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イタリアを堪能した一夜〜【Concert】DOT Opera Presents Vol.2「ヴェルディの夕べ」

 ソプラノ・百々あずさ、ピアノ・小埜寺美樹、メゾソプラノ・鳥木弥生の3人によるユニットDOTオペラ。第1弾は昨年『アイーダ』全曲を演奏会形式で上演。ゲスト歌手も含め実力派揃いで第一級の演奏だった。さてその第2弾は、村上敏明という、これまた日本のトップテノールを迎えての「ヴェルディの夕べ」。プログラムは、『オテロ』『イル・トロヴァトーレ』『ドン・カルロ』『アイーダ』『運命の力』からそれぞれ2曲ずつ。ソプラノ、メゾ、テノールそれぞれのアリアや二重唱など、1時間というコンパクトなボリュームだが、凝縮された内容でたいへんに聴きごたえのあるコンサートだった。

 この3人の歌手の共通点をひとことで表現するなら「日本人離れしている」ということだろう。長らく欧州を拠点に活動してきた百々あずさは、ドラマティックな声の持ち主。また特に高音の安定度が抜群で、ちょっとこういう声の日本人ソプラノはなかなかいないのでは。フィレンツェ市立歌劇場でオペラ・デビューを果たした後、イタリアとフランスでずっと仕事をしてきた鳥木弥生の最近の日本での活躍はご存知の通り。華やかな美貌から繰り出される声は、細部に非常に繊細な装飾が施されたワイングラスのよう。アズチェーナもエボリ公女もアムネリスも、表現力もピカイチだ。藤原歌劇団を代表するテノールとして活躍中の村上敏明も、長らくイタリアで活動した人。輝かしい高音は今が絶好調で、なんと『トロヴァトーレ』のマンリーコのアリアをを予定されていなかったアンコールで歌ってくれた。

 ピアノの小埜寺美樹はMCも担当したが、こんなに話の上手い人だとは知らなかった。全曲ピアノを弾きつつの語りの面白さに、天は二物を与えるのだなあとつくづく感心。いや、小埜寺さん、もっとコンサートでお話ししてください(笑)

 豊潤で絢爛で劇的で華麗なヴェルディという「イタリアの音」を堪能した1時間だった。

5月25日、ルーテル市ヶ谷コンサートホール。

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