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奈良にめざめる③橿原神宮・飛鳥寺・大神神社

奈良県は、面積のほとんどを山岳が占め、県域の北西部にあたる「奈良盆地」に人口の多くが集中しています。
旧来から"大和国やまとのくに"としてこの盆地を中心に発展してきました。
北に向かえば京都、西へ抜ければ大阪です。

地図を見ればひと目で分かるこの地理配置も、実際にこの地に立って意識してみると、感覚的に"歴史"に肉迫するというか、「そうだよなぁ。」と妙な納得を覚えて、いつもの地図も不思議と見え方が変わってきます。

奈良旅の2日目は奈良盆地内を反時計回りにぐるりと一周するような行程で、奈良公園から法隆寺を経て、橿原神宮かしはらじんぐうまでやってきました。

橿原神宮前駅
黄色いポストが印象的な、近鉄「橿原神宮前」駅。
橿原神宮
素木造りの大鳥居から表参道へ。

いままでは奈良、飛鳥時代をめぐってきましたが時代は飛んで近代・明治へ。
文化勲章を受賞した建築家・伊東忠太のデザインで、広くてキレイな、心落ち着く空間となっています。

祀られているのは初代天皇とされる神武天皇と、その皇后・媛蹈鞴五十鈴媛命ひめたたらいすずひめのみこと
面白い名前。
神話の世界の登場人物たちで実在はしなかったと思われますが、建国のスーパーヒーローの割には、明治期にここ橿原神宮が建立されるまではあまり注目されてこなかったのは不思議なところです。

日本人はどうも自国の歴史に対しては無頓着というか、自明だろと思い込むというか、すこし朴訥なところを感じますよね。

深田池
手水舎を抜けて左へ行くと、
飛鳥時代に築造されたと伝わる「深田池」へ。
水鳥の群れが迎えてくれる。
橿原神宮
南神門から外拝殿へ。
めちゃデカの絵馬がある。

参拝を済ませたら、やや急ぎ足で駅へ戻ります。
東口から約30分に1本の間隔で出発するバスに合わせて向かったので、急ぎ足どころかむしろ駆け足に近かったかもしれない。

バスに揺られ東へ向かうと、目に飛び込んでくるのは、田んぼ。そして進むにつれて近付いてくる山。
「奈良盆地」の端、"日本の原風景"と呼べるような景色が広がる、明日香村へ入ります。

通り道は狭く、瓦屋根の立ち並ぶエリアでは、軒先にバスの車体が触れそうなほどの距離で通り抜けます。のどかな風景に似合わずスリリングな時間です。
約20分の間、運転手さんの熟練のドライビングテクに感心しつつ過ごしてますと、田んぼの中にぽつんと佇む一軒のお寺にたどり着きます。
飛鳥寺あすかでら」です。

飛鳥寺
安居院あんごいん。通称「飛鳥寺」の佇まい。
飛鳥大仏
本尊の釈迦如来像。写真撮れます。

「飛鳥大仏」とも呼ばれる本尊の釈迦如来像は、鞍作止利くらつくりのとり作と伝わる最古級の仏像で、高さは約3m。大きすぎて最初は金堂に入らなかったという逸話があります。
7世紀初頭に作られた、"いちばん古い"と言われる仏像でありながら国宝指定を外れているのは、修復によりオリジナル部分がほとんど残っていない、とされたからだそうです。そういうものなんですね。

しかし近年研究がすすみ、もっと広範囲に渡って原形が残っている、という可能性が示されました。この先さらなる調査や分析によって、国宝指定へと発展するかもしれません。

陰ながら応援します。がんばれー!
やっぱり、直接お会いしたお釈迦さま像となると、気になっちゃいますね!

蘇我入鹿首塚
裏には、中大兄皇子に殺された蘇我入鹿そがのいるかの首塚もある。

さて、つぎの目的地を目指すにも、バスまではまだ時間がある。
となると、得意の徒歩移動スキルの出番です。
終点まで先回りすることで、バス待ちの時間を短縮して効率よく回れるはず。
ということで、歩いたり、走ったり。走ったり、走ったり。

明日香村は、全域が「古都保存法」により景観が保持され、建築や土地造成は厳しく制限されています。冬で目に入る色味が少ない時期だったこともあってか、田んぼの広がる中にぽつんと取り残されたような史跡たちが物寂しさを誘います。

権力者たちの去ったあとの、かつての都のひとつ。「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」として世界遺産登録を目指しています。

もちろん、陰ながら応援。がんばれー!

息を切らしつつ、「石舞台古墳いしぶたいこふん」に到着。ここは蘇我馬子そがのうまこの墓ではないか?と言われている石棺むき出しの古墳です。

石舞台
石舞台。中に入れます。

手塚治虫の「火の鳥」のヤマト編は、この石舞台をモティーフにしていて、子どもの頃、それはもうたくさんたくさん読んだことを思い出します。

この石舞台を造るために人柱として集められた奴隷たちが火の鳥の血で寿命を延ばし、埋められてなお団結して地中から歌い続けることで権力への抵抗を見せる、というクライマックス。
もちろんフィクションですが、そんな、たくさんたくさん感動したあの石舞台が目の前に存在していて、感慨深いひと時でした。

文字通り駆け足で回ってきましたので、息を整え、軽くストレッチをしてバスに乗り込みます。
入れ替わりで降りてきた人たちの中には、先ほど飛鳥寺で一緒だった顔ぶれも見えましたので、あのままバスを待っていたら、ぼくもいまから石舞台を見ることになっていたんですね。
どうやら時間短縮の作戦は成功したようです。

ただ、たしかに成功はしたものの、がっつり疲れました!
後悔はしてません。はい。

すこし日も傾いてきたところで、本日の行程も仕上げに向かい、奈良盆地の東部を北上していきます。

近鉄「八木西口」駅からJR万葉まほろば線に乗り換え、「三輪」駅へ。まほろば線も30分に1本くらいの運転間隔なので、電車旅の際は注意が必要です。

三輪駅
JR三輪駅構内と駅前の通り。

駅前の通りを抜けて大神神社おおみわじんじゃへ参拝します。
ここは後方の三輪山を神体山としていて、本殿を持たず、初期の信仰の形をいまに残す神社です。

大神神社
4代将軍徳川家綱による立派な拝殿。
大神神社
祈祷殿の脇に座る"なでうさぎ"は実際に撫でられる。
ただ、あまり可愛くはない。

大神神社は、創祀について「古事記」や「日本書紀」に載っているような、最古の神社です。
"山そのもの"に対して畏敬や崇敬の念を抱いた当時の人びとは、ほとんど取り繕ったりせず、むき出しの想いで素直に向き合っていたんじゃないか、と勝手にその姿を想像したりします。

それにしても、今回の奈良旅では"最古"とか"始まり"といったものに多く出会います。まさにこの"大和国"から日本は始まったのだなぁ、という実感。
良い旅ができてるなー。

16時近くになってくるとだいぶ日も傾いてくるので、そろそろ戻る時間です。
約25分間電車に揺られ、三輪駅から奈良駅へ。反時計回りに「奈良盆地」を回ってきました。

からだを使った本日は、からだにご褒美を!
一日の締め括りに、おいしいご飯を食べて明日に備えようと思います。

ももしき
東向商店街にある「ももしき」へ。
誰よりも早く食べ終えた。

昨日も訪れた東向ひがしむき商店街のアーケードを通り、気になっていた「ももしき」というお店へ。
大和牛のすき焼きを、美味しさと腹ペコのあまり、店員さんも少し笑っちゃうくらいのスピードで食べ終えてしまいました。

ごきげんな夜。
2泊目のアパホテルで、きょうもたくさん撮った写真を見返します。

明日が最終日。

最後まで奈良を楽しむぞ。ごきげんのまま眠りに落ちました。

丸山直己

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