10年後の輝石

オパールの指輪。
それが入った小箱を、そっとなぞる。ジュエリーショップで買う時はあーでもないこーでもないと悩んだし、「これをください」という時はあまりの緊張に目の前が真っ白になる所だった。
店員さんによって白い布の隙間につめられて、藍色の箱をそっと閉じられる。
それを受け取った時には考えられないほど、愛おしい気持ちでいっぱいになる。
不思議である。
さっきまで、ただの道具でしかなかった物が、今はこんなにも、大切なものに。
「ぼくと…結婚してください」
その言葉を受けた君が、みるみる顔を真っ赤にして。
差し出した箱を、愛おしそうにさわる。
──数時間前のぼくと全く同じ手つきで、それだけでも嬉しくなる。
「十年前と違って、綺麗な手じゃないから…」
なんて言ってる君の手をとって、指輪はあるべき場所へおさまった。
君の薬指に輝く、オパール色。
それだけで、ただの石が最高の宝物に変わる。
十年前というなら、ぼくの方こそ。
「待たせてしまって、ごめんね。
ぼくと一緒に、幸せになってください」
沢山の変化を見つめてきた、このオパールと一緒に。

「十年後の輝石」

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