見出し画像

軽井沢安東美術館まで。

朝刊をめくっていたら、軽井沢に新たに美術館が
開館したと載っていた。
実業家の安東泰志さんがこれまで収集した、
藤田嗣治の作品を展示する、軽井沢安東美術館という。
藤田嗣治は、現在の東京芸大を卒業してから渡仏して、
作品を描いていた。作品をサロンに出展するたびに
人気を博して、その名が広く知れ渡ったという。
折しも第二次世界大戦が始まったときで、
パリから日本に帰国すると,
終戦までの間、率先して日本軍部に協力して
戦地に出向き、戦争画を描いては出展していた。
戦後に、その行為を国内で非難されることとなり、
日本に嫌気がさして、再び渡仏して、フランスで
生涯を終えたのだった。
そんなこともあり、パリでは最も有名な日本画家なのに、
日本では長らく知名度が低かったという。
藤田の作品は、七年前に上田市立美術館で
拝見したことがある。
主に人物画と、当時パリで親交のあったピカソやルソーや
モディリアーニ等の作品が展示されていた。
気持ちに留まる企画で、二回足を運んだのだった。
またお目にかかる機会が出来て嬉しいことだった。
休日、電車に乗って軽井沢まで出かけた。
秋晴れの日で、車窓からなだらかな浅間山が
よく見えた。
軽井沢駅を出て、矢ヶ崎公園の敷地を抜けて行くと、すぐに
安東美術館にたどり着いた。
入館料を払って展示室に行くと、初期の作品から年代ごとに
並べられている。藤田の作品の特徴は、他の画家の作品には
見られない、独特の乳白色で、それを用いて描かれた
少女の作品がたくさん展示されている。
清楚な透明感と、切なさを含んだ表情の少女たちに
静かに魅かれてしまうのだった。
このかたが戦時中、戦地の凄惨な様子を暗い絵に
描いたのは、どんな心情だったのか、
思いを向けてしまった。
さいごの展示室には少女の作品と共に猫の作品たちも
展示されて、なんともかわいらしい。
安東さんが初めて藤田の作品を買ったのは、軽井沢の美術店という。
そんな所以もあって、この地に美術館を建ててくれたのか。
実業家として抱えた悩みや苦しみを、藤田の少女たちや猫たちと
乗り越えてきたという。この美術館がみなさまにとって、
心の安寧を得て頂ける場になれば幸いですという。
美術館には、珈琲器具の会社、ハリオが直営するカフェが併設
されている。アイスコーヒーを注文したら、
開店祝いの景品に、ショットグラスを頂けて嬉しいことだった。
来月になれば、雲場池の紅葉も真っ赤に見ごろをむかえる。
晩秋の軽井沢へ、また足を運ぶこととする。

秋澄むや乳白色の少女かな。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?