見出し画像

短い物語「カエル・カワイイ・カエル」投稿と、小説「納屋を焼く」についての短いエッセイ

村上春樹の短編に「納屋を焼く」というお話があります。

「僕」はパントマイムの勉強をしている「彼女」とその恋人の「彼」と知り合い、そして3人でマリファナを吸うのですが、その時に、不思議なことを「彼」から告げられる。

「時々納屋を焼くんです」

「彼」は次に焼く納屋のことも予告する。それは「僕」のすぐ近くにあることを。

「僕」は近くの納屋を回ってみるのだが、いつまでもひとつも焼かれない。そして、その後…

と、書くとちょっとミステリーっぽいですが、いやでもぽいじゃなくてミステリーか。

正直いうと、最初にこのお話を読んだ時「???」でした。どういうこと?これ。ここで終わるの?え、普通に意味わかんない。

そこから数年経って、ある日ふと

「ああ、”納屋を焼く”って”殺人”のメタファーかな」

と思いつきました。

今でこそ、ネットで検索するとその解釈がばんばん出てくるのですが、わたしちゃんと自分で思いついたよ偉いっしょ、みたいなことを思いましたが、でもみなさんわりと1回読んだだけで気づいていてもうみんなあったま良いなあ!(注:決して自分が馬鹿だとは思わない)

(もちろんネット上には他の解釈もありました)

”殺人”というとあまりにも肉感的で、殺した後も「肉体の重さ」というものを感じてしまう単語なのですが、”納屋を焼く”というのは、炎に包まれ焼け崩れて最後は軽い灰になって闇の中に舞い散らばっていく、という、「殺す」じゃなくて「消えていく」というイメージに近くなりますね。

「彼女」が、「蜜柑むき」パントマイムについて言っていた「そこに蜜柑のないことを忘れる」ということも、「そこに、「彼女」がいないことを忘れれば」「暗闇の中にいる別のかたちの「彼女」が見えてくる」というふうに読んでみました。

「彼女」のパントマイムを見ながら「僕」は「現実感を吸い取られていく」感覚になるわけですが。

さてどうでしょう…。怖いですねミステリーどころかホラー?

ところで、「僕」がマリファナ中に夢を見ているときに例の「時々納屋を焼くんです」の台詞が入ってくるのですが、この書き方がなんか素敵です。その台詞部分だけ下寄せになっていて、上がすごい空白になっていて、ふわふわした幻想の中にいきなり前振りもなく硬式ボール直球で突っ込んでくる、みたいな感じ。

「ホラー」というわけではないですが、村上春樹はいわゆる「こちら側」と「あちら側」の境目がほどけてゆく物語が多いですね。私は好きなんです。

この「納屋を焼く」が載っている短編「蛍・納屋を焼く・その他の短編」の中の「踊る小人」もね、すごく怖いというか、ホラーというか、印象に残りますね。

「踊る小人」についても、また書こうかな。

ミステリー、ホラーといえば、映画「エンゼルハート」ってすごかったよね。ミッキー・ロークとロバート・デ・ニーロの。アラン・パーカー監督。1987年の映画。あれもう1回観たいんですよね。

さて。

私も短い物語を書きました。

久々アルファポリスさんに投稿しました。ミステリーでもホラーでもないですけど、でも暗闇は出てくるかな。しかしピンク色も出てきます。

「カエル・カワイイ・カエル」

noteカバーイラストも描きました。

画像1