる前に終われるような、短時間のパート勤務でした。
ーーお子さんが小さいとき、やりたいことが思うようにできないことに対して葛藤はありましたか?
平端さん:
当時は自分の時間が確保できず、すごくカリカリしていました。子どもが寝てから、落ち着いて本を読める夜の時間が本当に大切でしたね。特に目標もなかったので、「資格をとりたい」「勉強しなきゃ」といった葛藤はなかったです。
ーーそこから犬に関わる仕事をしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
平端さん:
私には娘が2人いるのですが、下の娘が中学生のころに「犬を飼いたい」と言い出して、ポメラニアンを飼い始めたんです。一緒に時間を過ごすうちに、犬っておもしろいな、癒されるなと思うようになっていきました。
そんなとき、たまたまテレビでドッグセラピーを紹介する番組を観て、「これを学んでみたい!」とビビッときて。セラピーの勉強ができて、ドッグトレーナーの資格も取れる専門学校を探して入りました。
ーーすごい行動力ですね!「やってみたい!」と思うことは誰にでもあると思いますが、実際に行動に移すのは難しいように感じます。迷う気持ちはなかったのでしょうか?
平端さん:
勉強するにあたってはお金も必要ですし、まったく迷わなかったわけではありません。でも、犬が持つ癒しの力を身をもって感じていましたし、犬に関わる仕事がしたいという気持ちが強かったので、自分の直感を信じて突き進みました。
50代で未経験からドッグトレーナーの道へ。しかし、楽しいばかりではなかった
ーー実際に学校に通いはじめてみて、心境の変化はありましたか?
平端さん:
同級生の多くは20代や30代で、若いから飲み込みが早いんですよ! 50歳の私はいつも1人だけ遅れを取っていて、先生にもかなり厳しく指導されていました。
自分で決めたことではあったけれど、「私は何をやっているんだろう」と落ち込むときもあって、学校に通う足取りが重かったことを覚えています。「私はこれでいいんだろうか?」「この道でいいんだろうか?」といった葛藤がありましたね。
ーーつらい日々があったんですね。
平端さん:
そうですね。卒業後は、学校からの斡旋で、地元のホームセンターのペットショップ内にある犬のしつけ教室を任されて働きはじめたのですが、集客に力を入れたい会社の方針と合わず、半年で退職することに…。でも、仕事で犬や飼い主さんと関わるなかで、気づかされたことがありました。
当時、飼い主さんから「散歩のときに歩かなくなってきた」「ジャンプができなくなった」といった話を聞くことが増えていたんです。当たり前ですが、犬の寿命が伸びるにつれて、介護も必要になってきます。
犬のしつけができる人は世界中にたくさんいるけれど、シニア犬のことに詳しいトレーナーは当時はあまりいなかった。そこで、「シニア犬のケアや飼い主さんへのアドバイスができる人になりたい」と思い、別の学校に再入学して、また一から勉強をスタートしました。
ーー仕事をするなかで、また新しい目標が見つかったんですね。
平端さん:
学校では、シニア犬に特化した「ペットケアマネージャー」という民間資格を取得しました。資格を持っているのは、現在、私を含め全国で13名です。
動物病院やイベントで、高齢犬のケアの方法や寝たきりにならないための予防法をお伝えするのが現在の主な活動です。
ビビッときたら突き進む。軽やかに挑戦できる理由
ーーやりたいと思ったことに突き進んでいくパワーがすごいですね!その原動力は何なのでしょうか?
平端さん:
「これがやりたい」「この資格をとりたい」と思っても、当然失敗することもあります。でも私は、マイナスなことを考えるよりも、「これだ!」と思ったら、明るく突き進んでいきたいんですよ。
これまでに失敗もたくさん経験しているけれど、いつまでもウジウジとは考えないですね。
ーー気持ちの切り替えが早いのですね。
平端さん:
人から嫌なことを言われてグサッときたり、「あんなことしなきゃよかった」と思ったりすることがあっても、いつまでも悩みつづけない。ネガティブな思考は手放して、新しいことを見つける。そういう切り替えを大事にしています。
あとは、「自分はここまでできた!」と毎日のなかでできたことを褒めるようにしています。もし「今日は、ここまでやらなきゃいけないのにできなかった」という日があっても、「次の日やればいいや」と、またすぐに切り替えて。
ーーネガティブな思考を手放すからこそ、すぐに新しいことに向かって進んでいけるわけですね。
平端さん:
ホームセンター内のしつけ教室で働いていたとき、休みがあまりとれず、体力的にも結構大変で…。結局半年で退職してしまったわけですが、「これでやっと自分の時間が持てる」と思えたんです。
退職後、地元のカルチャースクールに行ったら、たまたま羊毛フェルトで動物のマスコットをつくる教室を見つけて。これまたビビッときて、その教室で習い始めて、今では講師をしたり、作品を美術館に展示したりしています。
どこにどんなチャンスが転がっているかわからないからこそ、いつでも軽やかに挑戦できる自分でありたいな、と思います。
“人生の転機を引き寄せる力”は誰のなかにもある
ーーどこにどんなチャンスが転がっているかわからない。チャンスを掴むために、どんなことを意識すればいいでしょうか?
平端さん:
情報量がとても多い世界だからこそ、日々いろいろなことにアンテナを張っておくのがいいと思います。私のように、ある日突然自分がやりたいことに出会うケースもありますしね。
ーーアンテナを張ってやりたいことを見つけたエピソードがあれば教えてください。
平端さん:
たとえば、私が参加しているラジオ制作コミュニティ* 「ママ夢ラジオ」も、アンテナを張っていたからこそ出会えたんです。
仕事の帰り道に、たまたまドッグカフェのオーナーさんのSNSを見ていたら、「ママ夢ラジオに電話出演させていただきました」と書いてあって。「ママ夢ラジオってなんだろう?」と思って調べてみたら、ちょうどパーソナリティ募集をしていて締め切りが2日後だったんですよ。「なんだかおもしろそう!」とビビッときて、その場で申し込みました。
ーーその場で即決ですか!パーソナリティとして活動を始めて1年後に、コミュニティマネージャーに就任されたのですよね。
平端さん:
最初の1年は渋谷のFM局でパーソナリティを務めていました。その後、コミュニティマネージャーの募集があったんです。自分にできるかどうかはわからないけれど、事務局メンバーの温かさとパワフルさに惹かれて気軽に応募したら選ばれまして。
ーーそこで気軽に応募できてしまうところがすごいですね。
どうせ選ばれないだろうと思っていたので、実際に選ばれたときは「あれ?」と不思議な気持ちになりました(笑)。
現在、コミュニティマネージャーは9人いて、みなさん本当にパワフルでちょっと圧倒されてますね。でも自分のペースで、チームを見守っていけたらいいなと思っています。
ーーアンテナを張るために、意識していることはありますか?
平端さん:
人との関わりのなかで新しい道が開けると思うので、人脈をつくっておくことですね。私の場合、ラジオ活動を通じて、地域のお店や行政、企業ともつながりができました。まったく知らなかった世界に触れることで、やりたいことが見つかるかもしれません。
地域とのつながりが持てるようなコミュニティに入ってみたり、リアルに顔と顔を合わせて話ができるようなところにいってみたりするとよいと思います。
ーーママ友や家族など関わるコミュニティが限られてくる子育て中でも、できることはありますか?
平端さん:
私の場合は、週末は夫に子どもの世話をお願いして、料理やパンづくりの教室に行くなど、出かける機会を自分でつくるようにしていました。
講演会や音楽会に行ってみるのもいいですよね。お子さん連れでもOKなところもありますし。気晴らしに、普段いる世界から一歩外へ出てみることをおすすめしたいです。
ーー最後に、「まだやりたいことが見つかっていない」「もう歳だし」と悩んでいる読者に向けてメッセージをお願いします。
平端さん:
人生の転機というのは、いつ訪れるかわかりません。私は子育てが終わってから新しい仕事を始めました。子育て期間中は、悶々としたり、内にこもってしまったり、ネガティブになりがちで、全然成長できていないと感じることもあるかもしれません。
でも、タイミングは一人ひとり違っていて、それを引き寄せる力が、誰のなかにもきっとあります。自分の目標や好きなことは、いくつになっても見つけられる。やりたいことが見つかれば年齢に関係なく挑戦できると身を持って実感しています。
今は「自分はこれでいいのだろうか」と悩んでいても、挑戦したいと思えることに出会えるタイミングは必ずやってくるので、日々アンテナを張りながら、焦らずに待っていてほしいです。
***
平端さんの行動力の鍵は、「失敗を引きずらないこと」と「自分の直感を信じること」。落ち込む日があっても気持ちを切り替え、自分の直感に従って進んできたからこそ、いくつもの転機を引き寄せられたのだと感じました。
お話を伺っているうちに私もすっかり感化され、今度ビビッときたら、もっと気軽に行動してみようと思っています。普段いる世界から一歩外へ。前向きな気持ちになれるインタビューでした。
〈取材・文=なおみ(@beteko555)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)〉
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