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#002 『キャンプがしたい』

輸入家具メーカーC社で働いていた頃はいわゆる“仕事人間”だった。土日も仕事のアイデアや企画を考えている時間が長かったし、読む本も仕事に役立つと思えるものばかりだった。

趣味はなに?と聞かれた時に「仕事が趣味みたいなものです」と答える自分に何の抵抗もなかった。インテリア、建築、家具、デザイン、プロダクトといった世界が大好きだった。(今でも好きなのは変わらないけれど、)

コロナ禍で静止してしまった社会の流れに少なからず自分も影響を受けて、富裕層ビジネスよりモノ作りに近い場所に身を置きたいと思い、デザインファームに転職して、時間の使い方も大きく変わった。

オンとオフのメリハリが以前より付けられるようになったし、休日は仕事から離れて自分の時間が作れるようになった。そして、以前からやりたかった〈キャンプ〉を始めた。

子供の頃は、『十五少年漂流記』や『ロビンソン·クルーソ』が大好きだった。無人島に漂着して、手に入る限られたものでサバイバルするという話にとてもワクワクした。母親は私をボーイスカウトに入れたがっていたが“制服とベレー帽に身を包んだ少年”というカッチリ感に抵抗を覚え、その世界に入ることはなかった。

学生時代は、90年代のアウトドアブームの中で、マウンテンスミスやグレゴリーなどのブランドに憧れた。登山ギア系のショップにもよく足を運んでいたが、何を揃えたら良いのか分からず、自分の回りには山登りやキャンプをやっている友達もいなくて、そこでも足を踏み入れることはなかった。

就職してからは前述のように“仕事人間”になっていたため、自らの山や自然に対する憧れの気持ちは約20年もの間、冷凍保存されたまま陽の目を見ることはなかった。

コロナ禍で、四六時中マスクをしている息苦しい日常から解放されたかったし、世の中ではキャンプが一大ブームとなっていて、そんな流れに背中を押された部分もあったのかも知れない。自分の時間が増え、自分自身と向き合う時間の中からごく自然に出てきたのが〈キャンプがしたい〉という欲求だった。

一番初めに買ったのはアルミクッカーだった。
家のキッチンでご飯を炊き、キャンプ気分を味わっている。

少しアンテナを張ればその手の情報はどんどん入ってきた。
キャンプ雑誌とネットとYoutubeでキャンプに必要な装備を学び、東京近郊のアウトドアショップに足しげく通い、キャンプ道具を揃えた。

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