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とても短い小説「幽霊じゃねえよ」投稿と、「雨月物語」についてのエッセイその1

8月に入りました。相変わらず暑い夏です。夏といえば、怪談。今なら「ほん怖」昔は「あなたの知らない世界」ですが、やはりここは小説と行きましょう。上田秋成「雨月物語」

この世ならざるもの達、「異界」との邂逅を描いた物語集なのですが、「怖くて次のページがめくれないよお」的なホラー小説ではなく、仄暗い隙間にふっと落ちたような、そんなふうに静かに心の中に跡を残してゆく物語たちです。(怖くて次のページがめくれないよお」という気持ちは、今、ここに存在する”現実”に対して思いますね…)

「雨月物語」を夜に読んでも「怖くて眠れねえんだよ」と言うことにはならない…と思う…んだけどどうだろう。わたしの場合は「古文全然わっかんねえよ、わたしこんなに馬鹿だったのかよ」と自分に自信がなくなって眠れなくなったような気がします。(だめじゃん)

でも、そんな情けないわたしでも大丈夫。雨月物語なら現代語訳がちゃんと出てます!(何故か威張る)でも、古文得意な人は、最初から原文にレッツチャレンジしてみてね。

さて。

わたしの心にいちばん残ったのは「浅茅が宿」かな。

宮木は京都に行った夫勝四郎を待ち続けていた。(この待ち続けている宮木についての文章が本当に心が苦しくなっちゃう文章で)7年も過ぎてやっと帰ってきやがった勝四郎と宮木さんは再会して、お互いの心の内を話すわけです。ですが、その翌日、勝四郎が目を覚ますと…。

”さりともと 思ふ心にはかられて 世にもけふまでいける命か”

彼が目を覚ました後の描写が物悲しさに包まれているのですが、その物悲しさに惹かれてわたしはこの部分を何度も読んでしまう。

わたしは宮木さんに肩入れし(読んだ人だいたい宮木さんに肩入れすると思う)勝四郎には「今でもいるよねこういう人って」と思ってしまうのですが、どうでしょうね、宮木さんも彼に言いたいことを言ってスッキリしたと思うので、「次の生ではもっといい男見つけちゃる」くらいの心境になっているのではないかと、なっていて欲しいなと思うのでございます。

さて、長くなってしまったので、また次回、雨月物語の別のお話をしたいと思います。

それでね、最後にやはり自分の宣伝です(ほら来た)。わたしも「異界」との邂逅を描いた小説を書きました。恐怖と涙の物語、だと思うと裏切られます。

「幽霊じゃねえよ」すごいゆるいです。さっと読めますので、よかったら読んでください。

今回のカバー絵も書きました。

最近の自分の作品を眺めると「ああ、わたしは暑くて仕方ないんだなあ」という気持ちが本当に伝わってきます。涼しさを求めている。

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