ショートショート「ビール傘」
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加してます。
今回のお題は、「ビール傘」
ビール傘
ある日宇宙人がUFOに乗ってやってきて、地球を攻撃しはじめた。
UFOからビールの雨を降らせたのだ。
多くの人が酔っ払って弱ってしまった。
だが、僕は平気だった。
僕の頭上に直径1メートルほどの円の形をしたバリアが貼られているようで、ビールが避けていくのだ。
まるでビールから僕を守る「傘」のように。
なんだろう、と思っていると携帯電話が鳴った。
相手はずっと前に別れた元カノだった。
「あなたのバリア、わたしたちの研究所がつくったの。試作品。あなたはアルコールに弱くて口に入ると大変だから、勝手だけど試作品の対象者に選ばせてもらったの」
そういや、彼女は国立のナントカとかいう研究所の所員だった。
「バリアを大量生産するわ。世界は救われる」
「ありがとう」
彼女はしばらく黙ってから言った。
「わたし、来月結婚するの」
僕もしばらく黙ってから言った。
「おめでとう」
「ありがとう」
電話を切ってから僕は少しだけ泣いた。
涙から僕を守る傘はなさそうだ。
***終わり***
読んでくださってありがとうございました。
私はお酒は弱いのです。すぐ赤くなってしまいます。