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横浜へ。

大学時代の4年間を横浜で過ごしていた。
母方の叔母が、南区でアパートを経営していて、
毎朝京浜急行の弘明寺駅から生麦駅まで揺られて、
坂道を上がった先のちいさな大学まで通っていた。
これといった目標もなく、勉強にも身を入れず、
のんべんだらりと過ごした日々だった。
叔母が亡くなって告別式に伺って以来、足が
遠ざかっていたものの、先日久しぶりに
出かけたのだった。
新幹線で東京駅まで行って、千葉に住んでいる幼なじみと
待ち合わせをした。東京駅の中の食堂で、昼酒をしながら
久しぶりの近況報告を聞けば、子供のことやご主人のこと、
いくつになっても気苦労が絶えず、大変だなあと察した。
さんざん御馳走になって、またの再会を約束して、
改札口で別れた。
京浜東北線の関内駅を出て、伊勢佐木町の通りを歩いてみる。
見覚えのある店がちらほら残っていたものの、
うろついていた40年前の記憶がすっかり飛んでいる。
東横インに荷物を預けて、大きな通りを渡って山下公園へ
行くと、親子連れや若いカップルがベンチや芝生で
くつろいでいる。
桜木町の赤レンガ倉庫まで歩いて行くと、観光客で
にぎわっている。崎陽軒の食堂で、シュウマイをつまみに
生ビールでひと休みをした。
在学中は横浜みなとみらい開発が始まったころで、
桜木町界隈はホームレスがたむろしていたり、殺人事件が
あったり、雰囲気が好くなかった。
あれから40年。すっかり空気が変わって、明るい
街並みとなったのだった。
ホテルに戻って汗ばんだシャツを着替えてから、
今宵の一献に駅の周辺をうろつくと、文次郎という
おでん屋が目に留まった。
暖簾をくぐったら、若いお兄ちゃんお姉ちゃんの営む
活気のある店だった。
お通しでビールを飲んでから、おでん五種盛りを頼み、
日本酒の品書きを見たら、長野の十六代九郎右衛門が
載っている。グラスに注いでくれるお姉ちゃんに、
長野から来たんですと言ったら、
私も長野の佐久なんですと返ってきた。
亀の海、澤の花、明鏡止水、寒竹、
ぜひ佐久の酒も揃えましょうと言ったら、
かわいい笑顔で頷いた。
壁の、本日の隠し酒ありますの貼り紙が気になって
注文したら、これまた長野の幻舞だった。しかも、
特別純米、純米吟醸、大吟醸と三つも揃えていて
素晴らしい。久しぶりの横浜の地で、故郷の地酒に
おおいに酔っ払ったのだった。

故郷の酒横浜で夏夕べ。

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