「うつ病について」 -認知症とともによりよく生きる -

 認知症の人と家族の会福岡県支部の月刊広報誌「たんぽぽ」に「認知症とともによりよく生きる」という連載を行っています。今回、許可をいただいてnoteにも転載することとしました。 
 こちらの記事は、2020年11月号に掲載されたものです。

 うつ病と認知症には密接な関係があり、うつ病が発症してそのまま認知症に移行する方や、認知症にうつ病が重なる方もいます。うつ病では頭の働きが遅くなり思考力が落ちることから認知機能障害を起こすため、高齢者の場合は認知症と診断されることもあります。認知症のように見えるうつ病のことを仮性認知症といいます。

 うつ病と認知症の違いがいくつかあります。まず、抑うつ気分です。一般的な認知症に抑うつは伴いませんが、うつ病では抑うつ気分は主要な症状です。また、病識も特徴的です。アルツハイマー型認知症をはじめとする認知症の多くは病識が損なわれますが、うつ病は病識があることが多いです。また、認知症の場合は年単位で徐々に発症しますが、うつ病は週から月単位で急激に発症します。

 うつ病においておもな二つの症状は抑うつ気分と、興味・喜びの喪失です。落ち込み気分が沈むことはどなたでも経験されることだと思いますが、うつ病における抑うつ気分は、どんな良いことがあっても改善しないような嫌な気分が一日中持続することを言います。また、それまで興味を持っていた趣味や喜びを感じていたことなどに全く関心が持てなくなることも、うつ病の特徴です。

 うつ病は多彩な症状がありますが、うつ病の簡便なスクリーニング検査として「2質問票法」があります。不眠か食欲低下がある場合に、「この一ヶ月、気分が沈んだり憂鬱になることがよくあったか」「この一ヶ月、物事に対して興味がわかない、あるいはこころから楽しめない感じがあったか」を、ほとんど一日中、ほとんど毎日を原則として尋ねて、どちらかでもあるという答えであれば、うつ病と診断するものです。この検査は感度が96%、特異度が57%となっており、うつ病の人の96%を拾い上げることができ勘弁で有用性が高いものと言えます。

 比較的重度な認知症の人でもうつ病が重なっていて、うつ病の治療を行うことで状態が改善される方もいらっしゃいます。うつ病を疑ったら専門医に相談しましょう。


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