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Withコロナ時代のBtoBマーケ組織に必要なのは、"3密"ならぬ"3共"だ

この記事では、コロナ禍によって起こる変化に対して、主にBtoBマーケティング組織が順応するために必要な3つの視点をご紹介しています。

BtoBマーケティングの最前線に立っている方や、その組織を率いる立場にある方にご参考いただけるかと思います。


自己紹介

noteへの投稿は初めてなので、まずは自己紹介から始めます。お忙しい方は、次セクションの「まずは結論から:"3共"とは?」までスキップください。

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はじめまして、Fringe81株式会社の横山(@_NaokiYokoyama)と言います。私の所属するFringe81という会社はちょっと変わっていまして、「広告代理事業・広告主・テクノロジーベンダー」という3つの顔を併せ持つような会社です。

初期の初期はテクノロジーベンダーとして発足した会社ではありますが、事業環境の変化に伴って広告代理事業を立ち上げたり、再度テクノロジーの強みを生かしてメディアの収益化支援をしたり、最近ではUnipos(ユニポス)というHR Tech領域のSaaSサービスを提供したりしています。


私はキャリアを通して広告代理事業に所属し、主に消費財ブランドのマーケティング活動を支援してきました。最初はデジタルメディアのプランニング・バイイングからスタートしましたが、徐々に各ブランドのIMC設計支援に携わるようになりました。

また2018年の末にUniposで本格的なマーケティング組織を立ち上げる際には、これまでの知見を活かしマーケティング戦略と実行計画の策定を主導しました。

現在は、Uniposからは少し離れた一方で、そこで身銭を切って(※)実証したマーケティングの知見を、他BtoB企業の方々にコンサルティングサービスとしてご提供しています。
(※Uniposは、昨年度の3Q時点で4億円以上のマーケティング投資を行うまでになり、1広告主としても大きく成長しました)

先日はその一環としてMarkezineさんでSaaS事業におけるマーケティング組織のあり方について連載させていただきました。(特に反響のあった↓の記事をお読みになった方もいらっしゃるかもしれません)


…ということで、自己紹介が長くなりましたが本題に戻ります。よろしくお願いします。


まずは結論から:"3共"とは?

早速ですが、冒頭の"3共"とは、BtoBマーケティング組織における

通言語:メンバー全員が、同じ言葉を寸分たがわぬ意味合いで活用し、日々の業務を遂行すること。

通図面:メンバー全員が、全マーケティング活動を俯瞰できる同じ設計図を見ながら、各々の役割を理解して各活動に邁進すること。

通業務手順:(特に標準化しやすい業務において)メンバー全員が、共通のフローで再現性ある業務を行うこと。

という3つの要素を指しています。

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Beforeコロナであろうと上記それぞれは重要ではありますが、昨今の地殻変動とも言える状況と照らし合わせながら、なぜこの"3共"がより強く求められるかを紐解いていきたいと思います。

その際に主眼を置いている変化は、働き方の変化です。With/Afterコロナ時代では、マーケティング組織においてもテレワーク/リモートワークが前提となることが多いでしょう。

そのような働き方を前提とした中でどのような変化が起こりうる(既に起きている)かに思いを馳せ、それぞれに対する順応策を考えていくこととしましょう。

変化①:コミュニケーション効率の低下

まずみなさんも実感されている通り、テレワーク下においてコミュニケーション効率が低下しているのではないかと思います。実際に少し調べただけでも、それを裏付けるような様々な調査結果が出てきます。

▼ 管理職・一般社員ともに、テレワークの長期化によって起こる最大の課題として「コミュニケーションの取りづらさ」を挙げている(Unipos株式会社のプレスリリースより引用) ※n=管理職333人/一般社員553人

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こちらは弊社が出している手前味噌なデータなので、他社さんが出しているデータも見てみましょう。

▼ 従業員がテレワークに感じる最大の課題は、コミュニケーションの難しさ(ペーパーロジック株式会社のプレスリリースより引用) ※n=111人

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▼ 6割以上の管理職がコミュニケーションに不安を感じている(株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査レポートより引用) ※n=テレワーク経験あり管理職253人/テレワーク未経験管理職365人

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このように、上司・部下という立場を超え、多くの方がコミュニケーションの難しさを実感している(その結果、効率も下がっている)という感覚値は間違いなさそうです。

特にマーケティング活動で中心的に扱うものは、人間の知覚(感覚)や認識といった目に見えない抽象的な存在です。そういった抽象度の高い概念を、コミュニケーションの取りづらいこの状況下で組織として扱うことの難易度は、以前よりも遥かに増しています

違う言い方をすると、暗黙知を暗黙知のまま伝えるのがいよいよ難しくなってきた、とも言えるでしょう。

テレワーク下でも、コミュニケーション効率を向上させてくれるのが「"共"通言語」

その際に我々を助けてくれるのが、"3共"の最初の要素である「"共"通言語」です。

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ここで言う共通言語とは、
・抽象的な言葉・概念への明確な定義づけ
・その言葉を活用して考え、アウトプットするための統一的なフレームワーク(フォーマット)
という2つの要素から成り立つものです。

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例えばみなさんの組織の中で、下記のような言葉に対してメンバー全員が同じ定義づけで考えられているでしょうか。 個々人で答えられるかどうか以上に、メンバー全員が同じ認識を持てているかが重要です。

・マーケティングとは何か?
・ブランドとは何か?
・ベネフィットとは何か?
・競合とは何か?
・ターゲットとは何か?
・インサイトとは何か?
・ペルソナとは何か?
…etc.

こういった言葉への定義が組織内でバラけていると、会話する度にすり合わせないといけなかったり、すり合わせずに進めた場合に後々になって全然違う方向に進んでいたりして、コミュニケーションの効率が大幅に下がってしまいます。

この逆(論理学的な正確さを以て言うと「裏」)も真なりで、言葉の定義さえ揃っていれば、

上司「出してくれたアイデアなんだけど、まだ"ベネフィット"とは言えないよね。もっと、顧客にとって何が良いことなのかを突き詰めて考えてみよう!」

部下「(はっ、そうだ。"ベネフィット"って顧客を主語にして考えないといけなかったんだった!) たしかに、そうですね。もう少し考えてみます」

といった「1を聞いて10を知る」ようなコミュニケーションが成り立ち、言葉一つで言いたいことが簡潔かつ正確に伝わります。更に、確立すべき共通言語を上手く選ぶことができれば、各メンバーの思考レベルも上がり、コミュニケーションの効果まで向上できるのです。(共通言語の質というテーマは、またの議題にしましょう)

少し話はズレますが、このような視点で考えると、「共通言語」と「ビジョン」には類似点があるように思えてきます。ビジョンがメンバーの「感情」を掻き立てまとめ上げるものだとすれば、共通言語はその対となってメンバーの「理性」を統一するものと言えるかもしれません。

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ただ、言葉を定義づけた後も、それらを日々の事業活動の中でメンバーに浸透させる必要があります。そのため、ここで定義する「共通言語」の中では言葉への定義づけに加えて、統一的なフォーマットを用意することまで含めています。


また共通言語の構築は現場に任せるのではなく、トップ(あるいはトップに委任された方)が主導すべきです。もちろん最終的に現場に落とすまでに議論の余地は残しておいてよいでしょうが、一度決めたのであればその定義とそのフォーマットで一貫して動くことをオススメします。つまり、執着するに足る共通言語を作るのです。

ちなみにUniposのマーケティング組織立ち上げ時には、350ページを超えるスライド資料を作り、何度も研修を繰り返し同じ定義を刷り込み続けました。現場メンバーに留まらず、UniposやFringeの代表も必須参加とし、「我々として、この定義でマーケティング活動を行っていきましょう」という話をしました。時間はかかりましたが、今や全員が共通言語の下で活動できており、コミュニケーションが非常にスムーズになりました。

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(なお、上記の研修資料をご参考にされたい方は、TwitterのDMにてご連絡ください。ただ、外部に出せない情報も含まれていることもあり、直接受け渡しをするというよりかはご要望に応じてウェビナー等でエッセンスをお伝えすることを考えています)


変化②:他チームの動きが見えづらくなる

1つ目の「"共"通言語」の重要性をご理解いただけたところで、マーケティング組織で起こる他の変化についても考えてみましょう。

先に挙げた「コミュニケーション効率の低下」は、主に頻度高くコミュニケーションを取るメンバー間(上司⇔部下や、同じチームの同僚同士)で起こる変化でした。しかし、テレワークの影響はチーム内部に留まらず、チームの間にも溝を生んでしまいます

具体的に言えば、これまでであれば

「全体MTGが終わった後、PRチームの◯◯さんが頭抱えてたな… 絶対困ってると思うから、マーケ側で協力できることがないかどうか、ちょっと雑談がてら話してみようかな

のような会話や、

「最近インサイドセールスのみんな忙しそうだな… どうやら、マーケチームがウェビナーで獲得したリードが多過ぎてパンク気味みたいだから、今までよりも正確に優先順位をつけてリード情報を共有した方が良さそうだな」

といった様に、いい意味で現場がリアルな場の空気を読んで、他のチームとの連携を深めることができていました

しかしテレワークの状況下では、自分が業務で関わる必要があるメンバー以外の情報は、全くと言っていいほど入ってきません。よほど強い関心を持って自ら動かない限り、そういった情報が遮断されやすくなってしまったわけです。

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その状況下で進行するのは、「自分のチームのKPIが達成できているから、これで大丈夫だ!良かった!」という(悪気のない)部分最適です。

部分最適が起こる根本原因については、冒頭紹介した連載記事を参考していただくとして、ここでは結局どのような手段で解決できるかを紹介しましょう。

テレワーク下でも、チームの連携を促進してくれるのが「"共"通図面」

他のチームの情報が中々入りづらい状況下で助けになるのが、"3共"の2つ目の要素である「"共"通図面」です。

要は、チームの垣根を超えて、事業全体としてどのような活動を展開しているかを俯瞰するための設計図がこの共通図面です。家を建てるときに、1つの明確な図面があるからこそ複数の大工さんたちが協働できるようになる、ということと同じ役割を持ちます。

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結局、「自分の活動が、後工程を担当するチームにとってどのような意味合いや役割を持つのか」というイメージを持てない限り、異なる役割を持つチームとの連携は我々にとって難しいのでしょう。

特にBtoB事業においては、マーケティング~インサイドセールス~フィールドセールス~CSから成る機能別組織が採用されていることが多いため、更に注意が必要です。

なお、共通図面として私が消費財・BtoBを問わず活用してきたのが、「パーセプションフロー®・モデル」という考え方です。その詳細についてはここでは割愛し、解説記事を紹介するのに留めておきます。

詳細が気になる方は、考案者である音部大輔氏が代表をされている株式会社クー・マーケティング・カンパニーの会社サイトを併せてご覧下さい。


変化③:業務が属人化しやすい

テレワーク下において組織におこる3つ目の変化は、属人化が進行しやすいということです。

自分で仕事をしていても思うのが、「◯◯さん、今ちょっといい(ですか)?」という声掛けを通じて、簡単な相談や議論をする機会が激減しました

この環境に不慣れなせいもありますが、相手の様子(忙しいのか、余裕があるのか、機嫌が悪いのか、考え込んでいるのか、…)を判断する術を失った結果、アジェンダをある程度明確にして時間を設定しないと会話しづらいという状況が生まれました。

もちろん、このことによって「誰かに作業を中断されることなく集中できる」というメリットも生まれました。ただ、凝り固まった自分の視点だけに閉じてしまったり、猪突猛進に仕事をした結果他のメンバーから見ると「なんでこうなってしまったの…?」と感じられるアウトプットが生まれることも増えていることでしょう。

上司から見ても、横目で様子を見ながらよいタイミングでアドバイスすることができなくなってしまい、これまで以上にマネジメントの難易度が高くなっている状態です。

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入れ替わりの激しい金融業界(の一部)では、「いくら効率的だとしても、作った人にしか分からない複雑なマクロを組むのは罪だ」という論調があると聞いたことがあります。

我々にとっても同様に、テレワーク下で誰か1人にとってだけやりやすいような業務フローが組み上げられてしまうのは望ましいことではありません。


テレワーク下での属人化を防ぎ、スケーラブルな組織の礎となるのが「"共"通業務手順」

そういった状況下で役に立つのが、"3共"の最後の要素である「"共"通業務手順」です。

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特に、組織が成熟期に差し掛かり、業務の見通しが立てやすくなっているタイミングでは、共通業務手順(SOP)を定めることが様々な効果を発揮します。既存メンバーの生産性向上に留まらず、新入社員が独り立ちするまでの期間も大幅に短縮でき、スケーラブルな組織構築に繋がるでしょう。

もちろん、標準化しやすい業務としづらい業務は存在するので、そのグラデーションの中で優先順位をつけて実施することをオススメします。

我々がクライアントを支援する中でも、例えばどのようにMA・SFAを活用してチーム間で連携するかを全て言語化し、業務の標準化を行っています。最終的には「プレイブック」と称した教科書のようなものを納品し、テレワーク下でこそオペレーショナル・エクセレンスを磨き上げられる組織づくりを支援しています。

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今回はその内容ではなく考え方に着目していただきたいので、詳しく知りたい方はこちらもTwitter DMにてご連絡くださいませ。

まとめ

文字数をカウントしてみると6,000文字以上に及んでしまったため、最後に本記事のまとめを記しておきます。ここまで読んでくださった方、有難うございました。

・Withコロナ時代でテレワークを前提としたBtoBマーケティング組織には、"3共"が必要。
・"3共"とは、「"共"通言語」「"共"通図面(基盤)」「"共"通業務手順」。
・「共通言語」は、テレワークによるコミュニケーションの取りづらさを解消し、効率を(そして上手くすると効果も)向上する。
・「共通図面」は、テレワークによって断絶されやすい他チームとの連携を取り戻させてくれる。
・「共通業務手順」は、テレワークで進行しやすい属人化を解消し、Withコロナ時代におけるスケーラビリティに繋がる。


ご案内

最後にご案内ですが、この記事でご紹介した"3共"を実際にどのように作っていくかについて、来週5/28(木)の15:00~16:00に、レゴリスの加藤さんとご一緒にお話する予定です。ぜひお気軽にご参加ください(お申し込みは↓から)。

それ以降も、弊社が実施するウェビナー等でもお話する予定ですので、今回ご予定が合わない方もTwitterで最新情報を受け取ってくだされば幸いです。

今の変化に「対応」するだけでなく、「進化」の機会と捉えるための私なりの考え方をお伝えできればと思っています。どうぞよろしくお願いします。



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