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【沖縄フィルムオフィス|琉球新報 落ち穂⑦ 2020年10月9日掲載】

(これまでに執筆した記事を振り返っています。)

皆さんは沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)に「沖縄フィルムオフィス」というフィルムコミッション業務があることをご存知だろうか。フィルムコミッションとは、映画などの撮影誘致や撮影支援、映像を使った地域のPRなど、芸術文化や観光、産業の振興などに大きく貢献している機関だ。

2008年に英国で開催された国際旅行博「ワールド・トラベル・マーケット」に日本政府観光局(JNTO)とOCVBからの依頼で、沖縄特集のジャパンブースをプロデュースした。それは欧州でのOCVBによる観光誘客のための英国初出展だったと思う。その後、沖縄に戻り、アートの仕事で生計を立てる難しさに直面した際、当時出会ったOCVB職員から私の経験を生かして、海外事業部でのPR業務はどうかと仕事の誘いを受けた。

これまで観光の仕事をメインに考えたことは無く、正直、躊躇した。その間に、声をかけられたポジションは埋まり、他の部署の求人を探してOCVBにフィルムオフィスがあること知った。映画は総合芸術なので、ジャンルは様々でも、映像を使って沖縄県のプロモーションを担う仕事は、私にとって願ったり、叶ったりの夢のような仕事だった。

英国で日本人として典型的な東京のイメージを押し付けられ、生まれ育った沖縄のことを繰り返し語るうちに、沖縄を誇りに思う気持ちとアイデンティティーは人一倍強くなった。言葉で説明しても理解してもらえない文化の違いは、ロンドンで上映された映画「ナビィの恋」に、友人を連れ立って鑑賞し、ようやく理解してもらうことができた。百聞は一見に如かず。未知の世界や異文化を映し出す映像には大きな力がある。

2005年頃からBBC (英国放送協会)のTV番組で沖縄の長寿や空手が紹介され、英国で反響を呼んだ。2003年のフィルムオフィス設立以来、世界的な沖縄の知名度向上と国内外からの観光誘客の裏側に、沖縄フィルムオフィスの存在がある。コロナ渦で、撮影自体が激減しているが、ソフトでパワフルなフィルムコミッション業務を改めて見直す必要があるように思う。

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