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ファッションとの距離感【1】
もうすぐ僕は40歳になる。
今のワードローブの9割を占めているのはユニクロだ。
むかし買ったTシャツやアウターが処分しきれず残してあったり、気まぐれでフリマアプリやネットオークションで手に入れたシーズン遅れのデニムがクローゼットで出番を迎えることなくサイズが合わなくなって眠っている。
ファッション雑誌を毎月買わなくなってから10年近くなっただろうか。
全く興味がなくなったわけでもなく時々はネットで情報を漁り、メンズ誌を立ち読みしたり稀に買ったりしていたものの、服や靴を物色しに頻繁に店へ足を運んで実物に触れたり試着したり、当然買うこともなくなっていた。
正直、Tシャツに1万円とか1つ10万円するようなアイテムにお金を使いたいと思えなくなっていた。
高い服には、それ相応の理由がある
そう信じていたし、知ったかぶりで分かったつもりになっていた。
それが覆されていくのを身をもって感じてしまった。
かつての買い物はセール価格が本当の値段であるような、余分に多く支払わされ、ぼったくられていたかもしれない。
同じ失敗はもうしたくない!という後悔のようなものを抱えながら服を選ぶようになっていた気もする。
高い服でもなく低価格でもそこそこの品質の服があって、それで満足できる自分に気がついてしまった。
本当はオシャレを楽しんでいたのではなく、見栄をはっていただけの自分に気がついてしまった。
いつの間にか平成が終わっていた。
知ることで好きになる
ある人がYoutubeで動画を見てそこそこの品質だと高を括っていた服の凄みを知ってしまった。
その動画のことを誰から聞いたのか、どこで知ったのかはもう覚えていないけれど、消えかけていたファッションへの好奇心が膨らんでいた。
勝田氏は「我々はコラボレーションによりデザインや作り方のプロセス、考え方を学び、コラボレーションが終わった後にその精神を活かしている。この姿勢はこのプロジェクトが始まった頃から変わっていない。ファストファッションとよく言われるが、このプロジェクトにおけるプロセスはラグジュアリーだと自負している。例えば、ルメールと作ったセーターの価格は2900円だとしても、フィッティングをくり返し、ラグジュアリーブランドと同等のプロセスを踏んで生み出されている。このクオリティの商品でありながら、アフォータブルな価格で提供できているのは、ユニクロのコラボレーションだからだ」と語る。
ほぼ毎日着ているユニクロの服への理解が全く足りていなかった。
これまでにコラボしたデザイナーについて調べたり、著名なブランドで今は誰がトップとして手腕を振るっているのかを確かめて回った。
キッカケはなんだったのか
僕の場合、高校生の頃にバンドブームが起こり、彼らが衣装として着ているブランド品に興味を持ったのが始まりだったと思う。
ジャンポールゴルチェやヴィヴィアンウエストウッド、ヨウジヤマモトなどの反骨的なアイテム、スーツならポールスミス、アルマーニ、プラダ...細身でシックなスタイルが多かった。
ヘルムートラングのデニム、ダークビッケンバーグのブーツ、コスチュームナショナルのコート。
メンズノンノが辞書がわり。
でも、雑誌は毎月1冊しか発行されない。
もっと早く、もっと沢山のことが知りたかった。
当時は最新の情報を得られる手段がまだテレビで、男性のファッション専門で扱っている番組はなかったと思う。
動画でメンズ服の最新情報を得られる番組がファッション通信だった。
女性向けのファッションショーがメインであっても見続けるうちにデザイナーの名前やブランドごとの特徴がなんとなく掴めるようになってきたりして面白かった。
毎週録画して見るようになり、特に気に入った放送は画質を落とさず保存用にダビングしていた。
オタク気質があったせいかもしれない。
モードと呼ばれる世界にハマっていた。
知識≠オシャレ
僕はオシャレにはならなかった。
着て似合う服より、見てカッコイイ服を買うことが楽しかった。
カッコイイものを身につけてカッコイイ自分になったつもりでいたが、根本的な着こなし術を身につけてこなかったので、サイズ感も色の組み合わせも季節感もない中途半端なファッションオタクが出来上がっていた。
それは今も変わっていない。
オシャレでないことを恥じたこともあったけれど、今はファッションオタクとしてファッションの世界を楽しむことも悪くないと思えている。
というのも、敬意をこめて『変態』と呼びたい服道楽者を見つけたから。
心地よい距離感で
自分の好きなことを深掘りして楽しむことは良い趣味で、誰かと競ったり、マウントを取り合ったりする必要もない。
急がず、焦らず、好奇心の赴くままに。
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