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3月の学校視察ツアーが終了しました!

こんにちは!約7日間に渡ってオランダを歩き、5日間連続で全く異なる種類の小学校をめぐるというツアーが終了しました。毎度そうですが、私は今燃え尽きております。笑

無事、皆さんと学校を巡れたこと、日本帰国組の皆さんがちゃんと日本に着くことができたと聞いて、ほっと胸を撫で下ろしております…

今回のツアーで私自身が感じたことを一言でまとめると、

「教育を考えるとき、教育だけでは足りない」

というものでした。社会にいる全ての大人が、そういう視点を持って社会を動かしていく。「教育=学校のもの」として投げてしまう社会では、お互いに手を取り合って子どもに優しい眼差しを向けることが難しくなります。

少なくとも今回5校のオランダの学校を訪れ、先生たちと話をして感じたのは、彼ら自身が「教育=学校」という縛られた考え方をしていないということでした。


背負った「プレッシャー」を外すことから始めよう

今回のツアー、日曜日の朝に全員が集合し、アムステルダムに風車を見に行くことから始めました。お互いをよく知らず、まだ少し緊張気味のメンバーを連れて、それぞれが歩きながら雑談をしたりしながら観光をしたのです。

そして、夜はある参加者の方が私に、
「飾り窓地区にあるショーを見に行こうと思うんだけど、菜央さんもどう?!」
と声をかけてくださり…

「え?!行く行く!!!」
となった私。←

2人でこっそり行くのも忍びないと思ったので、皆さんに提案してみたら、全員行くって。(うそやん)

「あ、ちょっと変な人たち揃ったかも。爆」

ということを心のどこかで感じながら(まだ確証は持てない)、夜の飾り窓地区へ出かけたのでした。

…結果的に多くの皆さんが声を合わせて言ったのは、
「初日にあれを見て良かった」ということでした。会場にはカップルも多く、ショーにはたくさんの笑いもありました。エロさを超えた「明るく前向きな性との付き合い方」がそこにはありました。

日本という場所から自分を物理的に切り離して、全く異なる文化に身を置くことはワクワクする反面、ちょっとドキドキもします。でも、全く異なる文化に囲まれると少しだけ"違う自分"になれるような気もするのではないでしょうか。

そういう意味で、私は日本から来られたメンバーが日本で背負ってきた目に見えないプレッシャーみたいなものを「ポンっ」と地面に置くことができたきっかけが、このショーだったのではないかと思いました。

「エロというより、アートだった」そんな感想が多かったショー。私たちは「人間がこれまでの進化の中で当たり前に行なってきたこと」を見ることで、「人間」という存在について考えるようになったのかもしれません。

ショーの内容に関しては、ブログを書かれていた方がいらっしゃったので、ご興味があればどうぞお読みください。笑

オランダに住んで3年の私ですが、このショーを見たことで私自身もオランダという社会を俯瞰して見ることができました。とにかくオープンで、語りにくいこと(タブー)を敢えてテーブルに置くことで語り合おうとする「オランダという国の考えかたのひとつ」のようなものを見た気がしたのです。

そして、後日訪れた複数の博物館で性教育エリアを訪れると、どこか納得できるというか、メンバーの皆さん自身がとてもオープンな心を持ってそれらと向き合っていたように見えたのでした。

こんなに小学校が異なるのかという衝撃

これまで多くの学校を訪れてきましたが、一つとして同じ小学校はありません。もちろん、日本の小学校でもそうだとは思うのですが、その感覚とは全く異なるのがオランダの小学校です。

特に今回は、giftedの小学校やイエナプラン、モンテッソーリなど、教育方法に違いがある小学校をあえて選びました。それでも全てが公立で、子どもたちは地元に住む小学生だらけです。

「聞いてはいたけど、この衝撃は実際に来ないとわからない」

これは全ての参加者が感じていたことだと思います。とにかく"ちがう"という衝撃がすごい。それは私自身がこの国で多くの学校を訪れて感じてきたことでした。そして、オランダの多くの人々は「違って当たり前」だと捉えています。

同じなのは管理職の在り方とチームの強さ

一方で共通しているのは、管理職がきちんと管理職という仕事を理解し、それを全うしているということかもしれません。話を聞けば、彼らの仕事は「マネジメント」という括りでありながら、決して「リスクマネジメント」に縛られていません。あえていうなら、「積極的な介入を行うマネジメント」です。

もちろんこれには、「オランダに暮らす人々」に共通する文化によって培われてきた色があるからだと言えます。一方で、それにしても管理職が管理職としての仕事の意味をきちんと理解している…それが日本の教育文化の間にある大きな違いだと感じたはずです。

「私たちの最大の仕事は、教職員を守ることです」

これは私たちが訪れた全ての小学校の校長が口を揃えて言った言葉ではないでしょうか。誘導したわけでもなく、彼らの仕事は実際に子どもたちに触れる教職員を「マネジメントができる立場」として守り抜くことなのです。そうすることでいいチームができれば、それは自然と子どもたちに還元されていく…対大人の仕事は、子どもたちの前に立ってする仕事に比べると無機質に感じると多くの校長先生は漏らします。でも、それが上手くいけば、子どもたちが「毎日来るのが楽しい」と思える学校を作り出せるのです。

「イエナプランに縛られ過ぎていた」という感想

参加者のほとんどは、実際にさまざまな学校を見るまで「イエナプランってどんなんだろう〜」と思っていたようです。しかし、月曜日にgiftedの学校を訪れたところから「あれ?これはイエナプランじゃないのに…?」という驚きを感じてたように見えます。

テーマ学習で教育活動を進めたり、異年齢で一つの教室で学んだり…「イエナプラン」と呼ばれないのに、イエナプランのような学校はオランダに無数に存在します。しかも、それはイエナプラン発祥のアイデアというよりは、オランダの教育に「普通に」根付いているものなのです。

(言い方が悪いのは承知ですが)私としては正直、イエナプランという言葉に縛られ過ぎている人たちが多いなと感じます。なんだか「イエナプラン」という言葉が一人歩きして、全体数の3%にも満たない教育モデルが、「オランダの教育」のように取り扱われているのが不思議です。

「異年齢で学ぶことや、テーマ学習をすること、催しをしたり、サークル対話をすることは日本では"イエナプラン"ととりだたされることが多いんです」

と校長先生に言えば「うーん、それは非常に偏った教育の見方ですね。苦笑」と言われることも多くなってきました。「そういうのはオランダでは当たり前の風景だし、教育モデルに名前をつけることはそんなに大切ですか?モデルの先にあるものが教育ではないですか?」と。

ある人は言います。
「日本の人は、"型"に名前をつけるのが好きなのかもしれませんね。その方がわかりやすいけれど、誰にとってもわかりやすいものに物事の本質があるとは限りませんね」と。

私が日本から参加者の方々に伝えたいのはここでした。オランダの教育って、言ってみれば全部イエナプランじゃん。と。でも、イエナプランの学校の中にはドルトンの方法が入っていることもよくあります。では、オランダにおける"イエナプラン"って何なのでしょうか…?

名前をつけなくても、良い教育は実現できる

私にはオランダでいくつもの多種多様な学校を訪れてわかったことがあります。それは、

「どの教育も目の前の子どもに合わせて柔軟に行えるのであれば、とりわけ名前などいらない」

ということです。そして、教育モデルに名前を持たせることよりも重要なことは、まず教職員全体が「良いチーム」になれていることだという確信があります。そのために必要なのは「マネジメント」の意味をきちんと理解している管理職がいること。そして、主体的に行動できる、トップダウンの組織ではいけないと理解している主体的な教職員が在籍していることです。

それぞれで、役割によって出来る仕事とできない仕事があると理解しながら、それぞれが役割を果たすために積極的なコミュニケーションを通してお互いを理解する努力をし続けられる組織が、結局のところ「良い教育活動」を子どもたちに提供できるのではないでしょうか。

だから、教育モデルはその組織が納得するかたちで生み出せれば良い。オランダの学校の中にはイエナプランからダルトンに学校のコンセプトを移したり、教育モデルを持たなかった学校がモンテッソーリに変化したり…ということが起こります。それは、そこにいる教職員たちが「今の私たちにできることはこれだ」と目の前の子どもたちに合った教育を見つけた時にそうなるのです。だから、組織は生き物として扱われます。

何かに縛られず、五感を通して得るもの

「百聞は一見に如かず」とはよく言うものですが、海外で現地の学校を見ることは、インターネットで情報を得たり、本でその内容を読むこととは全くことなります。

私自身、日本で現職の時に仕事の在り方やライフワークバランスに疑問を持ったのは、アメリカ留学中に小中学校の授業を見学し、先生と話したことがずっと自分の中に引っかかっていたからでした。

自分ではわかったつもりになっていることがこの世の中にはたくさんあるように感じますが、現地に足を運び、自分の五感を通して得たものはずっと記憶に残ります。そして「知ってしまった」という事実が人を苦しめることがあることを私は理解しているつもりです。

それでも、時間とお金をかけて日本からはるばるオランダに来てくれた今回の視察メンバーが「来て良かった」と思っていることはその表情から明らかでした。「やっぱり来てみないとわからなかった」と、参加者全員が口にしていたのも印象的でした。

これからの私の使命は、日本でそれぞれの場所に帰っていった参加者の皆さんを孤独にしないこと。「同じ景色を見たよね」という気持ちを強く維持できるよう、私自身もこの国の教育についての専門性を高めることでこれからも自分自身をアップデートし続けることだと感じています。

今回集まってくれた皆さん、本当にありがとうございました!
楽し過ぎた人生の7日間、笑って、涙して、考えに考えた7日間を私は一生忘れません。

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