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パリ、天井桟敷のたのしみ

パリの劇場は既にご紹介したボックス席や最高に見やすい席だけが楽しみではありません。

天井桟敷と呼ばれる席にはそこならではのたのしみ~愉しみという感じの~があります。

バレエもオペラもダンスもない日に出向くシャンゼリゼ劇場は最高の席を取ることもあれば、当日販売のみの天井桟敷で行くこともあります。

天井桟敷からの眺めはこんな。

天井桟敷のシャンゼリゼ劇場 (1)

天井画がすぐ近くにはっきり見えるのも楽しさです。

天井桟敷のシャンゼリゼ劇場 (3)

正面のモチーフと同じアールデコらしいデザインの木の枠は裏はこんな色なのが分かります。

こうした席は音楽の時は音楽を学ぶ学生さんと、歌舞伎でいうところの「大向う」の観客に近いと思うのですが、大変経験豊富で音楽を長らく愛してきた高齢者が多く来ています。

それは始まる前や幕間の会話が漏れ聞こえてきて何となく分かったりした感じです。また、並んでいる時には色々なドラマもあります。

並んでいる人に当日相手が来なくなったとチケットを安くで譲りたいという人が現れたり、ただであげたいという人が現れたりすることもあります。(ただのケースは話しかけていた間にそれを耳に挟んだ女性が手からもぎとるようにしてそのままダッシュで階段を駆け上がって入場してしまい、その女性も並んでいた一同も文字通り"唖然"としたり・・・話していた男性はあんまりだと憤慨していましたが、あの瞬発力はすごかった。決して上品ではないですし、褒められたものではありませんけれど・・・。)

また並んでいる人同士であれこれ会話が弾むことも。
以前後ろの女性からつけていたアクセサリーを褒める声をかけられてお話ししていたら、何とアクセサリーデザイナーでご本人も素敵なアクセサリーをされていたり。

肝心の舞台ですが客席は椅子がおかれている状態で固定ではないので、大体の場合皆でそこは仲良く譲り合って見易い場所を作って見ます。
そこには争いの空気はなく、同じ対象を「好き」な者同士の穏やかな空気が流れます。そんな空気も懐かしいですね。

ただ、写真からご想像できると思うのですが、大分乗り出さないと舞台は見えづらいのですが、音楽の場合は音がそこでも十分にいいのはさすが。

ダンスやバレエは私は選ばない席ですが、見えないわけではありません。
例えば、日本の文化会館の5階席よりは高さも距離も近いですし、お試しに見てみたい、それほどお金をかけたくないけれど興味がある場合には選択肢の一つです。
何よりこうした場所が安価で残っていることで、お金がない学生、興味があるけれど、そこまでではないという人が気軽に来られるのが一番大切な事だと思います。

この席のお値段はわずか5€、日本円で¥500もしないのです。
映画よりも安く、リアルな舞台をアールデコの素晴らしい劇場で体験できる豊かさが味わえるなんてすばらしい事、ではないでしょうか。

現在の発表では最速のダンス公演は、2021年1月19、20日のエレオノラ・アッバニャート・プロジェクトになっています。チケット購入も可能な状況です。

実現しますように。




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