はじめに
毎週木曜日には好きなことを好きなように書き散らしている私ですが、先週で連続小説がいったん完結したこともあり、今週からは再びむかしばなしについて、楽しく綴っていこうと思います。
みなさんは『金太郎』のストーリーをご存じでしたか?「まさかりかついで金太郎」という歌なら知っている人がいるかもしれません。ちなみにこの歌、「まさかりかついだ」と覚えてしまっている人も多いんだとか。私も調べて初めて自分の覚え違いを知りました。それはさておき、歌詞をちょっと追ってみましょう。
「まさかりかついで金太郎 熊にまたがりお馬の稽古 はいしどうどうはいどうどう はいしどうどう はいどうどう」。
・・・・・・で、金太郎は何をした人なんですか・・・・・・?名前が有名な割に、なんとも認知度の低いおとぎ話のヒーロー。今回は金太郎について。
青空文庫より「金太郎」楠山正雄
以下に青空文庫より「金太郎」(楠山正雄)の第一段を引用します。
なお、YouTubeでも朗読バージョンを公開していますので、音声で楽しみたい、という方はこちらからどうぞ。
いかがでしたでしょうか?
ちなみに童謡の歌詞はこちらです。
熊と相撲をとっている印象が強いのはやはりこの歌に依るところが大きいのかもしれませんが、今からおよそ40年前に楠山正雄氏が書き起こした「金太郎」も、第一章はほぼ、相撲をするばかりで終わっています。ちなみにこの作品は二部構成。つまり、全体の半分は相撲をしているわけです。
山場はどこへ消えた?
教員になって一年目。ある生徒が質問をしてくれました。
「先生、桃太郎や一寸法師は鬼退治をするのに、なんで金太郎は熊を倒しておしまいなんですか?」
面白い!考えてみたら、たしかに金太郎のお話は盛り上がりに欠ける。たぶんここが認知度の低さにつながっていると思われるのです。金太郎って何をした人なんでしょうか?熊と遊ぶだけ??
いえ、このお話、続きがあるのです。詳細は次回あらためて紹介しますが、後半戦、金太郎はその強さを認められ、スカウトされます。このスカウトマンこそ、武芸に優れて数々の武功を上げたとされる源頼光の家来、碓井貞光(うすい・さだみつ)だったのでした。
出世魚?金太郎はのちの……
スカウトされた金太郎は、源頼光に仕え、坂田金時という立派な武士に成長します。で、何をしたか。鬼退治です。やはり金太郎も、大人になってから鬼退治をしていたのです。頼光一行(坂田金時は頼光四天王の一人と呼ばれるように)が大江山に行き、酒呑童子と呼ばれる鬼を退治する昔話、これは今、「酒呑童子」とか「大江山」として語り継がれています。「金太郎」のクライマックスは「酒呑童子」という別の昔話にもっていかれてしまった、というわけ。
鬼を倒した人間は立派なヒーローとして語り継がれます。そしてヒーロー幼少期として、「金太郎」のお話も有名になりました。今、他の昔話と比べると、少し拍子抜けしてしまうような「金太郎」ストーリー。それもそのはず、これって、「序章」にすぎなかったんですね。
では、なぜ金太郎は「おいしいとこどり」ならぬ「おいしいとこどられ」になってしまったのでしょう?そのお話はまた次週。よろしければお付き合いくださいませ。