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セルフイメージが引き寄せる

私達は、自分について、「自分はこういう人間だ」「自分の価値観はこういうもの」「自分はこれが好きであれは嫌い」などと、様々なセルフイメージを抱いています。そのイメージが過去からの様々な刷り込みによって構築され、自分の本当の姿ではないにも関わらず、私達は、往々にして無意識のうちに、セルフイメージに基づいた行動や言動を選択してしまっています。セルフイメージは、こうしてありとあらゆる選択全てのベースになるだけでなく、人や出来事を惹きつける波動を作り出しています。自分の言動や行動、人生の大切な選択、周りに集まる人達や関わっている物事の動きなどを振り返って、どうして私の人生はうまくいかないのだろう、なぜ同じことばかりを繰り返してしまうのだろうと、「なりたい自分」と「なれない自分」の狭間で苦しんでいる人は少なくありません。

私の演劇の生徒の一人も、こうしたジレンマに悩んでいました。自分はいくらオーディションに行っても、キャスティングで主役が回ってこないというのです。脚光を浴びるスターの役が欲しいのに、振られる役は、召使いのような補佐役ばかり。なぜ自分には主役の女王様役が回って来ないのか、不公平だ!というのが彼女の言い分でした。私は彼女の体の動きや使い方を、その時教えていた「役者の体の動き」のクラスでじっと見ていました。彼女が選ぶ動きや方向性、パートナーとの関わり方は、「補佐役」で、フォロワー的でぎこちないものが多く、自分からリードしていくことはほとんどありません。しかし、彼女は時たま、「あれっ!?今のはなんだったの?」という予期しない顔を見せるのです。気品ある力強い所作、どっしりした足取り、深い呼吸、他の人を引っ張っていく迫力。そこには紛れもない女王の資質が見られました。不思議に思い、宿題で書いてきていた彼女のジャーナルを読むと、いかに日々自分が人の為に尽力を尽くしているかが、何ページにも渡って書いてあります。
   

 
なぜ彼女に召使い役しか回って来ないのかは明確でした。やろうと思えば、女王になれる資質を持っているのに、彼女は、自分で召使いを演じることを選んでいたのです。日常生活で演じ続けている役割は、無理してカバーしようとしてもできるものではなく、舞台という場でも、どうしても滲み出てしまう。だからそういう役どころばかり来てしまう。彼女が外に向けて常に発信しているイメージが、補佐役を引き寄せ、その役を演じることでさらに彼女の持つイメージが強化され、日常でも舞台でも補佐役を生き続けてしまうという負のループです。

これは、演劇の生徒が抱えていたジレンマですが、特に演劇でなくても、仕事や人間関係、恋愛でも、自分が自分だと思っている「セルフイメージ」は外から来るものを常時引き寄せています。Aというセルフイメージを醸し出している人のところには、それと同じイメージの人や、それに沿った事柄か、真逆、または、それをパズルのように補佐するイメージの人や事が引き寄せられて来ます。強化された親しみあるセルフイメージの下に生きていくのは、安心感があるかもしれませんが、苦しみや絶望感も伴います。「ループ」にハマると、同じところをぐるぐる回ってしまい、抜け出すことができないのです。

負のループを破り、自分が本来持っている本質を生きるには、まずは気づきを起こすことが大事です。自分の世界に入って来る人や起こってくることを、鋭い感知力を持って、細かく深く観察すれば、自分を覆い隠しているセルフイメージが見え始め、自分が演じてきた役割を心の底から認識することで、人生に起こってくることの意味がわかってくるでしょう。


 

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