見出し画像

ショートショート「さんすうの教科書」

かなり寒くなりましたね。みなさんお元気でしょうか?
すみません、実は忙しくてフォロワーさんやスキを押してくださった方々のnoteをなかなか読めない状態であります。これから徐々に読んでいきますのでよろしくお願いします。

さて、今日はショートショートを書きました。クスッと笑っていただければ嬉しい感じのお話です。よかったら読んでください。

「さんすうの教科書」

ぼくは、きょうすけくんがとってもすき。
ぼくは、だいたいの生徒さんに嫌われる運命なんだ。みんなぼくを見ると、顔をしかめるんだよ。ぼくの顔をなるべく見ないようにしている。

でもね、ぼくは自分で言うのもなんだけど、多くのひとびとの役に立つために生まれたんだよ。

そのために、ぼくはみんなに話しかけているのになあ。

4月に、ぼくはきょうすけくんと1年間おつきあいをすることになったんだ。
まあ、たしかに、きょうすけくんが望んでおつきあいを始めたわけではないな、と、ほんとうは自分でもわかってる。

きょうすけくんにとっては、「ニンジャきょうだいたち」が「ドロドロおばけたち」をやっつける漫画のほうが好きなんだろうなあって思うの。

でもね、きょうすけくん。
たとえばニンジャきょうだいたちが算数が苦手だとする。
ある日、ドロドロおばけたちに
「どうだ、仲直りしないか?仲直りの証におまえたちにケーキをやろう。ワタシはケーキの5分の3をもらおう。おまえたちには6分の4やろう。どうだ、おまえたちのほうが得だろう」
とかなんとか言われた時に、
「うそだ、おまえたちが言ってることは嘘だ。なぜなら通分するとおまえは15分の9、ぼくたちは15分の8ではないか」
などと返答してしまったら、
そしたらドロドロおばけたちは、
「えっ、それ通分間違ってない?せっかくおまえたちが得になるようにしてあげたのに。もう仲直りなんてしない」

算数ができないと、こんなふうに仲直りにも失敗すると思うんだ。
だからね、きょうすけくん、算数は勉強した方が良いんだよ。
だからね、きょうすけくん、ぼくを開いてほしいな。
でもきょうすけくんは、おかあさんに何か言われたときだけ、ぼくと手をつなぐんだ。

でも、いいんだ。そのときだけでも、ぼくは君に一生懸命話しかけるよ。
この前、問題がちゃんと解けたときに、きみはにっこり笑ってくれたよね。そこでぼくもにっこり笑ったんだ。
あのとき、ちょっとだけ仲良くなれたよね。

ぼくはいつか君の役にたつんだ。
ぼくのことを知ってくれて、ぼくといっしょにさんすうを語って、
君がたくさんのいろいろなことが、できるようになりますように。
いろいろなところに行けますように。

ぼくはきょうすけくんを応援しているからね。
だから、できるだけたくさん、ぼくを開いてね。

*****終わり*****

6分の4と言って、いちど約分させて手間をかけさせるあたりが、ドロドロおばけたちもヤラシイなあと思います。お前ら本当は仲直りする気ないだろう。
(私が通分間違っていたらどうしようという少々の不安)

今回のnoteカバー絵は、やっと、秋っぽい色合いにできました。最近は、季節考えると、ちょっと寒そうかなあというような色合いが続いてましたので…。

「Let's increase the nourishment for the heart in autumn」

画像1