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コンビニ日和。

自宅から五分ほど離れた場所に、友達が営むコンビニが在る。
酒やつまみを買ったり、公共料金の支払いをしたり、
定期購読している雑誌を買ったり、ほぼ毎日利用させて
もらっている。
友だちをはじめとして、働いているスタッフの感じも好く、
男やもめの身は、コンビニ一軒あれば生活に事足りる。
まことにありがたいことだった。
その友だちが先日、「コンビニオーナーぎりぎり日記」という本を
貸してくれた。どこぞの町でコンビニを経営しているかたが、
ふだんの仕事ぶりを綴った作品だった。
毎日いろんな客がやって来る。態度が横柄だったり、理不尽な
クレームをつけてきたり、精神を病んでいたり、
そんな客を相手に気苦労の絶えない日が続く。それに加えて
コンビニの親会社にけっこうな手数料を払わなければならず、
スタッフへの人件費もばかにならない。人件費を抑えようと
すれば、オーナー自身が休みを取らずに店に出ずっぱりになり、
体を壊す恐れが出てくる。町を歩いていると、人通りも多く
立地の良い場所のコンビニが閉店した場面に出くわすときがある。
そこには営むかたのもろもろの事情があるのかと、本書から
うかがえた。
上田市の別宅の近所にコンビニが在る。別宅を購入して間もない頃、
初めて買い物に行ったら、スタッフのおばさん二人、
入って来た客の顔を見ても、いらっしゃいませも言わない。
品物を入れた買い物かごをレジに置いて、お願いしますと声を
かけても、返事もせず、客の顔を見ようともしない。店を出るときも、
ありがとうございましたのひと言もなく、いつ行ってもそんな態度で、
そろいもそろってひでえ接客だなと、近所だけれど足が遠のいた。
ある日の夜、馴染みの飲み屋の帰り道、翌日の朝飯を買おうと
久しぶりに立ち寄ったら、
レジに黒人の女の子が立っていた。
上田には外国の子供たちが通う専門学校がある。そこの生徒と察しが
ついた。
流ちょうな日本語でいらっしゃいませーと気持ちの好い笑顔で
迎えてくれて、会計のときも、ありがとうございますときちんと
お辞儀をしてくれた。別の日の夜に立ち寄ったら、
今度はアジア系の男の子が元気の良い挨拶で迎えてくれた。
昼間のおばさん二人に、この子たちの爪の垢でも煎じて飲め!
と言ってやりたくなったのだった。
以来、毎回飲み屋の帰りに利用するようになった。
先日立ち寄ったら、入り口に貼り紙があった。
九月三十日をもちまして閉店しますの知らせだった。
どんな事情か知らないが、おばさん二人の接客が客足を
遠のけていたじゃないのかね。
友だちのコンビニには、しょぼいおじさんのために、
末々長く頑張っていただきたい。

店じまい知らせる文字や秋はじめ。

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