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オランダには教育者の疑問に研究ベースで答えてくれるサイトがあった!

こんにちは!

最近少しnoteの更新が滞っていました...というのも、学校視察に忙しく、そのレポート(インタビューの文字起こし)に時間がかかっています。
翻訳を仕事とされている方々は本当にすごいと感じるばかりですが、とてもやりがいを感じる作業ではあるので引き続き頑張ります!

さて、私はいつもオランダの教育界隈のサイトを訪れては日々驚いているのですが、最近"Kennisrotonde"という驚くべきサイトを見つけました。

なんとこのサイト、世界中の教育に関する研究結果を元に、教育科学に基づいて「教育の疑問」に答えてくれるサイトなのです!


子育てをしながら大学院へ進学した過去

実は私は教員として働いて出産を終えた後、週3の時短勤務をしていた時に「第二言語習得」について科学的に学びたいと思い、大学院に進学しました。
その理由は、もっと教育の教授法を科学的に捉え、そこでの学びを実際の授業で実践したかったから。自分の教授法をアップデートし続けたかったから。

ただ、当時の私は・・・

・1歳の娘の子育て
・1日勤務×3日(しかも英語科主任)
・往復5時間の通勤時間(苦笑)

を抱えており。
結論からいくと、大学院を続けるのは不可能な域となってしまい、途中でドロップアウトを余儀なくされました。

ただ、現場で走りながら、大学で学び続けることの楽しさがそこにはありました。またいつかチャレンジしたいと思っています。

出身大学の教員養成課程で学んだことは何もなかった

オランダで縁あって、小学校教員養成課程で学ぶ学生と話をしたり、今後は、教員養成課程で教師(時に教授)として働く方にインタビューをする予定です。

この国の(小学校)教員養成課程の内容を聞くと、その内容があまりにも日本のそれをかけ離れ過ぎていることに衝撃を受けまくっています。
(ただ、海外ではそれがほぼスタンダードだということなのですが)

一言でいうと、
「私の教員養成課程での学びなんて、比にならないくらい低レベル」
だった...ということです。

まず、私が履修したのは第一種中学・高校の外国語(英語)教員の養成課程で、いわゆる「教職課程」の中高英語版です。教職課程の授業内容は大学によって千差万別ですので、私の大学の教職課程の質が著しく低かったとの見方も可能です。

他の総合大学や教育大学における中・高・小学校教員養成課程で質の高い授業を行なっている大学もあるとは思います。
ただ、私が卒業した関西外国語大学は英語教員の採用試験合格率も高く、当時から「英語の先生」になる人を多く輩出している大学でもありました。

そんな大学で学んだ私でさえ、正直なところ「大学の教職課程で学んだことが現場で活かされた」と感じたことはほぼ皆無でした。(ちなみに、在学中はそれなりに熱心に学び、教職課程の単位を落としたことはありません)

そこに科学的根拠はあるか?何となくの教授法でいいのか?

少し話がズレましたが、私が現職教諭になってから「もっと英語の教授法について学びたい」と思ったのは、目の前の生徒に対して行う授業に科学的な根拠を持っていないと感じていたからでした。

そして、本来「教授法」や「教育に関すること」は大学の教員養成課程で学びます。もちろん、教員になった後もアップデートが常に必要なのが教育ですが、その礎のようなものは学生のうちにきちんと身につけておく必要があると思うのです。
礎あってこそ、現職教員として働いてからもその知識や経験にアップデートを続けられる。
土台となるものがない教員養成課程の内容では、アップデートもへったくれもないじゃないか!と、この国と日本の教員養成課程と比べて痛感しています。(具体的にどういった差があるかは別の記事で書きたいと思います)

"Kennisrotonde"は誰のもの?

私が見つけたKennisrotondeはNRO(The Netherlands Initiative for Education Research)によって運営されているサイトで、NROは教育のイノベーションに貢献すべく、世界中で研究されている教育科学に基づいた論文や研究結果などを参考にして現場の教育と研究における教育の橋渡しとして作用しています。

つまり、教育について研究された内容を、現場の教員やこれから教員を目指す人々にシェアすることで、常にアップデートされた根拠に基づいて教育が実践されるようにサポートしているということです。

オランダが教育者を育てる上で大切にしていること。それは、
教育者が最新の信頼できるデータに根拠を持って、目の前の生徒たちの教育を行なえるようにしている。という部分なのです。

研究?統計?そんなもの教育に必要なのか?

一般的な感覚の人々や、教育者の中にも「教育が研究に躍らされるなんて」というようなことを言う人たちもいますが、オランダの教職課程や教員研修ではあくまで教育科学に基づいて学習やトレーニングが行われると聞きます。

論文や研究結果というのは100%全ての学習者に当てはまるものではないにせよ、教育において大きな方向性をかたち作るには欠かせません。また、そういったものにアクセスする権利を持たない教育者の教授法やアプローチはどんどん時代から取り残され、いわゆる「現代にフィットしない教育」へと変化していきます。

そういった意味でも、教育者がある程度の教育科学の流れを掴んでおくことは必要なことであり、学び続ける学習者を育てるためには教育者もまた、その専門性において学び続ける姿勢が求められる。と、教員養成課程で教える先生はおっしゃっていました。

"Kennisrotonde"にある質問をご紹介

では、Kennisrotondeにはどういった内容の質問があるのでしょうか?ちょうど動画があるものなども見つけたので、ここでシェアしたいと思います。

「書くことは言語発達において大きな役割を担っているのか?一方でタイピングはどうなのか?」


「留年することや、飛び級は子どもにどのような影響を与えるのか?」


「小学校高学年におけるPBL学習、プロジェクトベースの学習は21世紀に必要なスキルを身につけることに効果をもたらすのか?」


これらの質問への回答を紹介すると長くなるので、割愛しますが「そうそう、それ知りたかったの!」と思うような質問に対して、「影響力のあるどこかの誰か」が発言したことや「どこかの学校で教員経歴が長い人の経験則」に基づいた内容の回答ではなく、公式なリソースを元にしているところが素晴らしいと思います。

もちろん、研究されているからといってそれが100%信頼できるものかという議論は別です。ただ、少なくとも教育である一定の方向性をかたちづくる時、「現段階で(だいたい)わかっていること」を考慮する価値は十分にあると思うのです。

日本の教育にもこの感覚を

私が知っている限り、日本の場合はガチガチの論文(CiNiiなど)にアクセスして、教育者としての学びをアップデートする必要があるように思えます。
(もし、日本にもこういったサイトがあるよ!とご存知の方は教えてください)

あらゆる教育活動は「何となく」で行われるべきものではない。私は強くそう思います。よって、教育者として教壇に立ちながら、その裏で研究や自分の中にある教育をアップデートし続けている教育者の方々を心から尊敬しています。

教育を過小評価する人たちは、その「教育活動」に根拠があるかどうかというところに「こだわりがなくてもいい」と判断しがちです。また、忙しさを盾に、それを続けられない理由を探してしまいがちかもしれません。

先に述べた通り、教員養成課程においても(もしくはそれよりももっと前の教育の段階で)、根拠に基づいて思考判断するという感覚が養われて欲しいと思うのです。

私が渇望していた、
「実際に教えながら、教育を学び、アップデートし続ける」
という仕組みとその姿勢はオランダの教職課程にも、そして現場の教職員にも存在します。

日本にも"Kennisrotonde"と、教師を志す学生や現職の教職員が自分の専門性をアップデートし続けられる環境とマインドセットを。
このサイトはそういった欲求を後ろから押してくれているように思います。

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