「見当識障害について」 -認知症とともによりよく生きる -

 認知症の人と家族の会福岡県支部の月刊広報誌「たんぽぽ」に「認知症とともによりよく生きる」という連載を行っています。今回、許可をいただいてnoteにも転載することとしました。 
 こちらの記事は、2020年2月号に掲載されたものです。

 見当識とは、「自分の周りのことがわかること」で、時間、場所、人の三つの見当識があります。時間の見当識が障害されると、今日の日時や季節がわからなくなります。場所の見当識障害では、自分がどこにいるのかがわからなくなり、人の見当識障害では自分の周囲にいる人が誰かわからなくなります。多くの認知症では、時間、場所、人の順に障害されるため、見当識障害の程度を知ることで認知症の重症度をおおまかに知ることができます。

 認知症初期の段階で時間の見当識障害が出現すると、日々の薬の飲み忘れや飲み過ぎが出現します。この対策として介護現場では、薬をヒートから出して用法ごとに袋にまとめる(「一包化」と言います)、一包化した袋に日時と用法を印字する、お薬カレンダーを利用する、できるだけ内服回数を減らす、などの対応が取られることが多いです。たまに、一包化や印字をご家族がされていることがありますが、これらは薬局に頼めばやってくれますので、ぜひお願いされてください。しかし、これらの対応でも内服が困難となった場合、みなさんでしたらどう対応されるでしょうか。もしかすると、家族や訪問介護士、デイサービスで内服を行うようにすることが多いかもしれません。私も訪問診療で同様の場面をよく経験するのですが、支援者が代わりに服薬管理を行う前に日付が大きく表示されるデジタル時計を買うことをお勧めします。薬を飲まないといけないことを本人が理解されていて、時間の見当識障害の問題で内服できていないとすれば、お薬カレンダーの近くに日時がわかる時計を置いておけば、時計を見て日時を確認して一包化に印字されたものと見比べて自分で飲むことができるのです。ここでも、前回お伝えした、「本人のためにではなく、本人とともに」という視点が重要です。


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